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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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63/63

#63 感情の板挟み

閲覧いただき、ありがとうございます。

勝手に一人で一周年キャンペーン中のみそすーぱーです。

活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1368468/blogkey/3440477/


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

スウォルが目覚めるまでの滞在で、風の魔術の媒介を作り出すことに成功したリリニシアは、老婆がラツンジパを追い出し二人で話す中、自らの名を明かしたという。

一行はラツンジパにも彼女の真の身分と、自身が負っている任務について語った。

「ま…魔王…?」


 シェリルに目的を聞かされ、ラツンジパは言葉を失った。


「はい。(これ)とスウォルの盾は、リリニシアが言った通り特別な…ルベスが使っていた物なんです」

「ルベス…千年前の勇者か…!伝説じゃヤクノサニユで封じられてて、誰も触ることが出来ないって…」


 千年前の“勇者伝説”を思い返すラツンジパに、シェリルは頷き、続ける。


「私が剣、スウォルが盾に触るまでは、そうでした」

「そうか、それで俺も盾に触れなかったのか…」

「逆は無理なんですけどね。私は盾に触れないし、スウォルも剣には触れませんでした。──ともかく、私たちはルベスの生まれ変わり…らしいです、予言では」

「…それで、勇者の生まれ変わりのあんたたちが魔王を…」


 納得したような、しかし信じられないといった表情で情報を咀嚼するラツンジパだったが、彼の脳に一つの疑問がよぎった。


「いや、けど…なんで、その勇者本人が使者なんてやってるんだ?」

「それは…」


 彼の質問に、シェリルは果たしてどう答えるべきか、口を閉ざして思案する。



“魔物という共通の敵を持ち、人類が団結する好機”という陛下の言葉を、そのまま伝えるべき…?

その使者までもを私たちに任せたのは過程で仲間を募ること、そしておそらくは魔王を討った後のことを考え、“予言の勇者”である私たち自身が出向くことで、求心力を高めたいから…だと思う。

前にレピさんが言ってた通り、“勇者と共に魔王を討った誰々の国”なんて肩書き、どこの国だって欲しいだろうし…。


一番の問題だったハリソノイアとの関係は、統治者がユミーナ様に変わったことも手伝い、改善していると言っていい。…これから問題が起こらなければ。

けど…レピさんがリエネさんの出自を偽ったこと、それにラツンジパさんの話も踏まえると、マキューロ人の反ハリソノイア感情はヤクノサニユ以上に強そうだし…。


スウォルとリリニシアを受け入れてくれたように、ラツンジパさんがお祖母様を説得してくれる可能性に賭けて…ハリソノイアが態度を改めたって説明したら、納得してくれるかな…?

それともハリソノイアに関してだけボカして話す?

…にしたって結局、いつかは話して、考えを変えて貰わないと、団結なんて成立しないけど…。

リリニシアがしたのと同じように、“民間人には話せない”で逃げるべき…?



「失礼、お二人とも」

「リエネさん?何を…?」


 シェリルが押し黙り答えを探す中、見かねたリエネが突如、老婆とラツンジパに尋ねた。


「あん?」

「なんだ?」

「仮に私たちが魔王を討つことが出来たとして…その後の世界はどうなるとお考えになる?」

「…なんの話だ?俺の質問に関係あるのか?」

「そう()くんじゃないよ。聞いてやろうじゃないか」


 はぐらかされたと感じ、不快感を覗かせたラツンジパを老婆が制し、続きを促す。


「どうも。魔物が現れ、防衛で余裕がなくなったハリソノイアが他国を攻めなくなり、およそ16年…。魔物の問題が片付いたら、再びハリソノイアを相手に戦争…とお考えだろうか」

「ふん、そう来たかい」

「祖母ちゃん?なにがだよ?」


 老婆はリエネの意図を察し、鼻を鳴らすと、理解が追いつかないラツンジパを他所に、リエネは続けた。


「特にご老体、あなたは…先のラツンジパの話によれば、戦争への忌避感(きひかん)が見受けられる」

「そりゃそうさね。そんなもん好きなのはハリソノイアぐらいさ」

「では仮に。魔王を討った後、ハリソノイアが他国への侵略を再開せず戦いを放棄し、平和を模索し始めたら…あなた方はそれを受け入れるか、拒絶なさるか」

「…」


 リエネの問いに、老婆は目を閉ざし、沈黙する。


「いや、ありえねーだろ。あのハリソノイアだぜ?ヤクノサニユはともかく、そのせいでティサンとまで組むことになったんだしよ」


 対して軽快に即答し、首を横に振ったラツンジパの言葉で、問題がマキューロ・ハリソノイア間だけではないことを思い出し、シェリルはハッとした。


「仮に、と言ったろう?仮にハリソノイアが戦いを止め、和解したいと言ってきたら…お前はどうする?ラツンジパ」

「…そう簡単に許せねぇよ。父ちゃんはハリソノイアに殺されたんだ」

「!」

「母ちゃんも後を負うように…。俺が産まれてすぐの話だ。俺は両親の顔も知らねぇよ」

「…そうか」


 ラツンジパの告白を受け、シェリルとレピは目を見開き、リエネは気まずそうに顔を伏せる。


「…けど、だからって戦争したいとは思わねぇし…。なぁ、リエネさんよ」

「なんだ?」

「"仲良くしたくはねぇけど、戦いたくもねぇ"ってのは、受け入れる内に入るか?」

「…ハリソノイアと戦う意志がないのなら、受け入れると言っていいと思うが」

「じゃあ、そうだな…。俺は受け入れるかな。祖母ちゃんは?」


 ラツンジパに問われ、老婆は閉ざしていた瞼をゆっくりと開いた。


「仮に、の話…じゃないだろう?()()()()()()()

