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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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掌の上

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

グラウムを相手に圧倒されながら奮戦するリエネが自らの土俵に引きずり込むべく、策を練ると、グラウムもそれを察し、あえて応じる。

一方シェリルとスウォルは、デギンズから“グラウムの体調が優れない”と、衝撃的な報せを聞かされる。

「ど、どういうことですか!?師匠(せんせい)の…?」


 シェリルは動揺を隠さず、デギンズに詰めより、両肩を掴む。

 スウォルも続いて問い詰めた。


「説明してくれデギンズさん!俺らがいねぇ間に、なにが…!?」

「分かってる。まずは落ち着け、二人とも。ちゃんと話すから」


 二人の反応を想定していたデギンズは、対照的に冷静な口調を崩さず諌める。

 肩を掴むシェリルの手を優しく握り、降ろさせながら、デギンズは言いづらそうに続けた。


「ご本人としては隠しておきたいようだ。グラウム様にお会いしても、体調に関しては深く触れないでくれ」

「わ、分かりました。教えてください」


 まずはシェリルの、ついでスウォルの目を見て、静かに頷く。


「毎回のことではないが…時折、発作が起こっているようでな。あまり表に出してはいないが、苦しそうに顔をしかめているお姿を見るんだ」

「そんな…」

「副団長としてお側にいることが多い俺も、ご本人から直接、不調について聞かされたことはない。おそらく誰にも…陛下にさえ、話されていないだろう」

「嘘だろ…?」


 重苦しく語るデギンズに、二人は相槌以上の口を挟めずにいた。


「…こんなことは考えたくもないが、お歳を考えれば…いつ、その時が来てもおかしくないかも知れん…」

「…!」


 二人は口をパクパクと開閉させながら目を見開き、見合わせる。


「…グラウム様も、お前たちとの交流を心から楽しんでおられるようだ。であれば、スウォルが無礼を働こうと、俺が口を出すべきではないのかもしれん、と思ってな。普段の通りに接してあげてくれ」

「…」

「お前たちだから話した。繰り返すがこのことは他言無用、俺たち三人だけの秘密だ。いいな?」

「嘘だ…!父さんがいなくなって、師匠まで…!」

「…」


 スウォルは受け入れられず首を横に振り、シェリルは無言で、力なく頷いた。


「…そんな暗い顔をしていては不審がられる。道場に着くまでに、気持ちを整理しておてくれよ」

「…あの、デギンズさん」

「なんだ?」


 スウォルの肩を撫でながら、シェリルは自らを落ち着かせるように深く息を吐き、尋ねた。


「なんでデギンズさんが父さんの小屋に?言ってしまえば様子の確認だけなのに、わざわざ国防軍の副団長が…」

「…俺が志願したんだ。クーヤイさんとは、個人的な親交もあるからな」

「そうだったんですか…。そんなに仲がよかったなんて、初めて知りました。けど、先生の体調がよくないのに、副団長のデギンズさんが離れてていいんですか?」


 シェリルの質問に、デギンズは少し考え込む様を見せ、答える。


「…さっきも言った通り、グラウム様ご自身が隠しておられるからな。俺も気付かないフリをして、不自然にならないよう、あえて適度に離れることにしてるんだ」

「なるほど…」

「ほらスウォル、元気出せって」


 シェリルの質問が一区切りついたと見たデギンズは、すっかり口をつぐんでしまったスウォルの背を優しく叩く。


「…あぁ、分かってる」

「そうか。そら、もうちょっと歩けば道場だ。いつも通りにな、二人とも」

「うん…」

「はい…」


 ────────


 同じ頃、道場では──。


 ただ槍を構え、自然に佇むグラウムに対し、リエネは身体を即座に薙ぎ払えるよう、斧を横に構える。

 互いを射程範囲に捉え、睨み合う中──。


「しっ!」


 先に動いたグラウムの突きを、極限まで神経を尖らせ、リエネはほんの僅かに首を捻り、今度は自らの意思の元、致命の一撃を()()()()()()

 槍の穂先が頬を裂き、溢れた血と共にリエネの頭部を通りすぎると同時に踏み込み、グラウムの実力への信頼からなんら躊躇せず、首から身体に捻りを連動させ、思い切り斧を振るう。


「ぜぁ!!」

「ふっ!」


 潜るか引くか、いずれかを想定していたリエネの思考はほんの一瞬、グラウムの行動によって奪われた。


跳んだ!?間に合わんぞ、斧を止めるか──いや違う!

石突(いしづき)で床を突いて加速…!!


