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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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マキューロの森の異変

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

リリニシアが媒介の作成に苦闘し二時間が経過した頃、レピは仲間たちを起こすことに決めた。

起きないスウォルを威力を抑えた雷の魔術で叩き起こした後、再び移動を開始。

最初の目的地を大きな川を渡った先の集落に、その後に川の先の滝に沿って崖を下ることを次に定めた理由として、レピは私情だと語る。

「私情、ですか?」


 滝に沿って崖を下る理由として、安全性と共にレピが挙げた“私情”に、シェリルは興味を示した。


「滝壺から東に行くと、僕が産まれた村があるんです。幼い頃に離れてしまったキリなんですが…。マキューロ中枢の“シャファルノール”より手前にあるので、せっかくなら立ち寄りたい、というのが本音です。」

「へぇ、故郷!そういうことなら…」


 シェリルはそう言いながら、周囲の仲間たちに視線を投げる。

 元より土地勘のあるレピの提案ということもあり、反対する者はいなかった。


「皆さん、ありがとうございます。…もう暗いみたいですね。もう少し進んで適当な場所が見つかったら、今日はそこで休みましょう」


 レピが葉の隙間から除く空を見上げて呟くと、一行は揃って頷き、再度移動を始めた。

 それからしばらく歩くと──。


「これは…?」

「レピさん?どうなさいましたの?」


 これまでと変わらず先頭を歩いていたレピが、ピタリと足を止めた。

 リリニシアが尋ねながら、レピの肩越しに先を覗き込むと、これまでの道中と異なり、木々がなく見晴らしのいい景色が広がっている。


「あら、ここは随分とサッパリしてますのね。今日はこちらで休みますの?」

「…いえ、変です。見てください」


 レピは手招きして後続の仲間たちを集めると、足元を指した。

 レピの示した先のモノを、リエネはしゃがみこんでまじまじと眺める。


「切り株…ではないな。刃物で切ったんじゃなく、力でへし折られ、薙ぎ倒された…という断面だ」


 腰かけることなど到底できそうにない、トゲだらけの断面を見つめ、呟いた。


「一本や二本じゃない、ざっと見渡せる範囲は同じような状態だが…見たところ、折れた“先”はなさそうだな。…革新主義者か?」

「いえ。方法以前に、木を薙ぎ倒すだけ倒しておきながら他に手を加えた痕跡が見られないあたり、恐らく違うかと」


 そう言うと、年長者二人は沈黙した。


「ど、どういうことだよ?」

「人以外の何かが、木を折っちゃった、ってこと…だよね」


 スウォルとシェリルは、互いの顔を見ながら困惑を隠せずにいる。


「レピさん、これって…もしかして、例の唸り声じゃ?」


 同じく困惑しながら尋ねるリリニシアに、レピは汗を垂らしながら答えた。


「その可能性も否定できません。川を渡るには通り抜ける必要がありますが…少し引き返して場所を探しましょう」

「その方がいいだろうな…。魔物か獣の縄張りなのかもしれん、極力立ち入らん方がいい。…戻るぞ」


 レピとリエネの判断に従い、一行は緊張感に包まれながら、これまで以上に慎重に周囲を警戒しながら僅かに引き返す。


「ここはどうだ?快適とは口が裂けても言えんが、この距離ならあの“縄張り”にも注意を払える」


 行きとは逆の順番で先頭を歩くリエネが、仲間たちに声をかけ、呼び寄せる。


「クソッ…分かっちゃいたけど邪魔っくせぇなぁ、木」

「ここと比べると、昨日休んだ場所って過ごしやすかったんだね…」

「あんな景色を見た後じゃなかったら文句の一つも言ってましたわ、ワタクシ」


 すぐそばに脅威が潜んでいるかもしれない危機感から、普段よりも若干、雰囲気が荒れる三人に、レピは努めて作った穏やかな声色で語りかけた。


「まぁまぁお三方、そうおっしゃらずに。言い換えれば、僕たちが身を隠すのにも好都合ですから」

「それはそうかも知れませんけど…正直、気が休まらないですよ…」


 頭では理解していても感情が納得しない様子でシェリルがこぼすと、レピは大きく頷きながらも、優しく諭す。


「同感です。が、それでも、少しでも、身体を休めなければなりません。いざという時、疲労が命取りになる可能性もあります」

「…はい」

「私が警戒しておく。お前たちは眠れ」


 リエネが再び、見張り役に名乗り出ると、リリニシアはそれに異議を唱えた。


「お待ちください、連日じゃありませんの。休まなければならないのはリエネさんも同じでしょう?」

「ご心配には及びません。訓練を積んでいますし、体力には自信があります」

「そういう問題じゃありませんわよ…」

「それよりスウォル」

「…」


 リエネの呼び掛けに答えず、スウォルは顔をしかめて、“通り抜けなければならない”という、先程の空間を睨み付ける。


「おい、スウォル!」

「…え、あ…なんですか?」

「聞いてなかったのか?私が見張るからお前も休め。ただし状況が状況だ、起きないようならまた乱暴な起こし方をしてもらうことになる。そのつもりで──」

「いや」


 リエネの忠告を、首を横に振りながら遮った。


「今回は俺が見張るよ」

「なに?」

「余裕がある時ならともかく、流石にこの状況で、俺が起きれないせいで動きが(にぶ)るのは避けたいし…なにより、身体を休めなきゃいけないのは分かってるけど、あんなの見た後でオチオチ寝る気にならねぇよ」