「…!」

「は!?…どういうことだ!?」


 三人は驚愕を隠せず目を見開き、ラツンジパは動揺を顕にする中、老婆は淡々と続けた。


「リリニシアに聞いてるよ。あんたがハリソノイア人だってことも、ユミーナとかいう小娘がハリソノイアを変えようとしてることもね」

「…リリニシア様は、そこまで。では最初にお会いした時点で、既に…」


 リエネをヤクノサニユ人と紹介した張本人であるレピは、声に申し訳なさを滲ませる。


「もっともそれがなくとも、あたしぐらいの魔術師にゃ、そんな嘘は通用しないがね。あんたも魔術師の端くれなら、そんなことは分かってるはずだが」

「元老院入りを断ったと聞いて、もしやとは思いましたが…お目にかかった時点では、それほど高位の魔術師であるとは見抜けず。失礼いたしました」

「まだまだ青いね、ヒヨッコ」

「──待てよ!!」


 レピが頭を下げ、老婆がからかうように、愉快そうに笑う中、怒声をあげたのはラツンジパだった。


「なに笑ってんだよ祖母ちゃん…!ハリソノイア人なんだろ!?こいつ…!!」

「…」


 ラツンジパは鋭い目付きでリエネを睨む。


「待ってください!リエネさんは──」


 "魔物が動き出した16年前時点では5歳、人同士の戦争に参加した経験はない"。

 そうリエネを庇おうとしたシェリルを、老婆は手で制した。


「あぁ、そうだね」

「父ちゃんや母ちゃんの仇じゃねぇか…!」

「そうだ。だったらなんだい」

「なんだいって…許せるのかよ!?」

「あんた、自分がさっき言ったこと忘れたのかい。"戦いたくないから受け入れる"んだろう?」

「そりゃ言ったけど…だからって…!今、目の前にいるなら話は変わるだろうが!」

「何が変わるんだい」


 ラツンジパの激昂を、老婆はさも当然のように受け流す。


「許せなかったらどうするってんだい?相手はヤクノサニユ人とハリソノイア人が混在してる使者団だ。荒事を起こそうもんなら、両国相手に国際問題だよ」

「それは…!」


 老婆の言葉を頭では理解しつつも、感情が飲み込めない様子で、ラツンジパは食い下がった。


「…なんでそんな落ち着いてられるんだよ…。いつも余所者がどうとか言ってんだから、祖母ちゃんこそ怒るべきなんじゃねぇのかよ…?」

「それはあたし個人の思想さ。国と国との関係に持ち込むほど青くないよ」

「…」

「そうでなけりゃ、こいつらを招き入れはしなかったさ。あんた言ったろう?客を連れてくるのが珍しいって。…もちろん、前もってリリニシアから聞いてたってのもあるがね」

「…クソッ」


 やりきれない様子のラツンジパを、レピに対してのそれと同じくからかうように、老婆は再び笑った。


「くっくっく…悩みな、ラツンジパ。苦悩が精神を磨き、魔術を砥ぐんだ」


 悩み苦しむ孫を見て、嬉しそうに笑う老婆。

 ある種の異様な光景に、シェリルとリエネが言葉を失う中、レピは老婆に尋ねた。


「ご質問、よろしいでしょうか?」

「うん?なんだい?」

「そのご見識、相手がハリソノイアでなくティサンであっても変わらないでしょうか」

「レピさん…」


 シェリルはその質問からレピもまた、ラツンジパほど露骨ではなくとも、苦悩していることを悟った。

 苦しめているのが、自分自身の言葉であることも。


「ティサン…!」


 そのラツンジパは、ある意味ではハリソノイア以上に相容れない不倶戴天(ふぐたいてん)の仇敵の名を聞き、更に怒りを増大させる。

 一方、老婆はやはり余裕を崩さず、あっけらかんと答えた。


「ほう…?あんたも何か抱えてるね。当たり前だ、変わらないよ」

「では…ティサンだからと言って、特にどうということはない、と?」

「そりゃあ個人の感情で言えば嫌いだよ。けど、マキューロは既に一度、それを飲み込んでるじゃないか」

「…ヤクノサニユを含めた、三国同盟…」


 レピの呟きに、老婆は頷きながら続ける。


「もしあんたたちの言う通りにハリソノイアが大人しくなったとしたら、今度はティサンとの関係を巡って議論になるだろうよ。"脅威がなくなった以上、組んでいる必要はない"ってね」


 レピは首を縦に振り、無言で彼女の言葉を肯定した。


「そうなった時、手を切って終わろうってんならともかく…"ティサンを潰す"方向に行くなら、あたしは全力で抗うよ」

「それは…何故ですか」

「戦争の痛みを知ってるからさ」


 老婆は先ほどまでと違う、どこか淋しげな笑みを浮かべながら、力強い意思を感じさせる瞳でレピを見つめ、答えた。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。


勝手に一人で催していた一周年キャンペーン、本日を持ちまして終了です。

お付き合いいただいた方がいらっしゃいましたら、心より感謝いたします。

次回から通常のスケジュールに戻り、3月23日20時にXでの先行公開を、24日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

"戦争の痛みを知る"と語る老婆は、現在のレピの力を見抜いて更なる成長を促した後、老婆は矛先をラツンジパに向け直し、再び"そんな世界が実現したらどうする"と問う。


次回「人間って生き物」

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