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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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60/64

#60 魔術師の故郷

閲覧いただき、ありがとうございます。

一人で勝手に一周年キャンペーン中のみそすーぱーです。

活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1368468/blogkey/3440477/


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

リエネとの対話を終え眠りについたシェリルは、翌朝レピに起こされ、安全に崖を下りるべく移動を開始した三人。

三日以上を費やし、崖の下にレピの故郷が見えてきた頃、ようやく比較的、安全に下りられそうな場所を見付け、無事に下ることに成功した三人は、“二人が生存し、東に向かった可能性”を信じ、まずはそのままレピの故郷を訪ねることにした。

「すみません、こちらにお住まいの方でしょうか」


 レピの故郷を目指し、数時間ほど歩いて故郷の入り口に差し掛かると、三人を代表しレピが、最初に見かけた住人の老婆に声を掛けた。


「うん?そうだけど…あんた達は?」

「旅をしている者です。はぐれた仲間を探しておりまして、こちらにお邪魔していないかと」

「ヤクノサニユのかい?」

「そっ、そうです!ここに来てますか!?」


 老婆の口から出た探している者らしき影に、シェリルが猛烈な勢いで食いつく。


「あ、あぁ…。一昨日までいたよ」

「え、一昨日まで…ですか?」

「あぁ。小僧が目を覚まして、一昨日ここを発ったね」

「ほ、本当ですか!?すぐに追い掛けないと…!」


 老婆の言葉を聞き、リエネは眉をひそめ、尋ねた。


「待て!ひとまず無事なのは分かったんだ、情報を集めよう。…失礼、少年の方は眠っていたのですか?」

「そうさ。ここに来てから丸二日、眠っていたよ」

「ふ、二日もですか!?」

「…何があったのか、詳しく聞かせていただいても?」


 その眠りの長さに驚くシェリルをよそに、リエネの冷静な問いを受け、老婆はゆっくりと、三人を次々に眺め、口を開く。


「…男のあんた、マキューロ人だね。だが女二人は余所者(よそもの)だ」

「ご明察です」

「あんた、名前は?」

「レピと申します」

「ふん、小娘の言う仲間ってのに間違いないようたね。後ろの二人は?」

「二人も…ヤクノサニユ人です」


 リエネがハリソノイア人であることを伏せたレピにシェリルは驚き、リエネ本人もわずかに目を見開いたが口を挟まず、レピに話を任せた。


「貴方は──」

「あたしのことなんかどうだっていいんだよ。…ヤクノサニユ人、ね。どうしてマキューロ人のあんたが、ヤクノサニユ人を四人も?」


 老婆は二人、特にリエネをジロジロと見ながら問う。


「…先に来た二人からはなんと?」

「私はあんたに聞いてるのさ」

「…」


 老婆の問いに、レピは僅かな逡巡の末、シェリルを指しながら答える。


「彼女と先に訪れた少年は、ヤクノサニユ王・ゼオラジム陛下の命を受け、使者として旅をしています」

「使者ねぇ…それで?あんた(マキューロ人)が一緒にいる説明にはなっちゃいないが」

「僕自身は、皆さんと別で個人的に旅をしていて、その途中で出会い、危機から救われました。それから同行しています」

「…着いて来な」


 老婆に促され集落に足を踏み入れた三人は案内に従い、彼女の暮らす家へと招かれた。

 壊滅していなければ、おそらく崖の上の集落にも似たモノが建っていたであろう、()()()()()らしき木製の家に入った三人を出迎えたのは、若い男性の声だった。


「おかえり祖母ちゃ…珍しいな、その人たちは?」

「あの二人のツレだそうだよ、話してやんな。…あたしは奥にいるからね」

「あぁ、分かった!…ってことは、レピ兄ちゃんか!」

「え?」


 老婆が立ち去る中、挨拶もそこそこ、まだ名乗ってもいないレピを"兄ちゃん"と呼ぶ青年に、当のレピ本人も困惑する中、青年はぐっと距離を詰めた。


「あー、面影ある気がする!俺、ラツンジパだよ!覚えてねぇか!?昔、よく遊んでくれてたんだけど!」


 レピの顔をまじまじと眺め、納得したように頷きながら、青年は自らの名を名乗る。

 レピは懐かしさに顔をほころばせながら答えた。


「…覚えているよ。昔は自分の名前もちゃんと言えなかったのに…大きくなったね」

「今でもたまに噛むけどな…。兄ちゃんこそ、すっかり大人になっちまって…何年ぶりだ?」

「確か僕が6か7歳でここを離れたから…17、8年くらいになるのかな」


 レピが旧友との親交を温める中、シェリルは若干、呆気に取られながらリエネに囁いた。


「なんか…独特な名前ですね」

「そうだな…確かに発音が難しそうだが。…ん?」

「どうしました?」

「6か7で離れて17〜8年ぶり?…お前、私よりも歳、上だったのか!?」

「え?えぇ、24です。そういえば言ったことありませんでしたね、聞かれてないからですが」


 シェリルと二人、ヒソヒソと話していたことも忘れ、大声で驚愕するリエネに、レピはさも当然のように、サラリと答える。

 

