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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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51/100

#51 巨大生物の“特異性”

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

活動報告にて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1368468/blogkey/3440477/


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

シェリルとスウォルが見張り、リリニシアとレピは魔術の講義、リエネが休眠を取る中、足音と共に現れた巨大生物に存在を気取られ、一行は戦うのではなく、“回避して先に進む”ことを選んだ。

巨大生物の攻撃をスウォルが必死に凌ぐ一方、シェリルは──。

「…」

「シェリルさん!!」

「あ、は、はい!」


 握った剣を見つめ、呆けるシェリルだったが、レピの呼び掛けにより我に帰ると、レピに続いて、吹っ飛ばされた先の河岸でなんとか立ち上がったスウォルの元へと走る。


「無事かお前たち!よく切り抜けたな」


 リエネは駆け寄ってくる二人に気付き、笑顔を見せながら声を掛けた。


「風の魔術を足元に放って高く跳び、なんとか尻尾を飛び越えました。せっかくならリリニシア様にお見せしたかったのですが」

「それはそれは、もったいないことをしましたわね!こちとら生きた心地がしませんでしたわよ!」

「スウォル、平気!?」

「なんとか…。もうちょいブッ飛んでたら川に落とされて…この流れの速さじゃ、あっという間に滝まで…。あっぶねぇ…」


 レピとリリニシアが魔術師として、シェリルとスウォルは姉弟として、それぞれ言葉を交わす。


「よかった…。あんなの、どうやって?」

「細かい話は、省くけど…ぐっ…。触れないヤツに対しては、衝撃を和らげてくれるんじゃねぇかと思って。なんもしなくても死ぬだけだし、イチかバチかでな…。思った通りでよかったぜ…」

