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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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勇者一行、二度目の旅立ち

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

デギンズが初対面のリエネを睨んだ理由を問い詰め、“カロニアを見るレピの目も同じ”というシェリル。

話の流れでカロニアがティサン人だと聞かされたグラウムは一人納得し、マキューロとティサン、ヤクノサニユとハリソノイアの“常識”を、二人に説き、“それが変わるかも知れない”と希望の火を灯した。

「たっだいま戻りましたわー!!」


 デギンズが食事の準備に出てからしばらく、レピとリエネを引き連れたリリニシアが扉を開け放ちながら、元気よく声を挙げた。


「あ、お帰りなさい!」

「どうだった?馬車、預かってくれるって? 」

「もっちろんバッチリですわ!ワタクシのお仲間の一人と思って丁重に扱うよう、お祖父様に言い聞かせてきましたわ!」


 口々に迎え入れるシェリルとスウォルにリリニシアは、後ろで苦笑いを浮かべるレピとリエネを気にせず、力強く握った拳を掲げて見せた。


「あと一応、言った通り城で泊まっていいかも聞いてみたのですけれど…やんわりと拒否られましたわ。なにか後ろめたいことでもあるのかしら」


 “あの分からず屋”とでも言いたげに首を横に振りながら肩をすくめるリリニシアに、レピは懐かしむように答えた。


「まぁ僕とリエネさんは他国人ですし、知られる訳に行かない国家機密とかもあるのでしょう。そう考えると、躊躇いなく泊めてくださったユミーナ様の豪胆さがよく分かりますね」

