恐ろしい質問
食堂では、ヨハンの将軍たちが跪き、緊張した面持ちで額に汗が止まらなかった。ヨハンはテーブルに座り、足を組んで不機嫌な表情を浮かべていた。どうやら何人かの「幸運な者」が危うい状況になりそうだった。
「お前ら…誰が裏切り者だ?ん…」
「殿下!!絶対に私ではありません!!!私は殿下の臣下です!!」
「親王!私もです!!どうか信じてください!!」
一部の将軍はヨハンの足元に這い、必死に許しを請うた。この光景は滑稽で、親王が猜疑心から自分の将軍や家臣をこうも扱うとは。
「やあ、ロウ、来たか。この数人が一番怪しい。殺してしまえ」
「いやいやいや!殿下!信じてください!!いくら胆力があってもそんなことしません!!!」
ヨハンは足元の将軍を蹴り飛ばし、その頭を踏みつけ、凶悪な目で睨んだ。
「気持ち悪いな、お前。こんなに焦ってるってことは、お前が裏切り者だろ」
「殿下、おやめください。彼らは無実です。このように扱うべきではありません。ホブム将軍との戦いは避けられません。今、将軍を失えば我々の軍は弱体化します」
「ちっ、どうせ見つけるさ」
ヨハンは食堂を出て行き、将軍たちはほっと息をつき、地面にへたり込んだ。
「ロウ様、ご助言ありがとう!あなたがいなかったら、殿下に殺されていたかもしれません!」
「いや、皆さんがこんなヨハン殿下に仕えるのが大変だろう」
「ロウ様こそ、毎日殿下のそばにいる方が怖いでしょう」
「いや、まあ、何でもない。俺は先に帰るよ」
ロウは歩きながら窓の外を見た。果てしない海が広がっていたが、夜の闇で何も見えなかった。背後から声が聞こえ、彼の名前を呼んだ。
「ロウ!!!」
昨日出会った少年の声だと分かった。彼は立ち止まり、カオが目の前にやってきた。
「ロウ、ようやくお前が誰か分かった。なんで昨日教えてくれなかったんだ?」
「ふん、知っても知らなくてもどうでもいいだろ」
ロウは無関心な態度だった。この少年はただの通りすがりで、どうせもう会わない。昨日はいつもの優しさで助けただけで、毛布一枚なんて高価なものではない。
「でも、昨日助けてくれただろ。少なくとも寒くならずに済んだ」
「そんなの些細なことだ。小さなことで満足してたら大仕事はできないぞ」
カオはロウの言葉を聞いて考えた。彼の言うことは間違っていないが、完全に正しいとも思わなかった。
「確かにその通りだ。でも、全部正しいわけじゃない。小さなことで満足できるのは幸せなことだ。だって、大きなことなんてそうそうできないからな」
「ふん」
ロウはまた歩き出した。彼はそんな大義を聞く気はなく、ただ命令に従う従者だ。満足なんて必要ない。だが、カオはまだついてきた。
「なんでヨハン殿下に従ってるんだ?お前と殿下の性格、合わない気がする。お前は親王の家臣の家系でもなさそうだし」
「『使命』だ」ロウは歩きながら言い、顔がだんだん重くなった。何か心に秘めたものがあるようだった。
「なるほどな…」
カオはロウを見て、彼の使命はヨハンを守ることだと思い、それ以上は聞かなかった。
「お前もそろそろ戻れよ。明日、戦闘になるかもしれない。さっきドアの外で聞いてただろ」
カオは驚いた。ドアの外で盗み聞きしていたのがバレていないと思っていたが、ロウは気づいていて、咎めなかった。カオは裏切り者と疑われるか心配になった。
「お前、俺を裏切り者だと思わないよな…?」
「思わない」
話しているうちに部屋のドアに着いた。ロウは今日、ヨハンの後始末で休めず、疲れ切っていた。カオはロウの部屋に着いたのを見て別れを告げた。
「やあ、部屋に着いたな。じゃあ、俺も戻るよ。おやすみ、明日な」
「おやすみ」と言い、カオは去った。ロウは部屋に入り、枕に倒れ込み、深い眠りに落ちた。明日、会うだろうな…




