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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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56/63

#56 動き始める三人と──

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1368468/blogkey/3440477/


次回の更新についてお知らせがございますので、よろしければ後書きまでお目通しいただければ幸いです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

目を覚ましたレピと食事をしながら、先の戦いを振り返るシェリルとリエネ。

リリニシアがスウォルを回復させていなかったことや、シェリルの剣が戦闘中に二度、魔物を感知した際の反応を見せたことを共有する。

リエネは後者について、ある見解を示した。

“スウォルに危機が迫った時ではないか”。

「え…?」


 魔物を感知した際以外に剣が反応する条件として、“スウォルに危機が迫った時”という可能性を提唱したリエネに、シェリルはポカンと口を開けた。


「いや、一回目の時は分からんが、多分こっち側ではスウォルが首の軌道を逸らしたのと同じぐらいだろ?二回目は崖…。だからスウォル…というか、盾の持ち主の危機に反応したのかな、と」

「そうかも…!リエネさん、すごいで──」

「いえ」


 称賛しようとするシェリルの言葉を、レピが否定で打ち消す。


「それではハリソノイアでの戦いで反応しなかった説明がつきません。すぐに治ったとは言え、あの時も骨折くらいの怪我は負っていました」

「む、そうだったな…。骨折程度じゃダメで、魔術とかで回復しないとヤバい、ぐらいの時に反応する…だとどうだ?」


 負けじと条件を追加するリエネだったが、レピはそれにも淡々と、首を横に振った。


「一回目の反応が一瞬で消えた時、まだスウォルくんは回復していなかったはずです。二回目が何秒かは続いたということは、一瞬知らせて終わり、という訳ではないでしょうから、その線も薄いかと」

「ふむ…いいトコ突いたと思ったんだが。余計なこと言わん方がいいかな…」


 ある程度の自信を持って打ち出した自らの説が粉砕され、リエネはガックリと肩を落とす。


「まさか、いい発想だったと思います。僕ではその発想に至るまで、しばらくの時間が必要だったはずです。様々な可能性を多角的に検証したいですから、すごくありがたいですよ」

「それならいいんだが…。というか、改めて考えてみると骨折がすぐに治るのおかしいだろ、ボロガブザリの時といい…」


 腕を組み、当時を思い返し首を捻るリエネに、シェリルは苦笑いで答えた。


「それは改めて考えるまでもなくおかしいですけど…。やっぱり盾の影響なんですかね?(こっち)にも変なチカラあるのかな…」

「なんにせよ、スウォルくんに不利益な影響じゃなくてよかったですよ。…話を戻しますが、一度目と二度目で別の理由、別の条件に反応した可能性も捨てきれません。とにかく今は検証する材料が欲しいですから、今後も何か反応があったり、可能性を思い付いたらすぐに共有していただけるとありがたいです」

「はい、もちろんです!」

「あぁ、分かった。今回も、今の結論は“分からない”だな」

「──!」


 シェリルと同時に頷きながら呟くリエネに、レピは一瞬、目を見開いた。

 前回、同じ“分からない”という結論に至ったのは、ヤクノサニユ王、ゼオラジムが隠している“何か”に対するもの。

 特に“シェリルとスウォルの父、クーヤイが失踪した”ことの説明に対する不信感を、二人には伏せていたからだ。


「今回“も”?…ですか?」

「…あ、あぁ、その──」


 口走ってシェリルに問われることで思い出し、リエネが瞳を右往左往させていると、レピが助け舟を出した。


「ヤクノサニユで、“娘を探していると嘘をついたティサン人”の目的がなんだったのか、という話をしたでしょう?陛下とお会いする前に。それが前回ですよ」

「あ、カロニアちゃんの。レピさんが調子に乗りすぎてリリニシアにビンタされた時ですよね」

「嫌な思い出し方しますね…その時です。──ご馳走さまでした」


 レピは渋い顔で頷いた後、シェリルに見えないように詫びるリエネに視線で答え、最後の一口を飲み込み、手を合わせた。


「どうだ、動けそうか?」

「えぇ、おかげさまで。動き方の方針を定めて、移動しましょう」

「方針、ですか」

「はい。僕としては当初の予定通り、川を越えて東に向かい、近くの集落へ向かおうと考えています」

「な…!スウォルとリリニシアは!?」

「落ち着けシェリル。冷静に、だ」

「リエネさん…」


 レピの打ち出した方針にシェリルは思わず声を荒げるが、リエネは肩に手を置き、宥めながらレピに問う。


「考えがあるんだろう?」

「もちろんお二人を探すことが当面の目的です。その為に僕たちが無事に崖を下らなくてはなりません。そしてその為には、安全に降りられそうな場所を見付けなければならない訳ですが…手当たり次第に探すより、まずは近場に住む方から情報を集めるべきかと」

