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ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
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夜食

「なんでこんな遅くまで帰ってこなかったんだ?」


「いや、陛下が夕飯をごちそうしてくれただけですよ」


カトがホブムの陣営に戻ると、テーブルには彼のために残された夕食があったが、すでに冷めていた。将軍は鎧の手入れをしながら、カトの帰還にはあまり関心がないようだった。


「で、どうだった?また何か言いたいことでもあったのか?」


「いえ、陛下は将軍の支援に感謝して、食料を贈ってくれただけです」


カトはヘンリーから贈られた鹿肉と赤ワインを取り出し、将軍の机に置いた。自分のテントに戻ろうとしたとき、将軍が彼を呼び止めた。


「その小国の王が送ってきた食い物なら、ちょうど酒のつまみにいいな。一杯付き合えよ」


将軍は二つの杯を取り出し、赤ワインを注いだ。ローダリ伯爵のワインには及ばないが、戦場を駆ける将士たちにはちょうどいい味だった。彼らは戦場で過ごすことが多く、苦みのない酒には慣れていなかった。


「カト、もう三年以上になるな」ホブムは食事をしながら言った。


「そうですね。あなたがいなけりゃ、こんな高い地位にはいられませんでしたよ」


カトの口調はリラックスしていて親しげで、まるで上司ではなく家族と話しているようだった。彼はすでに将軍を父親のように思っていた。

「昔はお前、まだガキだったのに俺についてきたんだよな。こんなに早く成長するとは思わなかったぜ」


ホブムは感慨深げに言った。カトはただ微笑み、将軍に酒を注いだ。その仕草には敬意と感謝が込められていた。


「だからさ、ほんと将軍には感謝してますよ。昔はあちこち放浪してたんですから」


「お前、故郷には帰りたくないのか?家族の話、ほとんどしたことないよな」


かつて家に反対されながらも家を出た。カトにとって、家の環境は息苦しいものだった。騎士の家系で、戦うことばかり重視し、兵士の生死など気にしない。「神の栄光のため」と言いながら、傷つこうが死のうが誰も気にしない家庭だった。兄弟姉妹も同じで、女でも剣を持ち、戦場に出た。傷ついても慰められることなく、「役立たず」と言われるだけだった。


「いや、弟や妹には会いたいけど、帰りたくはないですね」


ホブムはカトを指さし、少し心配そうな目で彼を見つめ、酒をぐいっと飲みながら言った。

「お前、頑固すぎるぞ。どんな状況でも一度は帰ってみろよ。もしかしたら変わってるかもしれないだろ」


カトは納得いかない様子で、皮肉っぽい口調で反発し、不満を顔に浮かべた。


「それ、将軍自身の話じゃないですか?」


「ハ?誰の話だと思ってんだ、ガキ?」


二人は夜通し語り合い、テントの灯りは一晩中消えることなく、会話は途切れることなく続いた。これがリラックスというものかもしれない。まるで本物の父子のように温かく、カトはすでにこの場所を自分の家だと感じていた。


ここにいるのがいい――



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