#54 出来ることとすべきこと
閲覧いただき、ありがとうございます。
みそすーぱーです。
活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。
復習などにご活用ください。
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以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。
~前回のあらすじ~
崩落する崖に巻き込まれ共に落下したスウォルとリリニシア。
激昂したシェリルが巨大生物の息の根を止めた一方、レピは上級の魔術を使用し二人を助けようとしたものの、巨大生物の最後の足掻きにより集中力が途切れ失敗、意識を失い、リエネもその足掻きからレピを庇い、負傷した。
崖の上に残された三人は──。
「えっと…!確か木がなくなってるとこからこれぐらい引き返したはず…!」
リエネに頼まれた薬と食料を運ぶべく、シェリルは荷物を捨て置いた“巨大生物との接触地点”を探して、荷物を見逃さないよう、目を凝らしていた。
「…あった!私の!中身は…!塗るのはともかく、飲む方の瓶、割れてないといいけど…!」
何度も位置を変えながら、ようやく目的の場所に辿り着いたシェリルは、その場でガサゴソと荷物を漁る。
「よかった、無事だ…!」
最初にヤクノサニユを出発する前、スウォルと言い争いながら購入した、外傷用の塗り薬と、体力の回復を促す液体の飲み薬。
リリニシアにレピという、思わぬ回復役が加わったことで活用される機会がなかったが、ようやく日の目を見た。
ほっと息を吐くのも束の間、シェリルは考える。
五人分の荷物を一人で運ぶのは難しいかな…。
今はとりあえず薬と…ごめんスウォル、食料もらうね。
見付けた後で弁償するから…!
ほとんど食料しか入っていないスウォルの荷物を、心の中で詫びながら漁り、薬以外を取り除いた自分の荷物に移したシェリルは、鞘から剣を抜いた。
「マキューロの方、ごめんなさい!」
そう言うと、次に荷物を回収するに辺り迷わないよう、木々に傷という形で目印を穿ちながら、荷物をレピとリエネの元へ運ぶ。
「リエネさん!」
「見付かったか…。悪いな…」
「いえ!まずこれ、飲めますか?」
「あぁ…」
シェリルが差し出した薬液の瓶を受け取り、口に当て、一息に飲み干したリエネは、渋い顔で呟いた。
「…不味い。これがヤクノサニユの薬か…」
「味を目当てに飲みたがることがないように、わざとそうしてるらしいです。それからこれ、傷口に塗ってください」
次いで塗り薬を渡すと、シェリルは依然、意識の戻らないレピを抱き起こして口を開かせ、薬液を少しずつ流し込む。
その不味さに目を覚ますことを期待していたシェリルだったが、そう上手くはいかなかった。
「つっ…!」
「滲みますか?」
受け取った塗り薬を指で掬い、傷口に塗り込む度、リエネは顔をしかめる。
「あぁ…。仕方ないとは言え、あまり世話になりたくはないな…」
「ならずに済むなら、それに越したことはないんですけどね…。しばらく経てば、さっきの飲み薬が効いてくるはずです。それまで安静にしてください。私、他の荷物取ってきますね」
「いや、待て…」
背を向けようとしたシェリルを引き止め、リエネは首を横に振った。
「私が、動けるようになったら…レピを運んで、そっちに移動しよう…」
「え…なんでですか?」
「レピが意識を失ったのは…おそらく魔術を使いすぎた為だろう…。あれだけ、自然がどうとか…言ってたんだ。木に囲まれてた方が、な…治りがよさそうじゃないか…」
「そ、そういうものですかね…?わ、分かりました…」
シェリルに従い、リエネが片膝を立てて座り込んで食料を口にしながら、30分ほど経った頃──。
「…なるほど」
「どうしました?」
「効いてきた実感がある。不味い薬を飲まされた甲斐はあったか」
「本当ですか!よかった…!」
何度か手を握っては開きを繰り返し、感触を確かめた後、リエネはゆっくりと、自力だけで立ち上がった。
「む、無理はしないでくださいね?」
「分かってる、多少なら大丈夫だ。…よし、移動しよう。シェリルはそっちから頼む」
リエネはレピの身体を引き起こし、先ほどシェリルにされた様に肩を貸し、促されたシェリルも反対から、レピの腕を後頭部に回す。
「どっちだ?」
「こっちです、木に目印つけてきました」
シェリルの誘導に従い、レピの爪先を引きずりながら、三人は目印を頼りに荷物を置いていた場所へと辿り着いた。
「ここです」
「よし、布を敷いてくれ」
頷いたシェリルがレピの身体をリエネに預け、監視中にリエネが眠っていた場所に布を敷くと、二人でレピを布の上に横たえる。
「ひとまずはこれでいい。目を覚ますのを待とう」
「…どのくらい掛かりますかね」
“早く動きたい”という意思を滲ませながら、シェリルは視線を伏せ、呟いた。
