住民の逮捕
「なんであのゴミも来たんだ!!しかも軍を連れて!!ホブムと一緒に攻め込む気か!!ああ!!!」
ヨハンは城内で怒鳴り散らし、将軍たちは頭を下げて黙り、誰も声を出せなかった。カオは隊列の後ろに立ち、シェンと小声で話し合った。
「シェン…親王はいったいどうするつもりなんだ…」
「他の将軍の意見を聞いてくれればいいんだけど…絶対聞かないよ…」
シェンはロウを見た。ロウはヨハンのそばに立っているが何も言わない。ヨハンは14歳で、ロウの隣では小さく見えた。
「お前ら、喋れよ!何の役に立つんだ!!いっそ全員死ね!!」
「殿下…議和しませんか…」
一人の将軍が震えながら口に出した。この状況は誰の目にも明らかだ。ホブムの1500の精兵にヘンローの1000の兵が加わり、城の物資はいつか尽きる。ここで待つのは死だけだ。議和が最善の結果だ。
「そんなわけないだろ!!お前、死にたいのか?それじゃ俺の負けだろ!?」
「で、ですが…殿下…勝算は全く…」
「誰がそんなこと言った?城の1000人を兵士として徴収すれば勝算はある」
将軍たちはヨハンの言葉に声も出せなかった。すでに町を略奪して住民の怒りを買い、今さらに彼らを兵士に徴兵すれば、ヨハンの評判はさらに悪くなる。
「ロウ、お前もそう思うだろ?」
「殿下、別の方法を考えてください。城の住民には婦女子や子供がいます。彼らは兵士になれません」
「なんで同情するんだ?俺が国王になるのに比べれば、彼らが犠牲になっても大したことないだろ」
「…」
今、城の住民は極端に不満を募らせ、いつ反乱を起こしてもおかしくない。どうする?だが、徴兵するしかない。住民が死ぬか、俺たちが死ぬかだ。こうするしかない。
「お前たち、俺をどこに連れて行くんだ!!」
「息子を連れていかないで!」
「お前ら悪魔だ!!」
城内からそんな声が次々と聞こえてきた。成人男性や子供たちだ。大人は呪い、子供は泣き叫ぶ。だが、城にいるヨハンには聞こえない。恐ろしい結果が見えない。彼はあのゴミ国王の「同情心」を知っていて、それが彼を躊躇させれば十分だと考えていた。
「親王、ほんと非道だな…連れてきてごめん…」
カオも数人の子供を連れてきたが、表面的なだけだ。あとでこっそり逃がすつもりだった。
「お兄さん…本当に…俺たちを逃がしてくれる?」
「小声で…こっそり逃がすだけだ」
「分かった…」
通りでは、成人や少年たちが手を縛られ、兵士に引かれていた。ある者は小さく泣き、ある者は怒りを募らせ、ある者は無表情で現実を受け入れたようだった。ヨハンは捕まえた人々を見て満足そうだった。
「ロウ!これだけいれば十分足止めできる!最高だ!」
「…」
「ロウ、お前は俺を守ってくれるよな、な?」
「はい、殿下」
ロウは低く答えた。それが彼の務めだが、罪悪感が込められていた。罪悪という名の悪魔が彼の心を強く握り、かつてのように離さなかった。




