#62 女二人で
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勝手に一人で一周年キャンペーン中のみそすーぱーです。
活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。
復習などにご活用ください。
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以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。
~前回のあらすじ~
意識を失った少年スウォルと、ヤクノサニユ人でありながら魔術を使ってみせた、リリーと名乗る少女を自宅に連れ帰ったラツンジパ。
祖母は二人を追い出そうとするが、リリーが魔術を使ってみせると一転、家に迎え入れるのだった。
ラツンジパの家で無事、老婆から滞在を許可されたスウォルと、"リリー"と名乗る少女。
老婆の指示に従い、ラツンジパがスウォルを横に寝かせる傍ら、リリーは道中でラツンジパに語ったことをそのまま老婆にも繰り返し、老婆も静かに、リリーの説明に耳を傾けた。
「ヤクノサニユから元老院への使者、ね…」
「えぇ。…ラツンジパさんから、お若い頃には元老院の候補に名が挙がり、それを断ったと伺いました」
「昔の話さ」
「元老院はマキューロにおける最高権力であり、構成する五名は魔術の腕により選定される…と聞き及んでおります。…もしよろしければ参考までに、拒否した理由をお聞かせ願えませんでしょうか?」
リリーの問いに、老婆は唇をニッと歪め、笑いながら答える。
「なんの参考にもならないと思うがね。単に興味がなかっただけさ」
「興味…権力を持つことに対して?」
「あぁ。そもそもね、魔術の腕で国の権力者を決めるなんて、あんたバカバカしい話だと思わないかい?」
「…と、おっしゃいますと」
「何人いるかも分からない国民の命を預かった国の運営だよ?必要な、求められる能力が魔術の腕なはずがないじゃないか」
老婆は再び、今度は蔑みを含めた笑みを浮かべた。
「なんてことはない、あの忌々しいハリソノイアと本質は一緒さ。"強い者が偉い"ってね。そうだろ?」
「…」
「極論を言えば、魔術が上手いだけのバカが五人集まって"他所を攻撃しよう"って盛り上がれば、それこそハリソノイアとなんら変わらない。あたしに言わせりゃ愚の骨頂だね」
自国の権力に対する厳しい老婆の言葉に、リリーは一瞬、言葉を失いながらもなんとか食らいつき、質問を返す。
「ですが、今までそんなことは一度も──」
「"今までなかった"からって、"これからもない"とは限らないだろう?」
「それは…そうですわね…」
「今の元老院なんかはまだ大部分が、戦争で何かを失ったジジイとババアだからいいさ。だがいずれ、世代交代の時期が必ず来る。──魔物のおかげで…とは言いたくないが、ハリソノイアが大人しくなってから…何年だ?」
"ひぃ、ふぅ…"と指折り数え始めた老婆に、リリーはその答えを示す。
「およそ16年ほどですわ」
「もうそんなに経ったか…。戦争の痛みを知らない世代がその椅子に座ってみな」
「…」
「あんた、歳いくつだい」
「…18です」
「ならあんたも、直接は知らないね。物心がついた頃にはもう終わってた」
「えぇ…歴史の知識として、しか」
"戦争の痛みを知らない世代"であるリリーは、言葉の重みに視線を伏せた。
「もちろん"若い世代に痛みを教える為に戦争を"なんて馬鹿げたことを言うつもりはないし、世代交代が悪いことだとも思わないさ。…だからこそ、国を託すのが"魔術が上手いヤツ"じゃダメなんだよ」
「国を運営するのに、求められる能力…」
「ま、多少は変化の兆しが見えてきたみたいだが。あたしゃそんな能力、持ち合わせちゃいないならね。…ってのが、理由の半分ってとこかね」
「…もう半分は…?」
顔色を伺うようにおずおずと尋ねるリリーに、三度目となる今回は快活な笑顔を見せ、答える。
「面倒臭いじゃないか」
リリーは椅子からずり落ちた。
「長々喋っといてそれかよ、祖母ちゃん…」
「おやラツンジパ、あんたいたのかい」
「いたよずっと!真面目な話してるから口挟まなかっただけだ!」
「そんな殊勝な気回しが出来るようになってたとは知らなかったね」
「そりゃねぇだろ、祖母ちゃん…」
老婆は孫をからかい楽しげに、ひとしきり笑った後、首をゆっくりと横に振った。
「──だが、まだまだ青いね」
「うん?どういう意味だ?」
「あんた、もっかい滝行って水汲んできな」
「は?なんだよ急に…。まだ蓄えは──」
「ゴタゴタ言わずにさっさと行くんだよ。──さて、リリーさんや。女二人、しばらく話そうじゃないか」
「…お手柔らかにお願い致しますわ」
老婆に追い出されるように、ラツンジパは家を出た。
────────
「ってのが、家に二人が来るまでの流れかな。俺がいない間に何を話したのかは教えてもらえなかった」
「なるほど…。リリ…ィさんはともかく、スウォルくんは無傷で…」
ラツンジパが一息つくと、レピは一瞬、リリニシアの名前を漏らしそうになりながらも堪えた。