 瞬く間に槍を引き戻していたグラウムは

、床をついた瞬間に槍を柄の中ほどで両断され、やや体勢を崩しながらもリエネの斬撃に対し、空中で身体を横倒しにしながらスレスレで躱した。


「!!」


 リエネも急ぎ斧を止め、追撃の体勢に入るが、グラウムは着地と同時に切り落とされた槍の柄を握り、断面でリエネの顔を狙う。


「ふっ!」

「くっ!」


 体を捻りながら崩れ落ち、跪いたリエネが顔をあげると──目の前には、短くなった槍の穂先が突き付けられていた。


「…参りました」

「ヤクノサニユ国防軍団長の面目、かろうじて保てた…かの?」


 グラウムが笑みを見せリエネの眼前から穂先を引くと、リエネも頬からボタボタと血を垂らしながら立ち上がる。


「かろうじて、どころか…お見事。完敗です」

「カッカッカ…思ってたよりよほど楽しめたわ」


 力の差を見せつけはしたものの、グラウムはリエネの腕を認め、手を差し出す。


「光栄です、グラウム様」


 リエネも微笑みを浮かべ、差し出されたグラウムの手を力強く握り返しすと、その様を見て、身を強張らせて見守っていたリリニシアは深く安堵のため息をつき、脱力した。


「お…終わりましたのね。ヒヤヒヤしましたわ…」

「お怪我は…リエネさんの頬くらいでしょうか?何事もなく終わって一安心ですね。治療は僕が」


 隣のレピも、見ているだけで噴き出した汗を袖で拭いながら答える。


「お二人とも、訓練用でもない本物の武器を、あれだけ遠慮なく振り回すんですものね…。おっかないったらありゃあしません。リエネさん、お気は済みまして?」

「えぇ。“神槍”の御業(みわざ)、堪能させていただきました」

「大袈裟じゃのう、物言いが」


 リエネの大仰(おおぎょう)な言い回しに、グラウムは少し気まずそうに目を逸らす。

 リリニシアはニヤニヤと口許を歪め、グラウムにサッと詰めよった。


「あら?…あらあらあら?照れてらっしゃいますの?」

「何をおっしゃられる。こんな賛辞、腐るほど聞いてきておりますわ」

「またまた~、嬉しい癖にぃ」

「姫様…」


 言葉とは違い、まんざらでもなさそうなグラウムをリリニシアが茶化す一方、レピは大きく頷きながら、リエネの元に歩み寄る。


「僕も武術は素人ですが、決して言いすぎではないと感じました。…リエネさん、頬の傷を治しましょう」

「む、これか。…いや、いい」


 リエネは手の甲で血を拭い、付着した自らの血を見つめると、首を横に振った。


「かの“神槍”と戦って出来た傷だ、自然治癒に任せるさ。むしろ傷跡として残って欲しいくらいだ」

「ですが、その出血量…結構痛いのではありませんか?」

「そりゃあ、まぁな」


 心配そうなレピに、リエネが笑い飛ばすように答えると、グラウムは多少バツが悪そうに声をかけた。


「すまんのぉ、もうちっと余裕を持って避けるかと踏んどったんじゃが…思うたより引き付けるもんでの」

「構いません。この傷と痛みは、たった一つでも貴方の“掌の上”を抜け出せた証です」

「カッカッカ…まったく、活きのいい娘じゃの」


 頬から血を垂れ流しながらグラウムと共に笑うリエネに、レピは困惑を隠さず、けれどその意思を汲み、手をかざす。


「…分かりました。ではせめて止血だけでも。──氷の魔術(グレクォ)


 レピが魔術を唱えると、裂けた傷跡だけを覆うように、小さな氷の塊がリエネの頬に張り付いた。


「…冷たい」

「当たり前じゃないですか、氷なんですから」

「やっぱりスゴいですわねぇ、レピさん」


 横目で見ていたリリニシアが、改めてレピの技量に舌を巻く。


「ワタクシでしたら、こんなにも繊細に魔術を制御することは出来ません。リエネさんのお顔をまるごと凍らせてしまうかも」

「レピでよかったぁ…」

「ふふ…リリニシア様も日に日に腕を上げています。時間の問題ですよ」


 グラウムは切り落とされた槍の柄で自らの肩を軽く叩きながら話に割って入る。


「陛下から聞いてはおりますが…姫様、本当に魔術を扱えるのですな」

「あら?出発の前にお話しませんでしたかしら?旅の間にレピさんに教わって、今は癒しと火に加えて、氷も使えるようになりましてよ!初級ですけれど!」

「…陛下からは、初級は“修めている”と聞いておりますが」

「あっ」


 祖父の承諾を得るため、“盛って”伝えたことを思い出し、リリニシアは口を閉じ、目を逸らした。


「姫様…」

「う、嘘ではありませんわ!あの時も、初級の癒しと火の魔術は確かに修めておりましたもの!」

「それを持って“初級を修めた”は誇張が過ぎるでしょうに」

「てへっ」


 ペロリと舌を出し、固めをパチンとつぶってみせるリリニシアに、グラウムは大きくため息を吐いた。


「…シェリルとスウォルを案じてくださったのは分かりますが、ご自身のお立場を軽んじてはなりませぬぞ」

「か、軽んじてなんかおりませんわよ!」


 リリニシアの反論を受け流し、グラウムはリエネとレピに向き直る。


「まったく…。既にお分かりかとは思いますが、ご覧の通りのじゃじゃ馬。ご苦労お掛けするかとは思うが何卒、うちの姫をよろしくお頼みいたしますぞ」


 そう言って、深く頭を下げた。


「グラウム様!?おやめください恥ずかしい!」

「いった!姫様、髪を引っ張るんじゃ…姫!コラ!抜けるじゃろうが貴重な毛が!」

「お任せください、グラウム様」


 リリニシアが慌ててグラウムの髪の毛を鷲掴みにし姿勢を正させようとする姿を眺め、リエネは苦笑いを浮かべながら、力強く答える。


「グラウム様、手合わせの代わりという訳ではありませんが、僕からはいくつか質問させていただけますでしょうか?」


 リエネに続いて頷きながら、レピはおずおずと切り出した。


「質問?ワシで分かることなら構わんが」

「先ほど“陛下から聞いた”とおっしゃいましたが、陛下とは懇意なのでしょうか?」

「…レピさん」


 “信用できない”と結論付けた王の情報をレピが収集しようとしていることを察し、リリニシアとリエネは唾を飲んだ。


「…そうじゃのぉ」

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は11月24日20時にXでの先行公開を、25日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

王・ゼオラジムとの間柄をはじめ、グラウムはレピの疑問に答えてゆくうち、話題はシェリルとスウォルの父であり、失踪したクーヤイに移る。

リリニシアから、シェリル・スウォルと共に旅立つ直前のグラウムの様子を聞いたグラウムは──。


次回「立場と情報」

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