見知らぬ血縁者⑷
ジョンはぼんやりと、ヘンリーとホブムが自分を哀れむような視線を向けているのを見つめていた。彼はもはや自分の顔(体面)など)どこにも残っていないと感じていた。ただの哀れで吐き気を催す人間でしかない。背後には誰もおらず、ただ空っぽの階段が続いているだけだった。
「殺しますか、将軍閣下?」
ジョンの軍にいた将官の一人が、無恥な笑みを浮かべながらそう尋ねた。他にも同じような顔をしている者が何人かいた。
「貴様らは厚顔無恥だ。俺に聞くな。あの男と戦った本人に聞け」
そのときのヘンリーは、かすかな後悔の色を目に浮かべて、一本の脚と一本の腕を二度と動かせなくなった弟を見つめていた。王位に逆らった結果がこれなのか。彼は本当にこんな結末を望んでいたのか。
「ジョン・ランケスター……反逆罪の名において、お前を逮捕する……」
「……残念だが、この扉を出た瞬間、あの民衆に殺される可能性が高い。そして八つ裂きにされるだろう。だからここでお前が俺を殺してくれ……ほら、俺の元部下たちもそう言っている」
「……死を求めるべきではない、ジョン。まだ取り返しのつくところもある……」
だが後ろでは、かつてジョンに仕えていた将官たちが「悪魔を殺せ、ジョンを殺せ」と叫び続けていた。怒りは一部で、それ以上に欲と恐怖が彼らを駆り立てていた。ジョンがこれから何を暴露されるのが怖いのだ。
「……お前が殺さなくとも、連れ帰ればあいつらが俺を殺す。俺は怖いんだ……痛いのは怖い……今ここで殺してくれなければ、もっと大きな苦しみを味わうだけだ」
いつの間にか、地牢に閉じ込められていた民衆も解放されていた。ほとんどが女や民の老婆たちだったが、すでに刀剣を手にしており、手に入るものなら何でも武器にしていた。死んだ家族への復讐のために、彼らの怒りはもう抑えきれなかった。
「陛下!!!我々は貴方の軍が親族を殺したことを憎んでおります、しかし!!目の前にいるこいつこそが元凶です!もし賢明な王になられるおつもりなら、今すぐこいつを殺してください!!いや!徹底的に苦しめてから殺してください!!我々のため!!神のため!!そして陛下ご自身のためです!!!」
状況が完全に制御不能になりかけているのを見て、カトが慌てて大声で問い詰めた。
「誰が勝手に解放した!」
黒ローブの兵の一人が進み出て答え、同時に横にいるジョンの元将官たちをチラリと見た。まるで「あいつらの仕業だ」と告げているようだった。
「あの人たちが先に民を解放しろと言い、我々は彼らを“安全な場所”へ案内するだけだと……」
「安全な場所がここか。お前たちはどこに行っても自分たちのことしか考えていないな」
だがその将官たちは、自分たちでは正しいと思っている言い訳を並べ立て、微塵も後悔の色を見せなかった。
「我々はただ、無垢な平民を解放しただけです。以前はジョンに命じられて彼らを捕らえたのですから、今度は我々が自由にしてやったまで。ただ彼らに一刻も早く自由を得てほしかっただけです」
「お前たちという奴は……」
後方にいる、ついさっき解放されたばかりの民衆は感情が極度に不安定だった。彼らはただ、ただ家族の仇を討ちたかった。それだけのことであった。民衆の感情がヘンリーを押し包み、彼は必死にジョンの命を守ろうとした。しかし、ジョン本人も、元部下たちも、民衆も、みんなが「ジョンの死」を望んでいた。
彼は後ろを振り返れなかった。それをしてしまえば自分の判断が揺らぐ……あるいは、まだ一つだけ道は残されている。だがそれを選ぶには、自分の未熟さと足りなさを認めるしかない。
「殿下……」
「……また来たのか……俺はわざとお前が窓から見えないように降りてきたのに……」




