「花の記憶」⑵
彼らはあずまやでゆったりとアフタヌーンティーを楽しみ、気楽に会話をしていた。ジョンにクリームが顔についているのに気づいたネッサは、自分のハンカチでジョンの口元を優しく拭った。ジョンは彼女の笑顔を見つめ、その優しさと気遣いに心を奪われた。
そのとき、ネッサは庭園に二人の人物が近づいてくるのに気づいた。彼らの姿をはっきりと確認すると、彼女は優雅にあずまやを降り、丁寧に礼をした。ジョンや他の使用人も同じように、恭しく挨拶した。
「こんにちは、ヘンサー陛下、ヘック殿下」
「父王、兄王、こんにちは」
「国王陛下、皇太子殿下、こんにちは」
ヘンサーとヘックはちょうど用事を終え、庭園で散歩しながら話をしていた。ヘックは彼らが少し緊張しているのを見て、気軽に振る舞うよう声をかけたが、ヘンサーは相変わらず厳しい表情で、皆を少し萎縮させた。ヘックは父親の態度にため息をつき、まず彼にリラックスするよう促した。
「父上、いつもそんな硬い顔しないでくださいよ。ほら、ジョンたちが緊張してます」
「ん、ああ、さっきまで考え事をしていただけだ。礼はいい、もっと気楽にしなさい。気にしないでいい」
だが、ヘンサーはネッサを一瞥し、ジョンに意味深な質問を投げかけた。
「ジョン、ネッサをどう思う?」
ジョンは一瞬言葉に詰まり、ネッサを見て、彼女の微笑みに目を奪われた。
「僕…彼女が好きです!ネッサは素晴らしい人です!これからもきっと良い妻になります!!」
ネッサは顔を赤らめた。ジョンがこんなにストレートに言うとは思わず、まるで告白のようだった。彼女はそっとジョンに近づき、彼の手を握った。しかし、ヘンサーはこの答えを聞いても多くを語らず、何か考え込むように言った。
「そうか…」
「父上?」
ヘックは父親が弟に答えなかったのを見て、二人に近づき、しゃがんで彼らの頭を撫で、箱を取り出して軽く微笑んだ。
「何でもないよ。さあ、アフタヌーンティーを続けて。このブレスレット、外国で特別に作らせたんだ。君たちにあげるよ」
ブレスレットは金で作られ、複雑な模様が刻まれ、青いサファイアが二つに分けられてそれぞれに嵌め込まれていた。二つを合わせると、サファイアは完全な白鳥の形になる。これは最高の工芸品だった。二人の目は輝き、驚きで大きく見開かれた。
「兄貴…本当にくれるの!?」
「ヘック殿下、これは高価なものでは!?本当にいいんですか!?」
「うん…もう僕には必要ないから…」
ヘックの目には一瞬、気づきにくいかすかな哀しみが浮かんだ。彼はネッサの右手とジョンの左手にブレスレットを着けた。ブレスレットはキラキラと輝き、彼らの「愛」の証だった。二人は抑えきれない喜びの笑顔を見せた。
「兄貴!ありがとう!!!」
「ヘック殿下、ありがとう!大切にします!!」
ヘックはもう一度二人の頭を撫でたが、振り返るとヘンサーがすでに宮殿に戻り始めているのに気づいた。彼は急いで別れを告げ、ヘンサーを追いかけた。
去り際に「ほんと、いつもこんなに早く歩くんだから」とつぶやいた。どうやらこれが初めてではないらしい。
「ヘック殿下、ほんとカッコいいね~ジョンもちょっと見習ったら?~」
「ど、どうやって?」
「明後日、服を持ってきてあげるね。父上も仕事が終わったみたいだから、そろそろ帰るね~」
去る前に、ネッサはジョンの頬をつねった。ジョンはそんな彼女の仕草にも慣れ、ただ笑って「また明日ね」と答えた。日が暮れ、他の使用人も城に戻り、庭園にはジョンとローだけが残った。
ジョンは満足げな笑顔でローを見た。
「ロー、帰ろう!」
ジョンの笑顔はとても純粋で、世間知らずの小さな王子を見つめるローもまた、そっと跪き、ジョンより少し大きな手を差し出し、穏やかな声で言った。
「では、帰りましょう、殿下」
ジョンはその手を取り、ローは立ち上がった。ジョンの手は彼の手のひらの中で少し小さく見えた。二人は一緒に庭園を後にし、廊下の灯りが彼らの傾いた影を映し出した。大きく小さな影の対比が、そこでとても鮮明だった。




