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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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55/64

#55 “特異性”の共通点

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1368468/blogkey/3440477/


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

シェリルが運んだ薬で体力を戻し、二人でレピを“木に囲まれた元の場所”へ運んだリエネたち。

情報を共有した後、交代で睡眠を取りながら半日が経ち、ようやくレピが目を覚ました。

「…シェリルさん、リエネさん…。えっと…」


 状態を起こしながら周囲を見回し、頭を抑えるレピに、リエネは呆れたように、ため息と共に笑いかける。


「記憶が混濁してるか?」

「そうだ、スウォルくんとリリニシア様は!?」

「…崖の下だ」

「!」


 記憶を整理しながら手繰り寄せたレピに、リエネは顔に無念を滲ませながら、首を横に振った。


「そう、ですか…。すぐに探しに──」

「立たないでください」

「…シェリルさん?」


 慌てて立ち上がろうとするレピを、シェリルは制する


「レピさんの体力が戻ってからです」

「しかし…」

「下手に無理をしてまた倒れられたりしたら、二人を探すのが余計に遠のいちゃいますから…今はしっかり、体を休めてください」

「シェリルさん…」


 レピに対してのみではなく、自分に対しても言い聞かせるように、シェリルはレピの目を見据えた。


「…どれだけ経ちましたか」

「半日ってところだ」


 リエネが指で木のなくなった広場を指しながら答える。


「夕方…。そうですか、そんなに…」

「それで?調子はどうなんだ?」

「はい、多少は頭が重い感じがありますが…」

「軽めの魔術なら使えるか?」

「え?えぇ、多分…。どうしてです?」

「火が欲しくてな。焚き火の用意はしてある。腹減ってるだろう?」


 次にリエネは、狩ってきた小動物の亡骸を指差した。


「ゔっ」

「なんだ、この状態でもダメか?小動物は。…色々と話したいこともあるが、まずは腹ごしらえだ」

「そう、ですね…。分かりました。──火の魔術(オレム)


 レピが緊張した様子で深く息を吐き、唱えると、見事に火が灯る。


「…よかった、使えます」


 再び深い息を、今度は安堵から漏らすレピの背を、リエネが叩いた。


「助かった。…なんだ、緊張してたみたいだが」

「意識を失ったことなんて初めてなものですから…不安にもなりますよ」

「ふっ。…焼けるまで待っておけ。シェリル、手伝ってくれ」

「はい!」

「…あの生物は…」


 同じく腹を空かせていた二人が準備に取りかかる中、レピは申し訳なさそうに尋ねた。


「シェリルが倒した。魔術増幅のために、ずいぶんと無茶をしたらしいな?レピ」

「それがなければどうだったか…。レピさんが頑張ってくれたお陰です」

「いえ、僕に出来たのはあれくらいですから…」

「その後、ボロガブザリと同じように死体が崩れた。あっちにまだ残ってる。まさかお前の言う通りだとはな。…もう少し焼くか…」


 リエネは座り込み、パチパチと音を立て、揺らめく焚き火に顔を照らされながら、肉の焼き加減を見定める。

 隣に同じく座り込んだシェリルは薪をくべながらレピに、質問を返した。


「どうして分かったんですか?近縁種だって」

「自信があった訳ではありません。いくつかの点から、共通する“特異性”を持つのかもしれないと思っただけです」

「結果として正しかったが…そんな微妙な可能性に命を預けていたんだな、私たちは…」


 前提すら正しいか分からない不明瞭な策であったことを再認識したリエネは顔をしかめる一方、シェリルは苦笑いを浮かべながら質問を重ねた。


「はは…。その、共通する特異性っていうのは?」

「まず引っ掛かったのは、スウォルくんの言った“盾に触れなかった”ことです。それで可能性を疑いはじめました」

「それから私たちが確認した回復の遅さか。それだけじゃ、根拠としては余りに弱いが…他は?」

「その…」

「なんだ、早く言え」


 リエネに促され、レピは言いづらそうに、おずおずと口を開く。


「剣と盾に、魔物が現れた時の反応がなかったことです」

「…え?」

「何を言ってるんだ?ボロガブザリの時は反応してたんだから、共通してないだろう」

「そうでしたよね?レピさん…?」

「やはりまだ記憶が整理できてないようだな」


 驚き、目を点にするシェリルと、呆れてため息を吐くリエネに、レピは苦笑を浮かべながら首を横に振った。


「いえ、よく思い出してみると、必ずしもそうとは言い切れないんです」

「どういうことだ、もったいつけずに言え」

「あまり思い出したくありませんが…あの時、僕たちの前に現れた魔物は、ボロガブザリだけではありませんでしたよね?」


 レピの問いに、二人は記憶を掘り起こす。


「…レピさんが苦手な、あの小さい魔物が現れて、それからボロガブザリが…」

「つまり…剣と盾はその小さい方に反応してたんであって、ボロガブザリに対して反応してた訳ではない…ということか?」

「おそらく。…シェリルさん。あの巨大生物、最後は魔術核を潰したんですか?」


 続けて重ねられた質問に、シェリルは小さく首を横に振った。


「いえ…意識はしてませんでした。もしかしたら偶然届いたかも知れませんが…」

「逃げようとする様子は?」

「なかったと思います」

「では核と、“魔物同士の戦闘を行うか”については分かりませんが──」


 シェリルの返答を受け、顎に手を当て情報を整理した後、レピは二人の前で人差し指を立てた。


「“剣と盾に触れない”こと、“再生が遅い”こと、“死ぬまで引かない”こと、“死骸が崩れる”こと。加えておそらく“剣と盾に感知されない”こと。これら五つの特異性は共通していると言うことになります」


