穏やかな味わい
ヘンリーは苛立った大声で命令し、その勢いで場にいた全員が話をやめ、固まって彼を見つめた。今、彼は極端に苛立っていたが、まだ続けなければならないことを知っていた。だから、まず将軍たちに夕食を摂り、その後で再び話し合いに戻るように命じた。将軍たちが去った後、ヘンリーは椅子にぐったりと倒れ込み、手で頭を支え、ひどく憂鬱な表情を浮かべた。彼は朝から今まで議論を続け、わずかな食事しか摂っておらず、ただ君主としての威厳を保つために耐えていただけだった。苛立ちと空腹が今、彼の体を駆け巡っていた。
ナクトは外で静かに将軍たちが去るのを待ってから中に入った。入る前に、敬意を込めてヘンリーに尋ねた。
「陛下、帳篷に入ってもよろしいでしょうか?」
ナクトの声だとわかると、ヘンリーはすぐにぐったりしていた体を立て直し、彼に入るように言った。
「もちろんだ、入ってくれ。」
彼はできる限り態度を整え、疲れ果てた様子を見せないように努力したが、ナクトは外で全てを聞いていた。そして、ヘンリーのまぶたが絶えず震えているのは、明らかに疲労が原因だった。
「無理しなくていいよ、全部聞こえてた…」
「そうか…」
ヘンリーはナクトが聞いてしまったことを知り、なぜかほっとした。彼の「無能さ」を見られてしまった今、もう無理に取り繕う必要がなくなった。しかし、心の奥では特に苦しさが募った。
気落ちしているヘンリーを見て、ナクトはただ食材を運んできた。蓋を開けると、温度はすでに下がっていたが、食欲をそそる香りが漂った。これは彼の殿下のために特別に作られたものだった。
目の前の兎肉を見て、ヘンリーは匂いを嗅いだ。この独特な香りは、目の前のナクトにしか作れないものだった。この肉はどこから来たのか、彼は不思議に思った。
「ナクト、これはお前が狩りで手に入れたのか?」
「いや、何人かの兵士と一緒に行ったんだ。」
ヘンリーは一口食べてみた。戦場でこんな料理が食べられるなんて、彼は少し元気を取り戻した。だが、それ以上に感動したのは、以前自分が怒鳴ってしまったナクトが、気まずい思いをしているはずなのに、わざわざ自分に料理を作ってくれたことだった。
「味はどうだ?」
少し期待と慎重さを込めて尋ねた。彼はこの料理がヘンリーの好みに合うかどうかわからなかった。普段の味を参考にし、調味料も自分で試して作ったものだった。
ヘンリーは軽く頷いた。味は少し違ったが、十分に近いものだった。一口一口食べ進めながら、これはただの料理ではなく、まるで慰めを得たような気分だった。
「ナクト…お前は…」彼は慎重に尋ねかけたが、ナクトは首を振った。
「この数日、ただ少し悩んでいただけだ。怒ってなんかいないよ。」
ナクトはヘンリーの心をよく理解していた。だから、戦争の前にこうやって話すことで、ヘンリーが落ち着いて戦略の仕事に集中できるようにしたかった。小さなことで感情を乱されないように、ヨハンを平定することこそが最優先だと。
「いつも『甘やかして』くれてありがとう。」
ヘンリーは食べ物を咀嚼しながら、ぼそぼそと感謝の言葉を口にした。それはまるでその感謝を隠そうとしているかのようだった。
「殿下、それは『甘やかし』じゃなくて『包容』だよ。そして、ヘンリー、君の『理想』が実現するまで、俺はいつもそばにいるよ。」