「お前な…」

「すみませんリエネさん、私も同じです」


 呆れる様にため息を吐くリエネから弟を庇うように、シェリルも同調する。


「シェリル?」

「ワタクシもですわ。というか、あれを見て悠長に寝られる方がどうかしてますわよ」

「リリニシア様まで。…レピ」

「…いえ、無理もないでしょう」

「なに!?お前…!」


 助けを求めるつもりでレピの名を呼んだリエネだったが、目論見は外れた。


「幸い昨晩はリエネさんとリリニシア様のおかげで、しっかり休むことが出来ています。それこそ、“乱暴な起こし方”が必要なくらいに。ねぇ?スウォルくん」

「わ、悪かったな…」


 バツが悪そうにそっぽを向くスウォルの肩に手を起き、続ける。


「いいえ、悪くありません。それどころか、それだけしっかり休めているのは喜ばしいことですらありますよ。…眠らなくても身体を休めることは出来ます。今回はお三方の若さに頼り、少しばかり無理をしてもらってもいいのでは?」

「4対1か…」


 形勢不利を悟り、リエネは肩を竦めた。


「それに木が倒されているということは、リエネさんの望んだ通り、視界が開けたとも言えます。日が昇って明るくなれば尚更です。少し考え方を変えて、日が昇るのを待つことが目的。それまでの時間を利用して、各々が自由に休息…と思うことに──」

「もういい分かった、好きにしろ。そういうことなら、私は少し眠らさせてもらう。休める時に少しでも休んでおきたい」


 数的不利に加え、弁の立つレピを自陣に引き込めなかったことでリエネは諦め、レピの言葉を遮って同意した。


「えぇ、そうしてください。何かあれば起こします」

「あぁ。だがその前に確認しておきたいことがある」

「なんでしょう?」

「お前は“木を倒したのに、土地に手を加えていない”ことを根拠に“革新主義者によるものではない”と言ったが…革新主義者が、土地ではなく木の方を目的としていた可能性は?」


 リエネの問いに、レピはゆっくりと頷く。


「否定はできません。だから断定せず、“恐らく違う”と表現するに留めました」

「そうか。もう一つ、お前はどちらなんだ?原理主義か、革新主義か」

「…」


 リエネの問いに、レピは一瞬、視線を伏せた後、再び目を見据え、答えた。


「明確にどちらとは言いがたいですが…どちらかと言えばやや原理主義寄り、と言ったところでしょうか」

「そうか、分かった。…では見張りは任せた。私は眠る」


 そう言うとリエネは、そそくさと布を敷いて横たわり、まもなく寝息を立て始めた。

 リエネの邪魔をしないよう、レピは声を潜めて三人に問いかける。


「さて…ではどうしましょうか」

「基本的には俺と姉ちゃんが交代で警戒しとくよ」

「え、どうしてですの?ワタクシも──」

「ううん。リリニシアも昨日、見張りしててくれたんだから、私たちより寝れてないでしょ?」


 スウォルに異を唱えようとするリリニシアを、シェリルが遮った。


「それにレピさんも、リリニシアの修行に付き合ってたんですよね?」

「え、そうなの?」

「僕はたまたま早く目が覚めただけですよ」

「それでも、私たちより寝てないです。二人とも、眠くなったら無理せず寝てくださいね」

「けれど──」

「リリニシア様」


 なおも食い下がろうとするリリニシアの肩に、レピは優しく手を置いた。


「レピさん…」

「お言葉に甘えましょう。僕も同じ提案をするつもりでした」

「ですが…それでは、ワタクシたちは何をするんですの?」

「そうですね。一つはお二人が交代しても追い付かない程に疲労してしまった時の為の控えです」

「一つ?他には?」

「もちろん、今朝の続きですよ」

「何おっしゃいますの!アレしんどいんですのよ!?休まなきゃって時に──」


 小さな声ではあるが、猛烈な勢いで食ってかかるリリニシアに、レピは両手のひらを向け、苦笑いを浮かべながら答える。


「落ち着いてください、分かっています。ですので今回は座学。風の魔術について、より理解を深める時間に当てましょう」

「“媒介を作ってる内に出来るようになる”って言ってたじゃありませんの」

「そのつもりでしたが、状況が変わってしまいましたので。ただ時間を浪費するより、予定をねじ曲げてでもその時々で出来ることに注いだ方が有意義でしょう?」

「それはそうですが…分かりました、レピさんの判断に従います」


 ため息を吐きながら折れたリリニシアは、シェリルとスウォルに向き直った。


「そういうことですので、ワタクシたちはこっちでゴニョゴニョやってますわ。必要だったら遠慮しないで呼んでくださいまし」

「ゴニョゴニョって…。うん、分かった。その時は頼らせてもらうね」

「なぁレピさん、眠そうにしてたら休ませてやってくれよ」

「もちろんです。お二人も無理はなさらず」


 四人は顔を見合せ頷きあうと、二組に別れ、それぞれの時間を過ごし始めた。

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は1月26日20時にXでの先行公開を、27日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

“不思議だなぁ”。

スウォルが広場を警戒する中、シェリルはふと呟く。

真意を問うスウォルに、魔術でムリヤリ起こされるほど寝起きの悪いスウォルが、ユミーナの依頼でハリソノイア北東部に赴いた際、深夜にも関わらず魔物の咆哮で飛び起きたことを疑問視するシェリル。

一方、負担を掛けないため、レピは座学として風の魔術について、リリニシアに語り聞かせる。

そんな時、スウォルが異変に気付くのだった。


次回「異変の正体」

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