夜食
「なんでこんな遅くまで帰ってこなかったんだ?」
「いや、陛下が夕飯をごちそうしてくれただけですよ」
カトがホブムの陣営に戻ると、テーブルには彼のために残された夕食があったが、すでに冷めていた。将軍は鎧の手入れをしながら、カトの帰還にはあまり関心がないようだった。
「で、どうだった?また何か言いたいことでもあったのか?」
「いえ、陛下は将軍の支援に感謝して、食料を贈ってくれただけです」
カトはヘンリーから贈られた鹿肉と赤ワインを取り出し、将軍の机に置いた。自分のテントに戻ろうとしたとき、将軍が彼を呼び止めた。
「その小国の王が送ってきた食い物なら、ちょうど酒のつまみにいいな。一杯付き合えよ」
将軍は二つの杯を取り出し、赤ワインを注いだ。ローダリ伯爵のワインには及ばないが、戦場を駆ける将士たちにはちょうどいい味だった。彼らは戦場で過ごすことが多く、苦みのない酒には慣れていなかった。
「カト、もう三年以上になるな」ホブムは食事をしながら言った。
「そうですね。あなたがいなけりゃ、こんな高い地位にはいられませんでしたよ」
カトの口調はリラックスしていて親しげで、まるで上司ではなく家族と話しているようだった。彼はすでに将軍を父親のように思っていた。
「昔はお前、まだガキだったのに俺についてきたんだよな。こんなに早く成長するとは思わなかったぜ」
ホブムは感慨深げに言った。カトはただ微笑み、将軍に酒を注いだ。その仕草には敬意と感謝が込められていた。
「だからさ、ほんと将軍には感謝してますよ。昔はあちこち放浪してたんですから」
「お前、故郷には帰りたくないのか?家族の話、ほとんどしたことないよな」
かつて家に反対されながらも家を出た。カトにとって、家の環境は息苦しいものだった。騎士の家系で、戦うことばかり重視し、兵士の生死など気にしない。「神の栄光のため」と言いながら、傷つこうが死のうが誰も気にしない家庭だった。兄弟姉妹も同じで、女でも剣を持ち、戦場に出た。傷ついても慰められることなく、「役立たず」と言われるだけだった。
「いや、弟や妹には会いたいけど、帰りたくはないですね」
ホブムはカトを指さし、少し心配そうな目で彼を見つめ、酒をぐいっと飲みながら言った。
「お前、頑固すぎるぞ。どんな状況でも一度は帰ってみろよ。もしかしたら変わってるかもしれないだろ」
カトは納得いかない様子で、皮肉っぽい口調で反発し、不満を顔に浮かべた。
「それ、将軍自身の話じゃないですか?」
「ハ?誰の話だと思ってんだ、ガキ?」
二人は夜通し語り合い、テントの灯りは一晩中消えることなく、会話は途切れることなく続いた。これがリラックスというものかもしれない。まるで本物の父子のように温かく、カトはすでにこの場所を自分の家だと感じていた。
ここにいるのがいい――




