嫌らしい「忠誠」
「それでは私は戻る。ローはお前が処理しろ。お前を生きさせるのが最良の保護だ。」
ヘンサーはそう言い残し、顔には喜びも失望もなかった。最後に彼はローを見やり、少し考えてからこう言った。
「ロー、今回はちゃんと守れよ。彼を傷つけさせず、死なせてもいけない。お前の忠誠はわかっている。『彼』への愚かな忠誠だ。」
「…はい…わかりました…陛下…」
その答えを得ると、ヘンサーは意味深にローを見やり、地面に落ちていた佩剣を鞘に収め、戻っていった。衛兵の血が流れる道を歩き、陽光に照らされた彼の影が血を覆い隠した。
俺は地面に倒れているローを見た。彼の手はまだ縛られたままで、動く力すらなかった。全身に傷痕があり、左足には紫色の痣が浮かんでいる。それでも彼は壁に手をつき、ゆっくりと、だが確実に立ち上がった。
「手を差し出せ。」
俺はそう命じた。彼は素直に縛られた両手を差し出した。苛立ちを感じながらも、俺は彼の手を解いた。
見ると、彼の手は長時間きつく縛られていたせいで、ただの赤腫れではなく、紫色の瘀血になっていた。
考えてみれば笑える。こんな状態の彼が俺を心配しているなんて。こんな傷だらけの男に心配されるなんて、俺は本当に情けない。
「本当にお前はうざい。わかってるか?」
そう不満をぶつけた。本当に苛立つ。彼のこの態度に不満しかない。こんな強がった姿を見るたびに、ますます嫌いになる。
背筋を伸ばすその姿は何だ?俺に見せるための態度か?さっきの惨めな姿から尊厳を取り戻そうとしているのか?今の彼の行動全てが目障りだ。
「はい、わかっています…」
「その背筋を伸ばした態度は何だ?俺に見せるためか?その傷だらけの醜い姿で?」
俺は彼を嘲り、醜い姿を非難し、わざとらしい態度を嫌った。彼への見方はもう昔とは完全に変わってしまった。
かつては彼に少しの気遣いと純粋な好意を持っていた。でも…
「いいえ、これはただの癖です…確かに見苦しい姿かもしれません。殿下にご不満を与えてしまい、本当に申し訳ありません…」
彼は頭を下げてそう言った。なぜそんな風に謝るんだ?でも、彼はいつもそんな人間だった。ずっとそうだった。




