育ての恩
「殿下…」
「満足したか、ロー…?」
ローは俺をそんな卑屈な目で見つめた。目に安堵が浮かんでいる。彼はただ俺に生きてほしいだけだ。こんな優しい、馬鹿みたいにいい奴だから。
「陛下、彼を牢に戻しますか?」
一人の衛兵がそう言い、傷だらけのローを地面で見つめた。彼らはまたローを持ち上げ、拷問の場所へ連れ戻そうとしている。またあんな目に遭わせる気か?駄目だ、絶対に駄目だ…。
「誰かが彼に触れたら、その者を殺す…」
俺は衛兵を睨みつけ、目に満ちるのは殺意だ。こんな残酷なことをするなら、俺も容赦しない。
最大の悪意で彼らに立ち向かう。これが俺を脅した結果だ。誰であろうと同じだ。
だが、衛兵たちはまるで聞こえていないかのように、ローを再び持ち上げ、ドアの外へ向かった。彼らはこの無力な子供のことなど気にも留めない。なぜなら、彼らは王直属だから――。
「どうやら、聞こえないようだな…」
俺はゆっくりと前に進み、「悪魔」の腰にあった剣を抜いた。彼は静かに俺を見つめ、俺が何をするか分かっていながら、止めようともしない。自分の部下の命すら気にかけないのか。
その剣は重かった。両手でやっと持ち、引きずりながら進んだ。だが、衛兵たちは相変わらず傲慢で、俺が何かできるとは思っていない。いいね、その方が抵抗しないだろう。
それなら――。
「うっ…!」
衛兵の体を剣が貫いた。彼は信じられない様子で胸を見下ろし、剣先から血が滴る。それは彼の死を宣告するようだった。彼は膝をつき、ローを持っていた手が離れ、もう一方の衛兵も支えきれず、ローは地面に勢いよく倒れた。
「うっ…」
ローは地面に倒れ、苦痛の声を漏らした。でも、今はそれどころじゃない。他の衛兵たちは刺された仲間の姿に驚愕し、信じられないという目でこの無害そうな子供を見つめた。
「本当に殺したのか!?」
「陛…陛下?なぜ止めなかったんですか?!」
衛兵たちは「悪魔」に問い詰めた。不満と恐怖が入り混じる。彼らは自分たちのために正義を求めるべきだ。自分たちは王直属なのに、なぜこの子供に衛兵を殺させると?
だが、彼らは忘れている。この王には石の心がある。死なんて気にしない。誰が死んでも関係ない。彼はただ冷たく見つめるだけだ。部下であっても例外じゃない。
彼が言った通りだ。「多くのものを殺すことになる。人なんてその一つに過ぎない。特別なことじゃない。」
彼の部下でありながら、主の性格を理解していない。感情はまるで歩く彫刻のよう。人に対しては悪魔のように残酷。それがこの王だ。ランクチェス王朝の開拓者だ。
かつては見抜けなかったが、今なら分かる。
昔の人間味ある彼と今の彼のあまりの違い。かつての彼はどこに行ったんだ…。
「陛下?!」
「なぜ止める必要がある?こうやって彼は自分を『守る』ことができる。」




