勇者一行と本場の魔術師
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みそすーぱーです。
~前回のあらすじ~
改めて話し合い、旅の目的を再確認した三人は、「殺す必要がないなら殺さない」と方針を定め、再び旅路を踏み出した。
いよいよハリソノイアとの国境というところで、再び剣と盾が光を放つと、まもなく国境の先から悲鳴が聞こえた。
三人に助けられた悲鳴の主は、「マキューロから来たレピ・エルトナ」と名乗るのだった。
「マキューロ!?では貴方も!?」
レピの口から出た単語に、リリニシアが大きく食い付いた。
「はい、私も魔術を。貴方は…マキューロ人ではないのですか?」
「えぇ、ワタクシどもはヤクノサニユ王国から参りましたわ。リリニシアと申します」
「シェリル・ドラベレアルです」
「俺はスウォル。シェリルの弟です」
話の流れでリリニシアに促され、二人も続いて名乗った。
「ヤクノサニユの方が、どうして魔術を?」
「もちろん、勉強の賜物ですわ!」
「勉強?マキューロ人に教わったとか?」
「いえ、毎日毎日、一人であーでもないこーでもない言ってましたわよ」
ふふん、と胸を張るリリニシアに、レピは質問を重ねる。
「独学で!?それで習得したんですか!?」
「えぇそうですの!…と言いたいところなのですが、まだ火の魔術と癒しの魔術しか使えないんですの…」
「え!?」
リリニシアの言葉に、双子は揃って声をあげた。
「初級は修めたんじゃ…!?」
「…ちょ~っと盛りましたわ!」
シェリルに突っつかれ、悪びれもせずペロリと舌を出す。
たまらずスウォルも混ざった。
「リリニシア様!?結構ガッツリ盛ってますよね!?」
「…“様”ァ!?」
「いや無理ですよそれで誤魔化すの!!」
「ちっ」
「舌打ち!?」
自分を放ったらかして盛り上がる三人に、レピは少し申し訳なさそうに尋ねた。
「様?高貴な身分の方なのですか?」
「えぇ、一応。現国王はワタクシの祖父ですわ」
「こっ…国王の孫!?」
レピは目を丸くした。
「改めて名乗っておきましょうか。リリニシア・ルベス・ヤクノサニユですわ。…驚いていただけましたかしら?」
「そ、それはもう…」
「それで、レピ様は何故、こんなところに?」
リリニシアが“盛った”件が片付いていないものの、確かに気になるので、シェリルとスウォルは釈然としない顔で、レピの返事を待った。
「僕は…探し物をしてまして。それで旅を」
「探し物ですの。いったい何を?」
「あ、“物”ではないんですけれど。…禁じられた魔法ってご存知ですか?」
「いえ、ワタクシは。お二人は?」
リリニシアに話を投げられ、シェリルとスウォルも首を横に振った。
「そうですか。どんな内容なのかも分からないのですが、かつての時の王が禁じた魔法がある、とかなんとか」
「魔術でなく、魔法ですの?」
顎に指を当て、首を捻るリリニシアに、レピは頷きながら答えた。
「えぇ、僕もそれが引っ掛かってまして。魔物が扱う魔法に、禁じるも何もないのでは?と」
「ふむ…」
「それが気になって仕方ないので旅に出て…まぁ、平たく言えば好奇心、知識欲ですよ」
「なるほど、そうでしたの」
“禁じられた魔法”についてはともかく、その動機については納得するリリニシアに、レピは質問を返した。
「僕からもお聞きしたいのですが…ヤクノサニユの方、それも国王のお孫さんともあろうことが、何故ここに?ここはハリソノイア嶺ですよね?」
「あぁ、それはですね…」
当然の疑問を受け、三人はレピに説明した。
千年前の勇者の武具を、双子がそれぞれ受け継いだこと。
幼馴染みのリリニシアが魔術を修得し、二人の助けとなるべく同行したこと。
そして旅の目的を。
「…なるほど、そんなことが。お二人の持つそれが、伝承の勇者の剣と盾なんですね。…見た感じ、特別な物には見えませんが…」
鞘に収まり、シェリルに背負われている剣はともかく、スウォルの左腕に剥き出しの盾を眺め、レピは興味深げに呟いた。
「正直、持っててもそんな特別な感じはしてません。…あ、でも光ったり震えたりはするな」
「そうでしたわね。わりと耳障りな音もしますし、なんなんでしょうねアレ。気が付いたら治まってましたが」
「あ、もしかしたらなんだけど、私分かったかもしれない」
「え?」
シェリルがおずおずと話に割り込んだ。
「前にそれが起きた時も今も、すぐ後に魔物が現れたでしょ?私たちに、魔物が近くにいることを教えてくれてるのかなって」
「言われてみればそうでしたわ」
「けど、そんなことあんのか…?」
「あってもいいんじゃありませんの?勇者の使ってた物ですし」
「そんな適当な…」
「あの!」
話が脱線しかけたことを察し、レピは大きな声で言う。
「よろしければ、僕も同行させて貰えませんか?」
「え?」
思わぬ提案にポカンとする三人に、レピは構わず続けた。
「皆さんの目的の一つは、各国を訪れることなんですよね?僕も世界を回りたいので、目的は合うかと思うんです」
