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ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
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贖罪の意義

彼は俺にその薄いスープを飲み続けさせたが、飲みすぎると体がまだ抵抗を示し、時折えずいてしまう。ただ我慢しただけだ。殴りたくなかったから…。


「もういい。もう食べたくない。」


「でも…殿下、ほんの少ししか食べてません…」


半分しか残っていない野菜スープの碗を見た。どうしてもこれ以上は食べられない。少しでも食べられただけで十分だ。今、俺の体は本能的にこれを嫌がっている。俺の吐き気のために。


「それがお前には少なく見えるだけだ。自分の考えを俺に押し付けるな。」


ひどく嫌な口調で彼に言った。問題ないよな?彼が少ないと思うだけだ。昔ならもっと食べていたかもしれないが、今は無理だ。ましてや彼に対してなんて。


ドアの外から差し込む光は、もう眩しい白ではなく、温かみのあるオレンジの夕陽だった。でも、こんな輝く光なんて見たくない。嫌いだ。この陽光も、月光も、全部嫌いだ。どれもいいものじゃない。


「ドアを閉めろ。この光を見たくない。早く閉めろ!」


「今すぐ閉めます…でも、まずロウソクを灯します。でなければ真っ暗になります…」


「ダメだ!どんな光もいらない。真っ暗でいい。どうせ食事も終わったんだ…」


彼はしばらく黙り、それからドアを閉めた。本当に光が一切なくなった。いい、これでいい。ちっとも幸せじゃない。残酷に生きているだけだ。嫌いな人間が生き延び、愛した人間を失ったから。


何も見えない黒。夢の中にもある黒。目を閉じてもある黒。

今、目を開けても黒。眠りの中の黒。嫌いな人間も黒だ。


まだあいつに何か言いたいことはあるか?あるかもしれないし、ないかもしれない。俺は彼を救ったのか?でも、彼も俺を救った。だが、夢の中の蛇のように、俺はこの英雄が嫌いだ。彼は英雄じゃないかもしれない。


彼の行動は本物だ。それは否定できない。俺を苛立たせるこの男の優しさ、忍耐、そして盲目的な忠誠。左目を傷つけられ、血が流れ続けても、あの穏やかな表情を崩さない。記憶に焼き付いて、捨てられない。


聞こえる限り、彼は動かなかった。ドアを閉めた後、ずっとそこに立っていて、何も言わない。


「ロー、こんな風に生きて、何の意味があるんだ?」


「殿下…その質問には答えられません。俺にもわかりません…」


そんな答えか。驚くことじゃない。でも、彼なら何か意味のあることを言うかと思った。彼も迷っているのか?だって、彼はただの道具にしか見えないから。


「でも、殿下が生きてさえいればいい…俺はいつもそばにいます…」


彼の表情は見えないが、きっとその目は揺るぎない決意に満ちているんだろう。生きていればいい?彼は俺の苦しみがどれほどのものか知らないんだな。


彼のために生き延びた。それなら、生きるしかない。このろくでもない善人に信じるしかない。本当に善いのかどうかはともかく、彼を信じる。


「もしあの時、お前が俺を救わなかったら、今頃こんなことにはなってなかった…」


「あなたを救ったことを後悔していません…」


彼の表情は見えない。こんなに長い間一緒にいても、彼の内心がわからない。彼はいつも恭しく、まるで本当の感情を見せたことがない。


「お前の目、大丈夫か?」


「殿下のご心配、感謝します。一つ目がなくなっても、あなたを守れます…」


この暗闇は、自分が誰も傷つけていないと騙すためか?笑える。見えなければ、彼の傷ついた目が見えないとでも思ってるのか?本当に情けない。


彼が見えないから、こうやってそっと気遣える。直接彼の顔を見ては言えない…。


「殿下…次に何をしたいですか…?」


彼にそう聞かれたが、考えてもいない。この王宮にいる限り、抑圧感しか感じない。毎日あの悪魔に会わなきゃいけない。もうここにはいたくない。出て行こう。

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