鏡
城内では捕縛作戦が続いていた。カオは子供たちを連れて、屋根裏部屋にこっそり隠れさせ、捕まるのを防いでいた。
「父さんや兄貴はどうなるんだ…」
「わからない…俺にはどうすることもできない…今はただ、君たちを守るだけだ」
彼の声には無力感が滲んでいた。多くの人を救う力はなく、ただ見ず知らずの人々が連行されるのを見ているしかなかった。ジョンの将士として命令に従うべきだが、このやり方は間違っていると感じ、自身の信念にも反していた。だから、せめてこの子供たちだけでも守ろうと決意した。たとえわずかな数でも、救わなければならなかった。
先ほどの隠れ場所で、わずかな食料を集めていた。量は少ないが、七八日間は生き延びられるだろう。カオは子供たちにここに隠れて出てこないよう伝え、タイミングが合えばまた迎えに来ると約束して、ひとり外に出た。外では数人の兵士が城に戻るところだった。
「カオ、住民を何人捕まえた?」
「言うなよ、ほとんど捕まえられなかった」彼は手を振って、全く成果を上げられなかったふりをした。
「まあ、苦労したな…住民たちも可哀想だよ、こんな目に遭うなんて。でも、俺たちは命令に従ってるだけだ…とりあえず城に戻ろう」
カオは兵士たちと一緒に城へ向かいながら、ちらっと屋根裏を見やった。すでに捜索済みの家だから安全のはずだ。再び捜索されることはないだろう。ただ、今後の状況がどうなるかはわからない。それでも、彼は子供たちが必ず耐え抜くと信じ、心の中で神に彼らの加護を祈った。
だが、捕まった者たちはそう幸運ではなかった。彼らは地下牢に閉じ込められ、兵士たちに監視されていた。無力に牢内に座り込み、次の処遇を待つしかなかった。
そのとき、階段から笑い声が聞こえてきた。少年の声で、徐々に近づいてくる。
「こんなにたくさん捕まえたのか!いいね~!」
「親王殿下!どうしてこんなところに!?」
看守の兵士たちはジョンが現れたのを見て、すぐに立ち上がり敬礼した。こんな暗い地下牢にジョンが突然現れるとは思っていなかった。捕まった者たちはその名前を聞き、一斉に彼を睨みつけた。命令を出した者への憎しみの視線だった。
「てめえ!なんで俺たちを捕まえた!親王だからってこんなことしなくてもいいだろ!!」
「だって、君たちを兵士にするためだよ。城外の兵士たちはもうソデリンを包囲してる。だから、君たちを捕まえて兵力を増やすんだ!これで勝てる!!さもなきゃ、死ぬだけだ!!外に出ても死ぬんだから!!ここで兵士になったほうがマシだろ!!」
だが、ジョンはよくわかっていた。ヘンローがどれほど優柔不断かを。彼は決して民間人を殺したりしない。だから、彼らを兵士にすることで、ヘンローをさらに手こずらせることができる。この言葉は民衆を納得させるためのものだった。外に出れば死ぬだけなら、ここで命をかけて戦うほうがマシだと。
「本…本当に…?」
その中の一人の少年が不安そうに尋ねた。その瞳は澄んでいて、ジョンはその目を見た瞬間、何かを思い出したようで、表情が嫌悪に変わった。
「その目、めっちゃ嫌いだ!!!ああ!!!」
他の兵士たちはこの状況に驚愕した。彼らは急いで少年の目を布で覆い、すぐに連れ出した。これはジョンのためだけでなく、少年を守るためでもあった。このままジョンの前にいさせれば、殺されるかもしれない。最善の策は少年を連れ去ることだった。
「殿…殿下…彼はもう連れ出しました」
「ロー…ロー!!!!!」
ジョンはローの名前を叫び続けた。兵士たちはすぐに上階にいたローを呼び、ロー急いで駆け下りて状況を確認した。ジョンが苦しそうに頭を抱え、彼の名前を叫んでいるのを見て、背後からしっかりと抱きしめ、静かに囁いた。
「殿下、大丈夫です…私がいます…」
「ロー…やっぱりいてくれる…」
「…」
ローはジョンをそっと抱き上げ、暗い地下牢を後にした。他の者たちはその光景に恐怖を感じた。ジョンの狂気や短気さは知っていたが、こんな発狂した姿は初めてだった。
「彼…いつもこんななのか…こんなやつの下で兵士やってるのか?」
「いや…親王殿下は子供の頃はこんなじゃなかったって聞いた…でも、何が原因でこうなったのかは…」
ローはジョンを部屋に連れ帰り、そっと布団をかけた。ジョンは疲れ切った様子だったが、目を閉じようとしなかった。彼は手首のブレスレットを見つめた。そこには乾いた血痕がこびりついており、彼はそれを洗おうとしなかった。何かを惜しむかのように。
「目を閉じたら、あのときに戻るのか…嫌だ…でも…」
「殿下、まずはお休みください。私はずっとそばにいます」
ジョンの目はゆっくりと閉じていった。彼は眠りたくなかった。夢の中ではいつも「ひどい」光景が現れるからだ。最も深い恐怖は、しばしば夢の中で姿を現す――
これは罰なのか…なら、まだ終わってないな…




