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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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お姫様と勇者(弟)

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

リエネと交代したリリニシアが見張りを勤める中、仲間に先立ち、レピが目を覚ます。

リリニシアに魔術の手解きを頼まれたレピは、仲間を起こさずに済む静かな修行として、まだリリニシアに扱えない風の魔術の媒介を作成することを提案した。

渋るリリニシアだったがレピのおだてられ了承し、勝手に国へのツケで購入した宝石を取り出す。

二時間の死闘の末、叫ぶのだった。

“全っ然分からんのですけれど!?”

「リリニシア様、そんな大声…いえ、そろそろ皆さんを起こしましょうか」


 木々の隙間から覗く空が白んできていることを確認し、レピはため息と共に呟いた。


「いやだってコレ…なんなんですのコレ!?」

「んん…何ぃ…?」

「おや、シェリルさん。おはようございます」


 躊躇うことなく大声で喚き続けるリリニシアの声に、まずはシェリルが目を覚ました。


「レピさん…。おはようございます…。なんの騒ぎですかぁ…?」

「リリニシア様に魔術の手解きを施していたんですが、なかなか思うように行かなくて」

「難しいんですわよ!こう…感覚が!」

「リリニシア…?そっか、リリニシアが見張ってくれてたんだったっけ。リリニシアもおはよう」

「えぇはいおはようございますぅ!」


 ヤケクソ気味に叫ぶリリニシアに、シェリルは思わず吹き出した。


「どんな訓練?」

「媒介を作ってみてるんですけれど…全然上手く行きませんわよぉ…」

「媒介かぁ…。魔術を使いやすくしてくれるヤツだよね。そんなに難しいんだ?」

「えぇ、メチャクチャ難しいですわ。レピさん、全然まともに教えてくれませんもの!」

「感覚で掴むしかないって言ったじゃありませんか、最初に。…けど、進捗は悪くありませんよ」

「どこがですの!?」


 果敢に噛みつくリリニシアを、レピは笑顔で宥める。


「ご自分では分からないでしょうが、もう少し進めば手応えを感じられると思います」

「…ホントですのぉ?」

「えぇ、本当です。信じてください、というしかありません。…さて、今はこの辺りで切り上げましょうか」

「え、いい感じなんですよね?だったらこのまま続けた方がいいんじゃないですか?」


 シェリルの疑問に、レピは首を横に振りながら答えた。


「いえ、難しいでしょう。ね、リリニシア様」

「…そうですわね。なんというか、精神的にこう…なんか消耗しますわ。全然上手くいかない焦りもあるかもしれませんが」

「そうなんだ…。大変なんだね、魔術って」

「という訳で、今日はここまでです。さぁ、お二人を起こして移動しましょう」

「そうしましょうか」


 そう言いながらレピがスウォルに歩み寄り、シェリルは頷きながらリエネの肩を揺する。


「…む、シェリル。もう朝か」

「おはようございます、リエネさん。見張り、ありがとうございました」

「あぁ」

「起きてください、スウォルくん」

「んぁ〜…zzz」

「いつも手強いですね、スウォルくんは…」

「弟がすみません…。もう手荒に叩き起こしちゃってください…」


 シェリルが恥ずかしそうに肩を竦めると、レピはニヤリと、楽しそうに口許を歪めながら頷く。


「出ましたわー、その表情(かお)

「やっぱり怖いよね、あの表情の時のレピさん…」


 シェリルとリリニシアのぼやきを意に介さず、レピはスウォルの顔の前に手をかざす。


「ではそのように。──雷の魔術(ディケン)


 レピの手の平からパチリと音を立て、小さな稲妻がスウォルの顔に向けて放たれると──。


「ぶわっぷ…!?な、なんだ!?」


 スウォルは体を大きく震わせ、手でゴシゴシと顔を擦りながら飛び起きた。


「おはようございます、スウォルくん」

「れ、レピさん?おはようございます…?」

「…すごい、あのスウォルが一発で」


 弟の寝起きの悪さを熟知するシェリルは、それを見事に起こして見せたレピに舌を巻く。


「こんな使い方も出来るんですのね。繊細に制御できれば、本当に便利に使えそうですわね、魔術…」

「というか、そんなことが出来るなら普段からやっててくれてもよかったんじゃないか…?」


 改めて魔術の幅の広さにリリニシアが感嘆する一方、リエネはこれまでの徒労に愚痴をこぼした。


「今はマキューロ(この環境)にいるおかげで、この程度であれば消耗も在って無いようなものですが、他ではそうも行きません。この一発の些細な消耗が生き死にを別つかも知れない…。そう考えると、出来るだけ節約したいじゃありませんか」