「…スウォルくん、ヤツはその盾に触れなかったんですね?」


 息も()()え答えたスウォルの言葉から、レピは情報を収集することに努める。


「あぁそうだ…。」

「話はそこまでだ。起きてくるぞ…!」


 リエネは巨大生物への警戒を緩めることなく、睨み付ける。

 巨大生物が体勢を建て直し、再び対峙した時、気が付いた。


「…どういうことだ」

「リエネさん?」


 シェリルに問われ、リエネは珍しく、声を振るわせながら、小さな声で囁くように答える。


「治…ってないか?顔の傷…」


 全員が一斉に、巨大生物の顔に視線を集中させると、その顔にあるべきリエネの斬撃による傷は、確かに消失していた。


「は!?な…なんで!?魔物じゃねぇだろ…!?」

「どういうこと!?だって反応しなかったのに!」


 スウォルとシェリルは揃って疑問を口にしながら、それぞれ盾と剣に、問い掛けるように視線を落とした。


「…パッと思い付く可能性は、“魔物並みの再生能力を持つ獣”か、“剣と盾の関知を()(くぐ)る特異性を持つ魔物”…でしょうかね」

「その二択なら後者の方が現実的だな…。また特異性か…!」

「…待てよ、特異性?…そういえば…」


 レピが弾き出した分析に、先程のスウォル同様、リエネもボロガブザリを思い出しながら、吐き捨てるように答えると、レピは一人、小さな声で、自らの言葉を繰り返した。


「──!!」


 巨大生物は首を高く持ち上げ、雄叫びと共に五人目掛け、頭を振り下ろす。


「来るぞ!」


 リエネの合図を受け、弾かれるように四人が飛び退き、リエネはその場でわずかに身体をズラした。


「リエネさん!?」


 飛び退く四人が声を揃える中、辛うじて直撃しないギリギリの位置に滑り込んだリエネは、頭が地を叩く直前、振動に阻害されぬよう飛び上がる。


「レピィ!!」

「──風の魔術(オディヌ)!!」


 意図を察したレピが風の魔術で風圧を相殺し、空中で身体を縦に一回転させ、遠心力を乗せた斧の一閃を首に振り下ろした。


「──!!」


 巨大生物は、先程と同じく大量の血液を撒き散らしながら、思わず大きく仰け反った。


「リエネさん!」

「どうする!?退くか!?」


 称賛を含んだシェリルの声に耳を貸さず、今度は再生の兆候を見逃さぬよう、自らがつけた首の傷を鋭く睨み付けながら叫ぶ。


「け、けど魔物だとしたら…マキューロとか関係なく、こんなに自然を荒らし回る魔物、放置する訳にはいきませんわ!けれど…どうしたら!?」

「倒さないと…倒せるの?こんなの…私たちに…!」


 リリニシアの言葉に、シェリルは勇ましく──答えられない。


「やるんだ俺たちが!魔王なんかもっと強ぇぞ!たぶん!」


 高らかに声を上げたのは、唯一、直で攻撃を受け、(しの)いで見せたスウォルだった。


「スウォル…だけど…」

「…そうですわ」

「リリニシア…?」

「ワタクシ、戦いだって覚悟して旅にくっついてきたんですもの…。いつまでも守られるだけのお姫様、やっちゃいられませんのよぉおお!!」


 リリニシアは叫び、身体を震わせる恐れをぐっと飲み込んだ。


「リリニ、シア…」

「…退くにしても、ある程度は体力を奪う必要があるでしょう。みすみす逃がしてはくれないでしょうから」

「レピさん…」


 レピが戦意を見せる中、シェリルは言葉が出せない。


「フン…やるしかないか、上等だ!…シェリル!」

「姉ちゃん!!」

「リエネさん…スウォル…」


 加えて二人の檄を受け──。


「私が…戦うんだ…!」


 シェリルは構え、剣を強く握り締めた。


「よし…やるぞ!!」

「うん!」

「えぇ!」


 スウォルの発破に、若年の二人は威勢よく、自らに言い聞かせるように答える。


「はい!」

「おう!」


 一方年長の二人は、決意を胸に秘めて答えた。

 いざとなれば、“自らを囮に仲間を逃がす”決意を──。


「…とはいえ、どう戦いますの?あんなでっかいの相手に」


 緊迫した空気に似つかわしくないリリニシアの疑問に、一瞬緩みかけるが、レピが即座に閉め直す。


「確かめたいことがあります!スウォルくん、リエネさん!」

「なんだ!?」

「どこでも構いません!傷をつけて、再生の速さを見極めてください!ボロガブザリのように、他の魔物より遅いかどうか!」

「…分かった!!」


 共に一瞬、理由を問おうとした二人だったが、“策があるはずだ”と思い直し、揃って頷いた。


「強化魔術を──」

「いらん!傷の治りを見るだけだろ!“節約”しておけ!」


 リエネは叫びながら走り出し、スウォルも続く。

 レピはそのまま、リリニシアに指示を出す。


「リリニシア様!少しずつ間を開けて、火や氷の魔術で攻撃してください!」

「お、お任せください!」

「僕も他の魔術で攻撃します!…シェリルさん!」

「は、はい!」


 次いでシェリルに。


「あの体格(からだ)では、剣が魔力核まで届かないでしょう。僕に考えがあります、今は体力を温存することに集中してください!」

「え、それだけ──」

「じゃありません!魔術に対するヤツの反応を見て、弱点を判別してください!僕も見ておくつもりですが、余裕があるか分かりませんから!」

「わ、分かりました!」


 レピの指示が全員に行き渡ると同時に、左右の前足を目掛けて走るスウォルとリエネを迎撃すべく、巨大生物は後ろ足に重心を乗せ、両前足を高く持ち上げた。


「踏まれたらひとたまりもねぇな…!」

「図体のわりに器用なヤツだ!」


 二足で立ち上がった姿に圧倒されつつも、二人は冷静に前足の着地点を見定め、足を地につけた直後の隙を叩くべく、まずは回避に専念する。


火の(オレ)──」

「まだです!」

「えっ」


 魔術で援護しようとしたリリニシアを、レピはすぐさま手で制した。

 リリニシアが攻撃することで巨大生物の動きが変わってスウォルとリエネの予測した着地点とズレてしまい、最悪の場合、避けた先に“安全地帯”だった場所に足が降りてくる可能性を排除する為だ。


「今手を出したら二人の目測が狂います!」

「じゃ、じゃあご指示を待ちますわ!」


 ただ歩くだけでも地を揺らしていた巨大生物が、明確な敵意を持ち、体重を乗せて振り下ろす前足が、轟音を立てて地面を踏み砕く。

 離れている三人もよろめかずにいられない振動を起こす中、スウォルは首の一撃を凌いだ時と同様、全身に力を込めて踏ん張り、リエネは斧を地面に突き立てることで抵抗を得て、それぞれギリギリで回避し、振動に耐えた。


「つぇああ!!」


 先んじてスウォルが浅く、次いで斧を引き抜いてリエネが深く、それぞれ刃を足に食い込ませ、引き裂く。

 首や頭を斬られた時ほどではないものの、巨大生物はよろめいた。


「リリニシア様、火を!」

「はい!火の魔術(オレム)!」


 指示を受けたリリニシアは、高く見上げる頭部を狙い、火の魔術を放つ──が。


「外しましたわー!?」


 リリニシアが起こした炎は、ただ空を焼き、消える。

 前足の痛みによろめき、大きく揺れ、位置を変える(マト)を射抜けなかった。


「くっ…!水の魔術(ルネル)!」


 それを見たレピは、すかさず背後に背負った川から数発、水を弾丸のように撃ち出し、動きの少ない胴に命中させる。

 確かに表皮を穿ったものの反応は鈍く、大した傷にはならなかったようだ。


「水ではなさそうか…」


 レピはボソリと呟くと、リリニシアの肩に手を置き、語りかける。


「大丈夫です、落ち着いてください。目的は痛打を与えることではなく、反応を見ることです。冷静に、確実に命中させましょう。…さぁ、もう一度」

「そ、そうですわね…。冷静に、確実に…!ふぅぅ…」


 レピに促され、大きく息を吐いたリリニシアは再び、今度はレピのように、当てやすい胴体に狙いを定め──。


火の魔術(オレム)!」


 今度は狙い通り、魔術の炎が巨大生物の体、首の付け根辺りを燃やした。

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。


来月、3月14日を持ちまして、本作の#1を一周年を迎えます。

これを一人で祝し勝手に記念して、14日~20日の一週間、毎日20時に投稿を行います。

よろしければお付き合いいただければ幸いです。


次回は2月9日20時にXでの先行公開を、10日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

レピの策に従い、リリニシアは魔術を放ち、シェリルは反応を観察し、スウォルとリエネは与えた傷の治り具合を見定める。

彼らの導き出した結論、そしてそれを踏まえたレピの策とは──。


次回「魔術師の策」

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