自ら望む刑罰⑹
貴族の将軍たちは次第に散っていき、それぞれ休息に戻った。
外の空間にはナクト一人だけが残された。兵士たちがみな眠りにつき、軍営は騒音も声もなく静まり返っていた。見上げる空は真っ暗で、焚き火だけがまだ燃え続け、まるで最後の温もりのように見えたが、その暖かさはナクトには届かなかった。彼はただ、雲に覆われた夜空を眺め続けるしかなかった。
「静かだな…ヘンリーはもう寝たかな…」
彼は独り考えた。この静かな夜には、つい色々なことを考えてしまうだろう。帳篷の前に縛られ、暖かな寝床はなく、冷たい風だけが彼の細く白い体を刺すように凍らせた。
突然、顔に冷たい感触が走った。厚い雲の層から雨が降り始め、雨滴が上を向いた顔に落ちた。
冷たい雨水が華やかな服を濡らし、彼の体をさらに冷たくした。まるで氷水に浸かっているかのようだった。雨水が口や目に流れ込むのを防ぐため、口を閉じ、目を瞑ったが、それでも鼻孔に水が入り、鼻腔に軽い痛みを感じた。それが原因で口が思わず開き、無防備なまま雨水が喉に流れ込み、激しく咳き込んでしまった。その苦しさに耐えきれず、彼はもがき始めた。背中で縛られた両手は無意識に握り締められ、縄に締め付けられて赤い痕が残った。
その時、空に一道の光が走り、しばらくして大きな雷鳴が響いた。まるで今夜の雨の夜の彼の苦しみを物語っているようだった。
この雷鳴に彼の心は落ち着かず、徐々にわずかな恐怖が生まれた。彼は雨を避けようと頭を動かそうとしたが、雨はますます激しくなり、全く効果がなかった。
「咳咳咳!誰か――!誰か助けて!」
必死に声を上げて助けを求めたが、首の鉄板に制限され、大きな声は出せず、ザーザーと降る雨音にかき消された。彼の弱々しい声は誰にも届かなかった。髪は額に張り付き、ひどくみすぼらしい姿だった。今の彼は貴族というより、卑屈な兎のようで、狼狽不堪だった。
つらい!ヘンリー!ごめん!
「咳咳咳――つらい!」
その時、ナクトは首の鉄板が外されるのを感じた。外された瞬間、頭を下げ、激しく咳き込んだ。目を薄く開けると、相手は雨合羽を着ており、彼の前の縄を解いていた。少し頭を上げて見ると、その顔はとても見慣れたものだった。ヘンリーだ。
「ヘンリー…殿下…なぜ出てきたんです…」
「この馬鹿!静かにしろ!この縄、なんでこんなにきつく縛ってるんだ…」
「…」
ヘンリーは不器用にナクトの縄を解いていた。しばらくしてやっと体の縄を解き、足と手に縛られた縄を短剣で切り裂いた。冷たい雨に濡れ、長時間縛られていたため、ナクトの体は弱り、足元がふらついて倒れそうになった。
「…殿下…」
「…」




