「紅の莎」(4)
強烈な力がネッサを無理やり引き離し、ジョンは反応できず彼女の手を握りきれなかった。全く見えない状況で、誰が彼女を連れ去ったのかわからなかった。
「ネッサ!!」
ジョンは恐怖に震えながら振り返った。心は極端に混乱し、暗闇の中では何も見えなかった。彼は両手で剣を握りしめ、ネッサが引きずられた方向に慎重に剣先を向けた。
「ガキッ――」
空気中に骨が折れるような鋭い音が響いた。
「うっ――!!!」
そして、ジョンの剣先の前方から女性のくぐもった声が聞こえた。ジョンは心臓が止まる思いだった。その声はネッサのものだとわかった。不吉な予感が彼を襲った。
いや、これは予感ではない。すでに現実だった。
空の雲がゆっくりと消え、新月の冷たい光がこの暗い屋敷に差し込んだ。しかし、月光が照らし出したのは希望ではなく、ジョンが最も見たくなかった光景だった――
光が差し込み、彼は目の前の人物をはっきりと見た。顔は腐り、左目のまぶたが切り取られ、深紅のマントをまとった男だった。
そしてネッサは、その男に捕まっていた。口は固く塞がれ、右手は背中にねじり上げられて無理やり折られ、血がにじんでいた。彼女の腕はもう動かず、それでも必死にもがき続けていた。
(ジョン、早く逃げて!!!)
彼女はそう叫びたかったが、声を出せず、ただ「うう」とうめくだけだった。
男はジョンを見て首をかしげ、疑問を口にした。
「おや、なんでだ?ターゲットじゃない奴がいるぞ?おかしいな、おかしいな」
男の口調はふわふわと定まらず、目はジョンの全身を値踏みするようにさまよった。
しかし、ネッサの惨状を見たジョンは異常な怒りを感じ、剣先を男に向けた。両手で剣の柄を強く握りしめたが、軽率に動くことはできなかった。男がネッサにどんな危害を加えるかわからなかったからだ。
しかも、目の前の男は明らかにジョンよりはるかに強かった。さっきの引き離す力でそれがわかった。
「ネッサを離せ!!!」
ジョンは叫んだが、剣を握る手は恐怖でわずかに震えていた。男はジョンの恐怖を見抜いたように、気味の悪い笑い声を上げた。
「ヒヒヒ――」
「て、てめえ…早く彼女を離せ!」
だが、男はジョンが攻撃をためらうのを見抜いていた。人質がいるからだ。男は再びネッサの折れた右手を残忍にねじり、ネッサは痛みで涙を流した。腕の血は地面に滴り落ち、ブレスレットは血で染まり、元の色もわからなくなっていた。
「ヒヒ――さあ、そろそろ終わりにしようか――」
男は銀の短剣を取り出し、ネッサを足元に踏みつけた。邪悪な笑みを浮かべ、ネッサを見ながらジョンを挑発するような下卑た言葉を吐いた。
「ヒヒヒ――いい女だ、惜しいなあ。自分の女がこうなるのを見るのは、どんな気分だ…?」
男が言葉を終える前に、ジョンは長剣を突き出した。
男がネッサを放した瞬間、それが最大のミスだった。人質という盾がなくなったのだ。
ジョンは一気に男に駆け寄り、剣を突き刺した。目の前には何の障害もなかった。短剣では長剣を防げない。成功だ!
成功する!彼女を救える!!この醜い男を刺して――
「えっ」
「ヒヒ――」
なぜ…ありえない…




