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ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
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城内では捕縛作戦が続いていた。カオは子供たちを連れて、屋根裏部屋にこっそり隠れさせ、捕まるのを防いでいた。


「父さんや兄貴はどうなるんだ…」


「わからない…俺にはどうすることもできない…今はただ、君たちを守るだけだ」


彼の声には無力感が滲んでいた。多くの人を救う力はなく、ただ見ず知らずの人々が連行されるのを見ているしかなかった。ジョンの将士として命令に従うべきだが、このやり方は間違っていると感じ、自身の信念にも反していた。だから、せめてこの子供たちだけでも守ろうと決意した。たとえわずかな数でも、救わなければならなかった。


先ほどの隠れ場所で、わずかな食料を集めていた。量は少ないが、七八日間は生き延びられるだろう。カオは子供たちにここに隠れて出てこないよう伝え、タイミングが合えばまた迎えに来ると約束して、ひとり外に出た。外では数人の兵士が城に戻るところだった。


「カオ、住民を何人捕まえた?」


「言うなよ、ほとんど捕まえられなかった」彼は手を振って、全く成果を上げられなかったふりをした。


「まあ、苦労したな…住民たちも可哀想だよ、こんな目に遭うなんて。でも、俺たちは命令に従ってるだけだ…とりあえず城に戻ろう」


カオは兵士たちと一緒に城へ向かいながら、ちらっと屋根裏を見やった。すでに捜索済みの家だから安全のはずだ。再び捜索されることはないだろう。ただ、今後の状況がどうなるかはわからない。それでも、彼は子供たちが必ず耐え抜くと信じ、心の中で神に彼らの加護を祈った。


だが、捕まった者たちはそう幸運ではなかった。彼らは地下牢に閉じ込められ、兵士たちに監視されていた。無力に牢内に座り込み、次の処遇を待つしかなかった。


そのとき、階段から笑い声が聞こえてきた。少年の声で、徐々に近づいてくる。


「こんなにたくさん捕まえたのか!いいね~!」


「親王殿下!どうしてこんなところに!?」


看守の兵士たちはジョンが現れたのを見て、すぐに立ち上がり敬礼した。こんな暗い地下牢にジョンが突然現れるとは思っていなかった。捕まった者たちはその名前を聞き、一斉に彼を睨みつけた。命令を出した者への憎しみの視線だった。


「てめえ!なんで俺たちを捕まえた!親王だからってこんなことしなくてもいいだろ!!」


「だって、君たちを兵士にするためだよ。城外の兵士たちはもうソデリンを包囲してる。だから、君たちを捕まえて兵力を増やすんだ!これで勝てる!!さもなきゃ、死ぬだけだ!!外に出ても死ぬんだから!!ここで兵士になったほうがマシだろ!!」


だが、ジョンはよくわかっていた。ヘンローがどれほど優柔不断かを。彼は決して民間人を殺したりしない。だから、彼らを兵士にすることで、ヘンローをさらに手こずらせることができる。この言葉は民衆を納得させるためのものだった。外に出れば死ぬだけなら、ここで命をかけて戦うほうがマシだと。


「本…本当に…?」


その中の一人の少年が不安そうに尋ねた。その瞳は澄んでいて、ジョンはその目を見た瞬間、何かを思い出したようで、表情が嫌悪に変わった。


「その目、めっちゃ嫌いだ!!!ああ!!!」


他の兵士たちはこの状況に驚愕した。彼らは急いで少年の目を布で覆い、すぐに連れ出した。これはジョンのためだけでなく、少年を守るためでもあった。このままジョンの前にいさせれば、殺されるかもしれない。最善の策は少年を連れ去ることだった。


「殿…殿下…彼はもう連れ出しました」


「ロー…ロー!!!!!」


ジョンはローの名前を叫び続けた。兵士たちはすぐに上階にいたローを呼び、ロー急いで駆け下りて状況を確認した。ジョンが苦しそうに頭を抱え、彼の名前を叫んでいるのを見て、背後からしっかりと抱きしめ、静かに囁いた。


「殿下、大丈夫です…私がいます…」


「ロー…やっぱりいてくれる…」


「…」


ローはジョンをそっと抱き上げ、暗い地下牢を後にした。他の者たちはその光景に恐怖を感じた。ジョンの狂気や短気さは知っていたが、こんな発狂した姿は初めてだった。


「彼…いつもこんななのか…こんなやつの下で兵士やってるのか?」


「いや…親王殿下は子供の頃はこんなじゃなかったって聞いた…でも、何が原因でこうなったのかは…」


ローはジョンを部屋に連れ帰り、そっと布団をかけた。ジョンは疲れ切った様子だったが、目を閉じようとしなかった。彼は手首のブレスレットを見つめた。そこには乾いた血痕がこびりついており、彼はそれを洗おうとしなかった。何かを惜しむかのように。


「目を閉じたら、あのときに戻るのか…嫌だ…でも…」


「殿下、まずはお休みください。私はずっとそばにいます」


ジョンの目はゆっくりと閉じていった。彼は眠りたくなかった。夢の中ではいつも「ひどい」光景が現れるからだ。最も深い恐怖は、しばしば夢の中で姿を現す――

これは罰なのか…なら、まだ終わってないな…

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