「さてな。私には魔術は分からんから見た感じの印象でしかないが…コイツ、かなりの負担を負って魔術を使っていたように見えた。もしかしたら時間が掛かるかもしれん」
「そう、ですか」
「レピを除けば唯一、魔術を扱えるリリニシア様なら分かったかもしれないが…」
「リリニシア…スウォル…」
先ほどは笑顔を見せたシェリルだったが、リエネの口から名が上がると、再び表情を曇らせた。
「…スウォルの耐久力を思えば、リリニシア様を庇いながら、案外あっさり着地してるかもしれんぞ。多少のケガなら、あの異常な回復力もあるし、リリニシア様の癒しの魔術もある」
「リエネさん…。けど…リリニシアは、もしかしたら魔術を使えないかもしれなくて…」
「…は?」
シェリルが絞り出した言葉に、リエネは思わず、すっとんきょうな甲高い声で答えた。
「何を言ってる?使ってきたのを見てるだろ?現に私だってリリニシア様の魔術で治療を受けてるぞ、ハリソノイアで」
「あ、そういう意味じゃなくて…。私、あの大きいのの背中に乗った時、見たんです。リリニシアが“スウォルを治す”って言ってから結構経ってたのに、スウォルは倒れたままで…リリニシアも、側で座り込んで項垂れてて…」
「…どういうことだ?」
困惑するリエネに、シェリルは無言で首を横に振り、“分からない”と示すに留めた。
「コイツなら分かるのかもしれんが…」
目を覚ます様子のないレピに一瞬、視線を落としながら、リエネが呟く。
「 コイツのことはリリニシア様に聞きたい、リリニシア様のことはコイツに聞きたい…。無力だな、私たちは…!」
「はい…」
リエネが苛立ちを隠さず、舌打ちと共に吐き捨てながら近くの木の幹を殴り付け、シェリルは拳を握りしめ、噛み締めた。
その後、自らを落ち着かせるように大きく息を吐き、リエネは続ける。
「…ともかく、今の私たちに打てる最善の手を打とう」
「はい。…“嘆いていても、状況は好転しない”…ですよね」
先ほど言って聞かせたばかりの言葉を復唱したシェリルに、リエネはふと表情を緩めた。
「そうだ。移動するだけなら、私がレピを担いでもいいが…この場所のことも分からなくなったように、私たちでは方向感覚すら見失うような深い森を進むのに案内は必須。やはりレピの回復が大前提になる」
「はい。ってことは今、私たちがすべきことは…レピさんが目を覚ました時の準備、ですかね」
「あぁ、異論はない。…シェリル、眠いか?」
「へ?」
話の繋がりが見えず、今度はシェリルが間の抜けた声で答える。
「い、いえ…そんなこと言ってる場合じゃ──」
「いいや、大事なことだ。人間、どれだけ深い喜びに包まれようと、どれだけ深い悲しみに苛まれようと、眠らなくては生きていけん」
「…」
戸惑い言葉を失うシェリルに、リエネは優しい声で続けた。
「レピの目覚めに備え、今の私たちが出来ることは、可能な限り万全な状態に近付けておくことだ。レピが起きてから“今度は私が眠いです”なんて、笑えないだろう?」
「それは…そうですけど」
「五人なら、誰かが多少ムチャをしても周りがどうにか出来るが、三人じゃギリギリだ。それに私が寝ている間、お前たちは見張りをしてたんだろう?さっきの疲れもあるはすだ。眠いなら眠っておけ」
「じゃあ…はい、お言葉に甘えます」
スウォルとリリニシアを思い、感情的な抵抗は残るものの、リエネの言葉にも理があると納得し、シェリルはしぶしぶ頷くと、平らな地面に布を敷き、自らも横になった。
およそ6時間後にシェリルが目を覚ましたもののレピはまだ目覚めておらず、交代で眠ることを勧められ、リエネも就寝。
シェリルほどの疲れは溜まっておらず、4時間ほどで自ずと目を覚ますも、やはりレピは眠り続けていた。
リエネの脳裏に“ムリヤリ叩き起こす”選択肢が一瞬、よぎったものの抑え込み、目を覚ました時に携帯用の食料ではなく新鮮な肉を食わせてやるべく、小動物を狩ることにした。
そしてさらに2時間後、レピが意識を失ってから実に半日経過し──。
「…ん、く…。ここは…?」
「レピさん!?リエネさん、起きました!」
「やっとか!」
レピが目を覚ました。
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来月、3月14日を持ちまして、本作の#1を一周年を迎えます。
これを一人で祝し勝手に記念して、14日~20日の一週間、毎日20時に投稿を行います。
よろしければお付き合いいただければ幸いです。
次回は3月2日20時にXでの先行公開を、3日20時に本公開を行う予定です。
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~次回予告~
目覚めてそうそう周囲を見回し、記憶を整理するレピ。
すぐにスウォルとリリニシアの所在を尋ねるが、リエネは首を横に振り、“崖の下だ”とだけ答えた。
すぐに探しに行こうとするレピを制したシェリルは、さっそくリエネの教えを実践する。
次回「“特異性”の共通点」