「知ってたか?」

「いえ…リエネさんと同じくらいか、ちょっと下かと…」

「…な?意外と知らないだろ?レピのこと」

「で、ですね…。それに余裕があるのに丁寧な喋り方してないレピさん、初めて見たかも」


 再び声を潜め、壊滅した集落の跡地で交わした会話を思い出し二人が苦笑いを浮かべるのをよそに、レピはラツンジパに向き直った。


「それで、先に来てた…二人のことだ。聞いてるかも知れないけど、僕は今、こちらの二人と先に来た二人、五人で旅をしていて」

「あぁ、聞いてるよ。後ろの…子供のほうが、スウォルの双子のお姉ちゃんっていう、シェリルだな?」

「は、はい。よろしくお願いします」

「そんであんたがリエネか」

「あぁ、よろしく」

「あんたたちが使者団って訳だ」


 二人の名前を言い当てながら、ラツンジパが順に手を差し出し握手を求めると、二人はそれに応えた。

 ここまで一行は口にしていなかったスウォルの名が出たことも合わせ、少なくともリリニシアは、自身以外の名は正確に伝えていたことが確定した。

 レピは村までの道中、"スウォルはともかく、一国の姫であるリリニシアが身分を偽った可能性"を考え、念のため二人に"状況が掴めるまで、名前などを安易に口にしない"ことを申し付けていた。


「うん、そうだ」


 聞き覚えがない"使者団"もその類であると判断し、レピは即座に頷く。


「スウォルくんは二日間寝てたって聞いたんだけど…何があったのか、教えて欲しいんだ」

「いいよ、適当に座ってくれ。後ろのお二人も」

「お、お邪魔します」

「失礼する」


 ラツンジパに促され家の中に入り、三人は手頃な椅子に腰掛けた。


「祖母ちゃんがなんか失礼なこと言わなかったかい?気に障ってたら謝るよ」

「い、いえ、私たちはなんにも!ね?」

「あぁ、気にしないでくれ」


 シェリルが手を大きく横に、リエネは小さく首を横に、それぞれ振るうことで意思を示す。


「そっか、そりゃよかった。古い人間なもんで、未だに余所者がどうとか気にしててさ。そのせいて俺もこんな変な名前つけられて…」

「あ、ご本人的にもそうなんですね…」

「そりゃそうさ。言いづらいったらありゃしない。もうそんな時代じゃねぇってのに」


 ラツンジパが自分の名前について愚痴を吐く中、レピはボソリと呟いた。


「…時代、か」

「兄ちゃん?なんか言ったか?」

「あぁいや、なんでも。それで、本題に入ってくれるかな」

「分かった。兄ちゃんたち、崖の上ででっかいバケモノと戦ってたんだろ?五日ぐらい前だ」

「うん、倒した」

「たお…え、倒した!?アレを!?」

「かろうじて、だけどね」

「どうやって…あ、いや、話進めねぇとな」


 ラツンジパは目を丸くして驚いたが、すぐに求められている役割を思い出し、語り始めた。

 時を遡ること、四日。


────────


 滝の方から地を揺るがすような音が聞こえ、"でっかいバケモノ"の出現を察した集落の住人は、すぐに逃げ出せるよう準備を進め、次の兆候を見逃すまいと神経を尖らせていた。

 しかし半日が経過しても異変は感じ取れず、ラツンジパを含めた若い男が何人かで、様子を見に行くことに決まる。

 滝に向かう途中のことだ。


「ふんっ…!ふんっ…!…あ、そこの方!お近くにお住みの方ですの!?どうかお助けいただけませんか!?」


 男たちは、一人の少女と出会った。

 ──意識がない少年を地面に横たえ、ゴロゴロと転がしている異様な少女に。


「ちょ、ちょっと待ってください、転がしてたんですか?」


────────


 語り始めたラツンジパに、シェリルは思わず口を挟む。


「あぁ、背負ったり担いだりしようと頑張ってみたらしいけど、重くて出来なかったって」

「…」

「まぁ、重たい物を運搬するのなら合理的…か…?生きた人体という点に目を瞑れば…」


 ラツンジパの語る光景を思い浮かべシェリルは頭を抱え、リエネは納得できるようなできないような微妙な表情を浮かべる中、レピも苦笑を浮かべた。


「ご本人としては、真剣に考えた結果なのでしょうね…。ラツンジパ、続けてくれる?」

「あぁ、分かった」


────────


 たまたま男たちの先頭を歩いていたラツンジパは答える。


「な、何者だ!?マキューロ人じゃねぇな!?」

「わ、ワタクシたちは…旅をしているヤクノサニユ人です!仲間と五人で旅をしていたのですが、巨大な怪物に襲われて、ワタクシとスウォル…彼だけ崖崩れに巻き込まれてしまったのですわ…」


 少女は先ほどまで転がしていた少年の上体を、慈しむように抱き抱えた。


「崖崩れ!?それであんな音が…。いや、だがあの高さから落ちて生きていられる訳が…?」

「それは…正直、ワタクシにも分かりませんわ。けれど気が付いたら崖の下にいて…スウォルが目を覚まさなくて…」


 ラツンジパが他の男たちと目を合わせ、対処に困り首を傾げる中、何かを思い出したかのように、少女はバッと顔を上げた。


「そうだ、皆様は近くの集落にお住まいの方ですわよね!?"レピ・エルトナ"ってマキューロ人をご存知ではありませんか!?」


 少女の口から出た名に、ラツンジパは目を見開く。


「レピ!?…知ってる、昔近くに住んでた。なんであんたがその名前を…」

「先ほど申し上げた仲間の一人が、そのレピさんなのです!」

「ヤクノサニユ人だけじゃないのか…?あんた、一体何者だ…!?」

「ワタクシは…」


 ラツンジパの問いに、少女は僅かに口ごもってから、瞳に決意を滲ませて答えた。


「…リリーと申します!ヤクノサニユ王から命を受けた使者団の一人ですわ!」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は24時頃にXでの先行公開を、18日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

ラツンジパは、意識を失った少年スウォル、そして彼を転がす、"リリー"と名乗る少女と出会う。

"敵ではない"、"助けてほしい"と必死に懇願する彼女に、ラツンジパは──。


次回「リリーと名乗る少女」

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