「ひとまず…り、リリーが魔術を使えなくなった…という線はなさそうだな」
「そうですね…。やっぱりあの時は、状況的に集中できなかった…ということなんでしょうか」
偽名とは言え呼び捨てにするのを躊躇いながら、リエネが安堵のため息をつき、シェリルは頷きながら"あの時"を──巨大生物との戦いで倒れたスウォルの傍らで、リリニシアかへたり込んでいた姿を思い返す。
レピはその疑問に頷きながら、ラツンジパに話の続きを促した。
「おそらくそうでしょうね。それから?」
「しばらく経ってから俺が戻ってきた時には、その"女二人の話"ってのは終わってて…驚いたんだけどさ、祖母ちゃんが気に入ったみたいで、リリーに風の魔術を教えてた。…あ、そうだ」
ラツンジパは思い出したように、懐に手を差し込む。
「…なにを?」
「これ、レピ兄ちゃんが来たら渡してくれって」
そう言ってラツンジパは、懐から美しい石を取り出した。
「これは!?まさか…彼女が!?」
「なんだ?…宝石か?」
「わ、綺麗。…あれ、見たことあるような…?」
レピに手渡された宝石を、肩越しに覗き込み、二人は首を捻る。
「…これは、リリーさんが国の予算を無断で使い込んで買った、魔術の媒介を作る修行に使っていた宝石です」
「ほぉ…。…ほぉ?いや、ちょっ…とマズいこと言ってないかソレ…?」
「そうだ、思い出した!旅に出る直前、欲しがってたヤツです!」
「確かに風の魔術が封じられている…!これを彼女が…」
「待ってレピさん、感傷に浸らないで?成長の感動で押し流すには大きすぎる問題があるんですよ、目の前に」
リエネは絶句し、シェリルは感涙しそうになっているレピの肩を握り、揺さぶった。
「…使者ってそんな権限あるのか?王族でもあるまいに」
「あっ」
ラツンジパがボソリと漏らした疑問に、三人は思わず声を揃える。
リリニシアに"時々抜けている"と言われたことを思い出しながら、レピは考える。
リリニシア様が身分を偽ったのは、スウォルくんが動けない状況下において、おそらく身代金目的の拉致や、排他的な風潮が根強い原理主義者の反発・襲撃を警戒してのこと…。
事実、ラツンジパによれば、彼の祖母はリリニシア様の魔術を目の当たりにするまで、かなり強硬な姿勢をとっていた。
ラツンジパが比較的、柔軟な考えを持っていることが分かっている今、彼に真実を明かすことも一つの選択肢ではある。
嘘をついていたことには不快感を抱かれる可能性はあるが、リリニシア様の懸念を説明すれば理解は得られるかも知れない…。
「やれやれ、聞いてた通りだね」
「祖母ちゃん?どうしたんだ?」
レピが対応を検討し、口ごもっていると、一度は奥に引っ込んだ老婆が再び姿を見せ、苦笑いしながら肩をすくめていた。
「…聞いていた、というと」
気まずそうに尋ねるレピに、老婆は答える。
「頼りになるが時々うっかり口を滑らせる魔術師。そう言ってたよ、リリニシアは」
「!!」
リリニシアが秘めていたはずの本名が老婆の口から飛び出し、三人は目を剥く。
「リリニシア?」
「リリーの本名さ。ヤクノサニユ王の孫娘、リリニシア・ルベス・ヤクノサニユ。…な?」
「…冗談だろ?祖母ちゃん」
「お仲間に聞いてごらんね」
呆然とするラツンジパに、老婆は顎でクイッと、レピたちに視線を促した。
「…それは、ご本人から?」
「あぁ。"女二人で"話してね」
「え、なにその反応…?マジで王女様だったの…!?」
「…うん、そうだ」
三人とも沈黙する中、レピは観念したように、ゆっくりと首を縦に振った。
「なんでヤクノサニユの王女様がマキューロに…?」
「使者団というのも嘘ではないんだ。祖父に当たる国王陛下から遣わされた」
「だから、なんで王女様がそんなことを…」
「本人が希望して、陛下を押し切ったから…らしいよ。シェリルさん、説明をお願いしても?」
視線と共に投げかけられたレピの言葉に、シェリルは頷く。
「はい。本来は私とスウォルに命じられた任務なんです。リリニシアとは幼馴染みで、私たちを心配して付いてきてくれてて…。あ、単に本人が国の外に出たかったっていうのもあると思うんですけど」
「王女と幼馴染み…?あんたたちは一体…」
説明を聞く程に新たな疑問が増え困惑するラツンジパに対し、シェリルはレピ、リエネと頷き合うと、ラツンジパに向き直った。
「私とスウォルが与えられた任務は二つ。使者として各国を回ることと…その後、魔王を倒すことです」
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次回は24時頃にXでの先行公開を、20日20時に本公開を行う予定です。
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~次回予告~
ラツンジパに対し、シェリルは自らに課された魔王討伐の任務と、ラツンジパも弾かれたスウォルの盾と自らの剣が千年前の勇者の物であること、そして二人が勇者の生まれ変わりであることを明かした。
ラツンジパは困惑しながらも、“勇者の生まれ変わりが使者として世界を回る理由”を問うと、答えに迷うシェリルを見かね、リエネが口を開く。
次回「感情の板挟み」




