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ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
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むかしのこじん⑵

一刀振り下ろし、二刀振り下ろし、三刀振り下ろし。体から噴き出す血がすべてシリバヴィの顔に飛び散った。


彼は一度、二度、三度――毎回、自分が何をしているのかを考えていた。何度も“屠殺”を繰り返しても、決して冷漠にはなれなかった。


目の前の人間に恐怖を感じ、彼らを殺すことに怯える。それは当然のことだ。


彼らは死刑囚だ。処刑されるのは当然のこと――そう自分に何度も繰り返し、心の中の優しい部分を慰めるしかない。


彼らは父の目にはただの“生きている”研究材料に過ぎない。でも、約束したことは必ず果たす。


もちろんその条件は、少年を殺すことだけだ。それは彼らの命乞いへの答えであり、生きることを渇望する彼らへの残酷な応えでもあった。


「シリバヴィ、よくできたね~だんだん手慣れてきたよ。もうこんな時間か、退屈だね……どうやら他の“生きていたい”人たちは明日までお預けだ。他の者たちは明日処刑される予定だからね……彼らの期待に応えられないのは本当に申し訳ない。僕が罪を赦してあげよう。君は顔を拭いてから後で来てね~」


「はい、父上……どうぞお先に……」


少年は恭しく軽く腰を折り、それからゆっくりと顔を洗いに行った。


父親は彼の背中を微笑みながら見送り、軽くため息をついた。穏やかな微笑みがより不気味に映り、幽遠な深紫の双眸は他人の内面を呑み込むかのようだった。


シリバヴィは次第に歩みを速め、ある地点に達したとき、ついに耐えきれなくなった。窓辺で再び吐いた。胃の中のものはすっかり空になり、残渣すら残らず、喉が焼けるように痛い。


今でも自分の感情を隠せない。屠殺後の罪悪感が全身を不調にさせる。水盤に映る自分の姿――血痕がどれほど残忍に見えるか。


貴族の間ではこれは栄誉のはずだ。戦場で勇敢に敵を倒した証として。しかし彼の顔に付着しているのは栄誉ではなく、悲しみに満ちた殺戮の痕だった。


彼らは死刑囚だ……そう……彼らは死刑囚だ……どうせ明日処刑される身だ……。


でも……でも……最後に見た彼らの瞳は、憎しみに満ちた絶望だった……意識を失って死ぬ直前まで……。


拳で水面に映る自分の顔を叩く。水面が揺れ、顔が徐々にぼやけていく。


顔の汚れを激しく洗い流す。何も残さないように。污れも、血痕も、心の重荷も、清水とともに拭い去ってくれ。


「……父上の元へ戻ろう……」


薄暗い廊下を歩いていると、牢房から囚人たちのうめき声が聞こえてくる。冥府の怨鬼のような、逃れられない震える声で、陰気な気持ちになる。


だが、そのうちの一つの牢房だけは祝福の言葉が響いていた。まさに父の声だ。穏やかで優しい祝福と赦しに満ち、牢内の陰森な空気と対照的だった。


「……神よ、あなたの罪を赦したまう。神界の鳥があなたの魂を迎えに来るだろう。穏やかな白の聖水があなたを沐浴し、赤き聖酒を飲みなさい。感謝せよ! 神よ! 感謝せよ! 使者よ……」


父親は流暢に祝福の言葉を唱えている。普段の話し方と同じくらい自然だが、相手を祝福する優しさが込められ、罪人を潤している。


しかしその罪人はそうは思っていない。唱えている間、彼は地面に跪き、父親の脚にすがりつき、涙を流しながら一日だけ刑の執行を延ばしてくれないかと懇願していた。


「あなた! あと一日だけ延ばしてくれませんか!!! 一日でいい!! いや!! 日没までで!! 絶対にあのガキを倒せます!! 倒せば死ななくていいんですよね!!!」


「素晴らしい世界が待っている! 神よ! 聖人たちが罪人を包み込み、一緒に素晴らしい世界へ導くのだ! やあ……」


「いやだ! いや!! もうその言葉はやめて!! そんなものはいらない!!!! 絶対に勝てる! 絶対に! 明日朝イチで俺があいつを殺せるようにしてください!!」


牢の外からこっそり覗いているだけだ。近づきたくない。あの囚人が言っている少年が自分だとわかっているからだ。もし自分が現れたら、囚人は必死に自分を引き留め、あるいはその場で殺そうとするだろう。


そんな罪悪感を背負いたくない。どうせ死刑が決まっている身だ。それなのに、なぜあそこまで生きることに執着するのか。自分が勝てると信じているからか?


「生きるために、誰でも踏みにじることができる。そして一番大切なものさえも捨てられる。なぜならすべては“生きること”が基盤だからね。それが最優先の目標だ。精神的な生きること、肉体的な生きること、どんな“生きること”も欠かせない。だから、死は生きることを推進するための必要な要素なんだ。私たちは生きることに対して感謝を忘れてはいけないね~」


いつの間にか、父親がシリバヴィの前に立っていた。でも彼はもう慣れていた。牢の中の囚人は倒れているが、ただ気絶しただけで、まだ息はある。


「父上、戻りました。ご用件は済まれましたか?」


少年は恭しい口調で父親に尋ねる。父親と向き合うと、さっきまでの憂鬱は消え、落ち着いた表情になっていた。


「やあやあ~もう終わったよ。結局彼らの願いを叶えられなかった分、何か補償しないとね。大主教である僕が罪を赦してあげよう。本当に申し訳ないよ。せっかくの“生きていくこと”を奪ってしまって。これは仕方ないことだけどね。だって君も疲れただろう~」


父親は残念そうに謝罪の言葉を口にし、本当に可哀想だと感じているようだった。両手を合わせ、哀れむようにその囚人を見つめている。


シリバヴィは無言で、やはり父親と同じように両手を合わせ祈った。彼が神の御許に辿り着けますように――

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