表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
63/113

感じる幸福

「彼女を…殺した…俺が…殺した…でも、俺は彼女を愛してた…」


俺は涙を流し、果てしない苦痛を込めて目の前の「彫刻」を見つめた。彼には俺の痛みが感じられない。それなのに、今、俺に命令している。お前は神じゃない。


憎しみが湧く。かつての彼が自らナイシャを俺の前に連れてきた。あの素晴らしい女性を俺に与えた。彼女は俺の優しさだった。俺の思いやりだった。俺の心だった。でも、今は何もかもなくなった。


「多くのものを殺すことになる。人なんてその一つに過ぎない。特別なことじゃない。」


なぜそんな平然と言えるんだ?それは人間だ。生きている人間だ。愛した人間だ。特別じゃないってどういうことだ?なんて恐ろしい。なぜこんな男が王になれるんだ?


「なぜそんなにも別人に変わったんだ…お前がナイシャを俺に連れてきたんだ…俺に幸せをくれたのに…」


「彼女は幸せだったじゃないか。お前の手で死んだんだ。」


「え…」


なんて恐ろしい言葉だ。目が全く揺らがない。こんな言葉を言えるなんて、俺の父親なのか?こんな父親を持つことが恐ろしい。慈悲のかけらもない人間…。


「生きて苦しめられることなく、愛する者に殺され、平穏に還る。それって幸せじゃないか?」


俺には彼が理解できない。なぜそんな言葉を言えるんだ?死んだんだぞ。一体どんな言葉だ。受け入れられない。理解できない。


理解できない目で彼を見つめ、罵りたいのに言葉が出てこない。どうやって理解すればいい?どうやって対話すればいい?目の前にいるこの人型の生物に、どんな言葉で反論すればいいんだ?


「初めて殺したのが愛した相手だっただけだ。次からは人を殺しても痛みは感じなくなる。それって幸運だ。」


「何を言ってるんだ…」


彼はゆっくりと近づいてきた。影が闇に溶け込み、ついには完全に見えなくなる。彼が目の前に来た時、俺は思わず後退した。俺は何と対峙しているんだ?


恐れてはいけない。無意識に後退しても、立ち戻らなきゃいけない。こんな馬鹿げた男に屈するわけにはいかない。でも、彼が近づく時、俺は彼を見上げるしかなく、言葉にならない圧迫感を感じる。


「ジョン、目を覚ますんだ。」


彼の手がゆっくりと近づいてくる。その冷血な手。触れさせてはいけない…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