「節約か…。そういう点では不便だな、魔術も」

「あの、なんの話してんの…?」


 話に着いていけず、呆然としながら頭に疑問符(ハテナ)を浮かべるスウォルに、レピは先程までの怖がられた表情ではなく、普段通りの穏やかな笑顔を見せた。


「寝覚めはどうですか?」

「あ、うん…目は覚めた。けどなんか顔がムズムズする…」

「すみません、少々乱暴な起こし方をしてしまいました。そろそろ移動しましょう、先は長いですから。支度をお願いします」

「は、はい…」


 ムズムズを振り払うようにもう一度、顔を擦りながら立ち上がり、急いで身支度を済ませたスウォルは、威勢よく声を上げ、ピシッと正面を指差した。


「──よし、行くかぁ!」

「そっちじゃないですよ、スウォルくん」

「…う~す」


 昨日(さくじつ)と同じく、レピを先頭に草木をかき分けながら足を進める中、ふとシェリルが尋ねた。


「レピさん、どれくらい掛かりそうな見込みですか?」

「そうですね、国境から一番近い集落を目的とするとして…三割ほどになるでしょうか」

「丸一日で三割かぁ…」

「仮に道が平坦であれば、二日間ほどで辿り着ける距離ではあるんですが…やはり道の悪さと、それに伴う休息の頻度が厄介ですね」

「単純計算で、あと二、三日は掛かるってことですわね…。この旅を始めた時のワタクシが聞いたら投げ出してますわ」


 レピの見立てを聞きあからさまに、大きなため息をつきながら溢れ出たリリニシアの愚痴を、スウォルは笑って受け止めた。


「ははは…そうだろうなぁ。“と~お~い~で~す~わ~!”って」

「“そのうえ歩きづらいですわ~!!”でしたわね」

「無理もねぇよ、こんなの。普通に歩くのしんどいし…。俺だって最初からこれなら投げてたかもしんねぇ」

「…珍しいですわね。アナタが嫌味も言わずに素直に共感するなんて」

「そんなことねぇだろ!?」

「ありますわよ!曲がりなりにも一国の姫に馴れ馴れし──くぅっ!?」


 横を向いてスウォルに文句を言うことに気を取られ、リリニシアは張り巡らされた木の根に足を引っかけ、前のめりに倒れこみ──。


「リリニシア!?だいじょ──」

「おっと。大丈夫か?」


 ──悲鳴に振り向いたシェリルの目線の先で、スウォルに抱き留められた。


「あ…え、えぇ…」

「気を付けろって言われてたろ、レピさんに。馴れ馴れしいってリリニシアがそうしろっつったんじゃねぇか」

「に、にしても限度があるという話ですわ!…い、嫌ではないですが…」

「声ちっさ。なんて?」


 徐々に弱まり、最後には蚊の鳴くような声で、リリニシアが深く俯きながらスウォルに礼を述べる姿を、先頭のレピは振り返りながら、ニヤニヤと眺めている。

 リリニシアの反応に驚き、言葉も出せないシェリルの目線の先にはあったのは──。


「な、なんでもありませんわ!助かりましたありがとうございます!」

「あ、おい!そんな急ぐとまた──」

「今度は気を付けてますわよ!」


 ──赤らめた頬を悟られないよう脚の回転を早め、横に並んでいたスウォルを置き去りにするリリニシアの姿だった。


「もしかして、リリニシア…?」


 シェリルの囁くような独り言に答える者は、誰もいなかった。 


「…なんなんだ?」

「なんだスウォル、怒らせたか?」


 一方、リリニシアの妙な態度に首を捻るスウォルの横に、今度は最後方で周囲を警戒していたリエネが並び、声をかける。


「少なくとも今回は怒られる(いわ)れはねぇと思うんだけどなぁ、俺」

「…くっくっく。そうだなぁ」

「な、なんすか。リエネさんもなんか妙だな」

「いいやなんでも?気にするな」

「えぇ…?なんか気味悪ぃな。…ん?リエネさん、なんか聞こえねぇか?」


 困惑を深めながら、スウォルはピクリと体を震わせ、キョロキョロと辺りを見回しながら、リエネに尋ねた。


「…聞こえるな、“ドドド”というか、“ゴゴゴ”というか。例の唸り声ではなさそうだが…おい、レピ!この音は?」

「滝ですよ。もう少し歩くと大きな川とぶつかります。…休憩も兼ねて、少し足を止めて今後の流れを確認しておきましょうか」


 レピの号令を受け、五人で膝を付き合わせると、そのままレピが切り出す。


「当面の目的地、最寄りの集落はその川を越えた先にあります。まずはその集落に向かい、十分に心身を休めてから、少し引き返して川に戻り、滝に沿って崖を下ったのち、東に向かいます」

「わざわざ引き返すんですの?」


 チラチラとスウォルの顔を伺いながらも、冷静さを取り戻したリリニシアの疑問に、レピは淡々と答えた。


「一応下れる道はあるのですが、かなり高さな上、極めて険しい道程になります。万全な状態に少しでも近付けておくべきかと」


 そのリリニシアの様子をチラチラと伺いながら、シェリルも質問を重ねる。


「マキューロの中枢へは、その崖を降らないと行けないんですか?」

「崖を回避するなら、よほど遠回りをする必要がありますね。安全を最優先にするなら大回りすべきなんですが、ここまで来るのに掛かった時間を考えると…。マキューロの後にも回らねばならない国と、討たねばならない魔王(標的)がいますから」

「なるほど…。滝沿いじゃないと難しいんですか?崖を下るのって」

「…」


 シェリルの問いに、レピは一瞬、口を閉ざした後、再び答えた。


「その道が一番安全というか、まともだとは思うのですが…正直に言うと、私情もあります」

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は1月19日20時にXでの先行公開を、20日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

“私情”を尋ねられ仲間たちに明かし、計画に承諾を得たレピ。

最初の目的地、川の向こうの集落を目指し歩みを進める一行はその最中、異変と直面することになった。


次回「マキューロの森の異変」

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