 列挙する特異性に合わせ、一本ずつ指を立てていくレピの説明に、二人は生唾を飲み込む。

 やがてリエネが、唇を震わせながら疑問を口にした。


「何故そんな連中が…?グラウム様じゃないが、本当に魔物なのか疑いたくなるな…」

「ヤツらの特徴を考えると、ひょっとしたら魔物と獣が交配して生まれた…いわば雑種かも知れません」

「雑種!?魔物と獣のですか!?」


 驚愕するシェリルの声が森に響き渡る。


「可能性の域は出ません。“そういう魔物もいる”と言われればそれまでですが…僕たちの見てきた魔物と比べ、ボロガブザリとあの生物は特異性が強く、かつ多くが共通しています。別けて考えるべきだと、僕は思っています」

「…」


 魔物と獣の雑種という、想定もしていなかった可能性を示され、シェリルとリエネは沈黙した。

 流れる川と弾ける火の音だけが、三人の聴覚を支配する中、リエネは無理矢理に明るい声を作った。

 ──こんな時スウォルなら、“とにかく食おうぜ!”と空気を変えるのだろう、と考えながら。


「…よし、そろそろ食えるぞ!レピ、お前もこっちに来い!」

「あ…はい」

「そ、そうですね。レピさん、立てますか?」

「大丈夫そうです。ありがとうございます」


 シェリルに手を差し伸べられたレピは、その手をしっかりと握って引っぱり起こされ、リエネの手招きに従い、焚き火の元に座ると、三人は焼いた肉を口に運ぶ。


「レピさん、食べながらでいいので、他にも確認したいことがあるんですけど…」

「はい、僕に分かることなら」

「リリニシアが“スウォルを治す”って走ってったじゃないですか。けど崖が崩れた時、まだスウォルが倒れたままだったんです。あれって…」


 レピは肉から口を離し、わずかな間、考える。


「それでスウォルくんが戦いに戻らなかったんですね…。消耗だけで言えば、癒しの魔術を使えなくなる程ではなかったはず。元より癒しの魔術を苦手とすることに加え、おそらくは精神的な要因…集中力の欠如によるものでしょう」

「集中力…」

「魔術には不可欠ですから。…僕も大事なところで集中力を失い、二人が落ちるのを止められませんでした。申し訳ありません」

「レピさん…そんな…」


 ガックリと肩を落とし顔を伏せるレピに対し、シェリルはかける言葉が見当たらない一方、リエネは力強く答えた。


「自分を責めるな。魔術のことは分からんが、お前が力を尽くしたことは分かる」

「そうですよ!半日も起きないくらいですし!…スウォルとリリニシアの為に、ありがとうございます、レピさん」

「…」


 レピは俯き、握った肉に数滴、涙を落とす。


「泣かないでください。もう一個あるんです、確認したいこと」

「すみません…。──はい、なんでしょう」


 涙を指で拭い、顔をあげると、レピの顔にはいつもの微笑みが浮かんでいた。


「戦ってる最中に二回、(コレ)が反応したんです。魔物が近くにいる時と同じ」

「…あの生物とは別に、魔物が接近していた…ということですか?」

「それが一回目は一瞬で、二回目も何秒かで収まって…」


 不安げに視線を伏せるシェリルに、レピは聞き出すべき情報を検討し、尋ねる。


「その時、シェリルさんはどんな状況でしたか?」

「えと…一回目は、リエネさんが最初に顔を斬ってから、レピさんが風の魔術で跳んだ後です」


 スウォル、リリニシア、リエネと別れ、レピがシェリルを抱えて尾を飛び越えた直後──シェリルが一瞬、呆けていたことを思い出す。


「あの時か…。二回目は?」

「私がアレの背中に乗って、その…首を切って、崖が崩れた後に」


 自身の行動を口にすることを一瞬、躊躇いながら、シェリルは答えた。


「ふむ…。なにか共通点は思い付きますか?」

「共通点…?う~ん…特には…」

「そうですか…。魔物を感知する以外にも、反応する条件がある…?」


 二人が頭を抱える中、リエネはふと呟いた。


「…スウォルが危機的な状況に陥った時、とか?」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。


今月14日を持ちまして、本作の#1を一周年を迎えます。

これを一人で祝し勝手に記念して、14日~20日の一週間、毎日20時に投稿を行います。

よろしければお付き合いいただければ幸いです。


次回は3月9日20時にXでの先行公開を、10日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

リエネと問答を繰り返しながら、シェリルの剣が反応した条件の考察を深めていくレピ。

一つの“結論”に辿り着くと、次はスウォルとリリニシアを救出する為の方針を練り始める。


次回「動き始める三人と──」

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