「で、でも…急がないと二人が…!」

「分かっています。ですが焦って短絡的な手段に走った結果、僕たちにも危険が及ぶかもしれません。そうなってはお二人を探すことも出来なくなってしまいます」

「急ぐからこそ、確実に…か。異論はないが一つ、気になることがある。お前が考えていないはずはないと思うが」


 考えに賛同しながらも懸念を表明するリエネに、レピはゆっくり頷いた。


「…“その近くの集落は、本当に無事なのか”…ですか」

「あんなバケモノがいたんだ、既に潰されている可能性もあるんじゃないか」

「あ…!」


 その可能性を考えておらず、シェリルは思わず口に手を当てる。


「その確認がしたい、という意図もあります。仮に生き延びているのなら、あの生物が死んだことを伝えなければなりませんし」

「だそうだ。どうだ?シェリル」

「…分かり、ました。生きてる人たちを安心させてあげるのも大事ですもんね…」


 リエネに促され、シェリルは小さく、首を縦に振った。


「ありがとうございます、シェリルさん」

「いえ…レピさんがスウォルたちを見捨てようとしてる訳じゃないのは、分かりますから…」

「シェリルさん…」

「…さ!そうと決まれば、さっそく動きましょう!はやくスウォルとリリニシアを探しに行くために…!」

「あぁ、そうだな…。レピも充分に休めたろうしな」


 リエネが笑顔を見せながら皮肉ると、レピは苦笑を浮かべ、頷きながら答える。


「えぇ、たっぷり半日ほど」

「それで、川はどう渡る?あの流れの速さじゃ泳ぐのは難しいぞ。橋も見当たらなったし」

「本来は橋が架かっていたはずなんですが…あの生物に破壊されてしまったのかも知れませんね。魔術で川底の土を水面より高く隆起させますので、その上を通りましょう」


 レピの提案を受け、リエネは自分たちが置かれている状況を再認識し、自嘲した。


「…なるほどな。いずれにせよレピの回復を待たねば川を渡ることすら、ままならなかった訳だ」

「本当に無力なんですね、私たち…」


 シェリルも同調し、ため息を漏らすと、レピは即座にそれを否定してみせる。


「こと戦闘になれば、僕には策を練ったり、魔術で援護するのがせいぜいです。お二人のように前線に立って戦うことは出来ません。…無力感なら戦いになる度、僕も感じていますよ」

「レピさん…そんなこと…。レピさんがいてくれなかったら、あんなの倒せませんでした…。私なんか、レピさんが魔術を増幅させてくれなければ何も…」


 未だ残る、崩れ落ちた巨大生物の亡骸に視線を送りながら、シェリルは顔を伏せた。


「お互い様です。お二人がいなければ、作戦を立てることも出来ませんでしたから」

「…各々が“出来ること”の中から“すべきこと”をするしかない。幸い私たちは一人じゃないからな。──さぁ、行こう」


 リエネが土を払いながら立ち上がると、二人は頷き、続いて立ち上がる。

 一方──遡ること、およそ半日。


「スウォ、ル…?貴方、スウォルなんですわよね…?」


 轟音と共に崩れ落ちる、かつて崖だった巨岩と共に流れ落ちる大量の水を受け止めきれず、滝壺から溢れた水で一帯が水浸しにされている中、リリニシアは滝壺から少し離れた場所で、大切そうに抱き締められていた。

 だがその姿は──。


「リ…ニシ…」

「スウォル!」


 リリニシアを抱き締めていた()()は一言、小さな声で呟くと、彼女の問いには答えず、抱き締めたまま前のめりに、覆い被さる形で倒れ込む。


「きゃっ!?スウォ──」


 押し潰されたリリニシアは、彼の下から脱出する為に押し返そうと、体に手を当て、ふと気が付く。


「熱っ…!?人間の体温じゃ──はっ!」


 同時に、崩れ落ちた巨大な岩の塊が一つ、まるで自分たちを押し潰さんと狙い済ました様に飛来してくることにも。


「スウォル…!起きて!!」


 叫びも空しく、()()が目を覚ます様子はない。


──ワタクシは、何も出来なかった。

レピさんも、リエネさんも、シェリルも…もちろんスウォルも、みんな自分のすべきことをしていたのに、ワタクシは何も。


火の魔術も氷の魔術も、レピさんなら一人で出来た。

それを敢えてワタクシに、役割を分けてくださっただけ。


あまつさえ、ワタクシが自分で“やる”と請け負ったスウォルの回復さえ出来ない始末。

ワタクシは、何も出来なかった。


今は──ワタクシがやらなきゃ。

他の誰にも頼れない、このワタクシが。

やらなきゃ死ぬんだ、ワタクシもスウォルも!

誰も助けてくれない!ワタクシがやらなくちゃ!

…死なせない!絶対に!!


 リリニシアは祈る思いで手を岩にかざし、涙を溢しながら必死に叫ぶ。


燃やしても凍らせても、あの岩が落ちてくるのは止められない。

砕くことも出来ない。

だとしたら…お願い、出てちょうだい。

いえ、出なさい。──出ろ!今度こそ!!


「うぁぁああ!!風の魔術(オディヌ)!!!」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。


本作「勇者が二人産まれたら」は、2025年3月14日に#1を公開いたしました。

ちょうど一年ということで一人で祝し勝手に記念して、14日から20日までの一週間、毎日20時に本編を一話ずつ公開していきます。

という訳で次回は13日20時にXでの先行公開を、14日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

絶体絶命の危機に対し、決死の覚悟で、まだ習得していない風の魔術を叫ぶリリニシア。

彼女とスウォルの命運は──。


次回「崖から落ちた二人」

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