「“襲われたら殴り倒せばいい”だからな、あの方は。…む?デギンズ殿とやらは?」


 呆れた笑いを溢しながらながら、リリニシアの肩越しに道場を見回したリエネが尋ねると、先ほどのデギンズの無礼を詫びながら、グラウムが前に出た。


「飯の準備に行かせた。無論、リエネ殿の分も用意させておる。…先は悪かったの、ウチの阿呆が」

「なんの。ヤクノサニユに入ってから、白い目で見られることが常でしたから。むしろグラウム様がそうでなかったことに驚いたくらいです」

「カッカッカ…。こうも長く生きると、森よりも木を見るようになる。ハリソノイアにもヤクノサニユにも、色んなヤツがおるのは分かっとるからの」

「森よりも木…」


 グラウムの言葉を囁くように繰り返し、シェリルはチラリとレピを見る。


「…どうしました?シェリルさん」

「あ、いえ、なんでも…」

「…?」


 シェリルの曖昧な態度にレピが困惑する中、再び外から扉が開かれると、一行とグラウムの食事と布団を持って、デギンズが数名の部下と共に戻って来た。


「失礼します。お食事をお持ちしました」

「うむ、いつも済まぬな」

「いえ…」


 デギンズは一度グラウムに頭を下げると、次にリエネに視線を移す。


「?」

「先ほどのご無礼、お詫びいたします」


 再び頭を下げ、リエネの分の食事を自ら差し出した。


「慣れております、お気になさらず」

「リエネさん、そんな風にチクチク刺さないで、素直に受け取ってあげてください」

「え?いや、刺してるつもりは…」


 シェリルに咎められ、困ったように頭を掻くリエネを庇うように、デギンズが割って入った。


「こちら、ヤクノサニユに古くから伝わる伝統料理でございます。ここまでの道中、既に召し上がっておられるかも知れませんが、お楽しみいただければと思います」

「…ありがとうございます。いただきます」


 リエネの謝辞にデギンズは何も言わず、ただ頭を下げて答えた。


「美味しそうですね。調理はデギンズさんご自身が?」


 興味深げにレピが尋ねると、デギンズは下げていた頭をあげ、首を横に振る。


「まさか、私はここまで運ぶだけです。軍の料理人がお作りしております」

「そうでしたか。さぞ腕のいい料理人なのでしょうね。…ん、数が足りなくありませんか?」

「いえ、グラウム様と皆様、合わせて六人分。過不足ございませんが」

「…デギンズさんは召し上がられないのですか?」

「えぇ、こちらでは。これから拠点に戻っていただくつもりです」


 デギンズの回答に、レピは首を捻る。


「グラウム様もそちらで召し上がればよろしいのでは…?」

「ワシがいると若い衆も気が休まらんじゃろ?じゃから道場(ここ)に持ってきてもらっとるんじゃ。ワシ自身も落ち着かんしのぉ」

「なるほど…」

「ではグラウム様、私はこれで」

「うむ、ご苦労じゃったの」

「食器は明日、朝食をお持ちする際に回収いたしますので、扉の側にでもまとめて置いておいていただければ。失礼いたします」


 デギンズはグラウムに一礼、次いで一行にも頭を下げると、部下を引き連れ立ち去った。

 一行はヤクノサニユ料理に舌鼓をうち、まもなくデギンズたちが持ち込んだ布団で、久しぶりに心地よい眠りについた。

 そして翌朝──。


「ん…くぁ…」

「やっと起きたか。相変わらず朝は弱いのぅ、スウォル」

「んぁ〜…。もう皆起きてんのか…」


 例によってスウォルが最後に目を覚ますと、やはりいつも通り、皆は既に準備を済ませていた。

 寝ぼけ(まなこ)でスウォルが準備を済ませ、昨晩と同じ流れでデギンズが持ってきた食事を摂り、そして──。


「っしゃ、行くかぁ!」

「威勢がいいのは結構じゃが、油断するなよ。シェリルもじゃ」

「はい、師匠(せんせい)!」


 日が昇りきる前に道場の扉を出て、デギンズが見守る中、グラウムはまず、スウォルとシェリルを激励。


「姫様、くれぐれも御身(おんみ)を大切になさってくだされ」

「もちろん、言われるまでなくそのつもりですわ!」


 次いでリリニシアを慮り、それから他国の二人に視線を移す。


「三人とも、心身ともに未熟。手間をお掛けするかとは思うが…お二方、何卒よろしくお頼み申し上げる」

「むしろ僕が助けられる立場かも知れませんが、力を尽くします」

「お任せください、グラウム様」


 レピは恐縮しながら、リエネは威風堂々と、それぞれの尽力を誓う。


「なぁ師匠、その…」

「どうした?スウォル」

「あー…なんだ…」


 スウォルが言い淀みながら、グラウムの後ろにいるデギンズに一瞬に目配せすると、デギンズは首を小さく横に振って答えた。


「なんじゃ、気持ち悪いのぅ。言いたいことがあるなら言わんか、らしくもない」


 促されてなお、喋れずにいるスウォルに代わり、シェリルが口を開いた。


「師匠も…えと、お体に気を付けてくださいね」

「フン、お前らに言われるまでもないわ!」

「師匠こそ、そうやって油断すんなよな。歳考えてくれよ、とっくにジジイなんだから」


 シェリルに乗っかる形でスウォルが軽口を叩くと、グラウムは一瞬だけ、背後に意識を向け、答える。


「そういう台詞はワシから一本でも取ってからほざくんじゃの、小僧っ子が」

「…取ってやるよ、次来た時。だからそれまで…それからも──」

「スウォル。…行こう?」


 シェリルが肩に手を置き、スウォルの言葉を遮った。


「あぁ。…行ってくるよ。またな、元気でな。…ジジイ」

「おう行ってこい、クソガキめ」

「デギンズさん。父さんの捜索、よろしくお願いします」

「…あぁ、分かってる」


 スウォルがグラウムと、シェリルがデギンズと、それぞれ出立の挨拶を交わし──。


「よろしいですわね、お二人とも?それでは──マキューロに向けて、いざ出発!ですわー!」


 リリニシアの音頭と共に、一行は道場を後にした。

 振り返らず遠ざかり、やがて見えなくなるまで一行を見送ったグラウムは、前を見据えたまま背後のデギンズに向け、ボソリと呟く。


「珍しいのぉ、デギンズ」

「…何がでしょう」

「普段なら、スウォルがあんなクチを叩けば止めておったじゃろ。どういう心境の変化じゃ?」

「それは…グラウム様も、アイツの軽口を楽しんでおられるのかと思い直しまして」


 デギンズの返答に満足が行かない様子のグラウムは、さらに続けた。


「ほう?それだけか?」

「…それだけ、とおっしゃられますと」

「カッカッカ…いや、よい。拠点に戻って構わんぞ」


 “それだけ”だとは答えない姿に納得したように笑いながら一人、すれ違って道場へ戻って行った。

 固く握り締めた拳を震わせるデギンズを残して…。


 ────────


「そういえばその傷、本当に残ってしまいましたわね…」


 グラウムたちが見えなくなるほど離れた頃、城付近の喧騒を背に、のどかな道を行く一行。

 リリニシアはリエネの頬の傷を見ながら、息を漏らすように呟くと、リエネは指でそっと傷跡を撫で、ニヤリと笑みを浮かべた。


「ふふ…サマになってますか?」

「ご本人が嬉しそうだからいいですけれど…よくも女性の顔にこんな大きな傷を、と思ってしまいますわね」

「そんなことは気にしませんよ。かの“神槍”との手合わせで負った傷…一生の宝です」

「傷がぁ?…理解(わか)りませんわぁ~…」

「まぁまぁ、それがリエネさんって“木”ってことだよ」


 眉を寄せ、首を捻りながらもリエネの傷を凝視するリリニシアを、シェリルがグラウムの言葉を用いて諌める。

 リエネは少し気まずそうに、頬の傷を掻いた。


「せっかく庇ってくれたところ悪いが、(これ)に関しては、ハリソノイアって“森”に共通するかもしれんな。それより──ハリソノイアとの国境から中央の城まで五日掛かったってことは…ヤクノサニユがやや南北に長いことを考えると、マキューロまでは三、四日ほどってところか?」



 リエネが辺りの穏やかな景色を改めて見回し、誰ともなく尋ねると、顎に手を当て、考えながらレピが答える。


「そんなところでしょう。近付くにつれ、どんどん草木が増えていくと思いますよ。僕も通った訳ではありませんが」

「そうか、お前はマキューロから直接ハリソノイアまで向かったんだったな」


 レピとリエネが環境の違いについて論じている一方リリニシアは、スウォルがチラチラと背後に意識を向けていることに気がついた。


「やっぱり気になりますか、クーヤイ様のこと」

「そりゃあまぁ、それも気になるよ」

「それ“も”?」

「いや、なんでもねぇ。さ、歩こうぜ!マキューロまでどんくらい掛かるんだ?」

「…その話してましたわよ、さっき」

「え、マジ?」


 心残りを振り切り、自分に言い聞かせるように首を横に振るスウォルの姿を、リリニシアは寂しげな表情で見つめた。

 それからこれまでと同じく集落への宿泊と野宿の末、三日と少し歩みを進め、昼──。


「いよいよですわね。ここから先が…マキューロですわ!」

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は12月29日20時にXでの先行公開を、30日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

辿り着いたマキューロとの国境で、目の前に広がる森林に絶句する一行。

ヤクノサニユとの環境の差を目の当たりにし、圧倒される中、マキューロ人であるレピが先陣を切り、国境を踏み越える。

道中の集落で聞かされた“不気味な唸り声”を警戒し、慎重に歩みを進め──。


次回「勇者一行、初めてのマキューロ」


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