「…」
「それに、僕もマキューロ人として、それなりに魔術を扱えます。きっと役に立てると思うんです」
「あー…」
自身の有用性を力説するレピに、スウォルが気まずそうに頭を掻きながら問う。
「だったらなんでさっきあんなにビビってたんです?倒すことは出来なくても、追い払うくらいは…」
「あ、それは…お恥ずかしいのですが、僕、小さな生き物が苦手でして…。リリニシア様はお分かりかと思いますが、魔術を使うには集中が必要性なんです」
リリニシアは黙って、深く頷いた。
「あのくらいの大きさだと、どうしても動揺してしまって…。もう少し大きくなってくれれば行けるんですけどね…」
腕を組み、唸り始めたレピを尻目に、スウォルは小声で仲間に聞いた。
「どうする?」
「人は多い方がいいし、私はいいと思うけど…」
「とりあえず、魔術の腕を見せていただいてから決めてもよろしいのでは?」
「それだ。…レピさん、軽くでいいので、魔術を見せて貰えますか?危険な旅なので、正直、足手纏いは要らないんです」
「はい、分かりました」
スウォルが会議の結論を伝えると、レピは迷わず頷いた。
「ではせっかくですから、リリニシア様が使えないという…グレクォを」
「グレクォ?」
「氷の魔術ですわ」
スウォルの疑問に、リリニシアが答えた。
「えぇ。更におまけを。…中級・氷の魔術!」
「なっ…ロネサリ!?」
解説者のような顔をしていたリリニシアの表情が一変、驚愕に染まった。
四人の前に一瞬にして、冷気を放つ、大人二人分ほどの高さの巨大な氷柱が現れた。
「す…すげぇ…!」
「これがロネサリ…!これが本場の魔術師ですの…!?」
「ふぅ…まぁ、ロネサリはかなり精神力を持っていかれるので、今の僕では乱発は出来ませんが…」
「いえ、スッゴいですわよ!スウォル、文句ありませんわよね!?」
興奮気味のリリニシアは、スウォルの体をぐわんぐわん揺らしながら聞く。
「あ、あぁ、ねぇ…」
「ですわよね!レピ様、こちらからお願いいたしますわ!一緒に参りましょう!」
「えぇ、よろしくお願いします、皆さん」
「よし、もういい時間だし、今日はこの村で休むか。…あれ借りるか、崩れてない家」
スウォルは辺りを見回し、一件の建物を指差した。
「そうですわね。野宿よりずっとマシですわ」
「僕も何度かしましたが、なかなか厳しいですからね。ありがたくお借りしましょう」
「…何してんだよ姉ちゃん。行こうぜ」
「う、うん…」
新たな仲間を迎え、野宿を回避したことに一頻り盛り上がり、その晩は皆、早く眠りについた。
──シェリルを除いて。
シェリルの頭の中では、スウォルの言葉が何重にも反響していた。
“足手纏いはいらない”──。
…私って?
勇者の剣を継いじゃったから、辛くても頑張らなきゃ、って思った。
自分に言い聞かせて決意を固めた矢先…。
もし私が、この剣に触れなかったら…要らなかったのかな。
結局、シェリルは自問自答を繰り返し、一睡もせずに翌朝を迎えた。
全員に“一番先に目が覚めた”と言い、眠そうな顔を見せないよう努めた。
足手纏いだと思われないように。
昼前には廃村を後にし、道なりにハリソノイアの中心に向かう。
その道中の出来事だった。
「止まれ!」
道には関所が構えられており、一行はハリソノイア人に呼び止められた。
諍いを避けたい一行は、大人しく従った。
「お前ら何者だ?そっちには廃村しかないはず…。どこから来た?」
リリニシアが一歩前に出て、答える。
「ワタクシたちヤクノサニユから、あなたの仰る廃村を通って来ましたの」
「ヤクノサニユだと?ヤクノサニユ人が何の用だ」
関所から十名ほどの男が出てきた。
明らかに警戒している。…どころか、既に何名かは武器に手をかけていた。
「…なぁ、これマズいんじゃねぇか?」
スウォルが小声でシェリルとレピに聞くと、二人とも同じ懸念を抱いてようで、静かに頷いた。
一方、リリニシアは動じることなく続ける。
「ワタクシはリリニシア・ルベス・ヤクノサニユと申します。国王ゼラオジムの孫ですわ」
「なんだと!?」
男たちがざわめく。
「祖父の遣いとして、そちらを治めている方に謁見させていただきたいのです」
「…あのクソ女に謁見だと?」
「クソ女?」
話の流れから、男の言う“クソ女”がハリソノイアの指導者を指すことは明白。
自国の長に対するものと思えない形容に、リリニシアたちは困惑した。
「どんな用だか知らねぇが…通す訳にゃあ行かねぇな」
男たちが武器を抜いた。
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次回は4月7日20時にXでの先行公開を、8日20時に本公開を行う予定です。
~次回予告~
聞く耳を持たないハリソノイアの兵に、「人を相手に殺す訳にも」と困惑する一行。
そんな中、レピはシェリルに剣を抜くよう指示をした。
戸惑いながらも従うシェリルの剣に手をかざす。
「剣に雷を纏わせました」
次回「勇者一行と関所の男たち」