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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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“神槍”グラウム・イブキミチ

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

グラウムに“ユミーナが戦ったことがある”と明かし、自らも挑戦を表明したリエネ。

グラウムは応じ、リリニシアとレピが見守る中、二人は対峙する。

同じ頃、父の小屋に辿り着いたシェリルとスウォルは、小屋の中から現れた男、デギンズと再会していた。

 再び道場──。

 リエネは床板が抉る強さで踏み込み、深く上体を下げながらグラウムの懐に潜り込むと、大斧を下から斜め上に向け、思い切り振り上げる。


「ぬぅあ!」

「ほっ」


 グラウムはほんの僅かに身を捻り、リエネの斧を薄皮一枚で躱した。


「あっぶなぁ!?」


 見ているリリニシアは、思わず大きな声で悲鳴をあげる。


「グラウム様、もう少しガッツリ避けてくださりません!?リエネさんももっと加減して振ってくださいまし!」

「リリニシア様、落ち着いて…。お二人の邪魔になってしまいます」

「やかましいのぅ、あのお姫様は」


 グラウムは大きく一歩下がってリエネから距離を取ると、必死になだめるレピを気にも止めずに騒ぐリリニシアを一瞥し、ため息と共に呟いた。


「いささかの恐れもなく、最低限の身のこなしで、掠めるように躱す。──流石です」

「カッカッカ…模擬戦でそんな(モン)を躊躇いなく振るうのも中々出来んと思うがの」

「躱すか受けるか…(しの)いでくれるとの信頼が故です」


 グラウムが笑うと、リエネもニヤリと口元を歪め、答える。


「今日が初対面のワシを、よくもそこまで信じてくれたモンじゃのぉ。もっと人を疑うこと覚えたほうがええぞ、お若いの」

「シェリルとスウォルの師であり、ユミーナ様が賛辞を惜しまぬお相手。人柄は分かりかねますが、腕前を信頼するに充分です」

「高く買ってくれとるのぉ」


 そう言うとグラウムは、ようやく槍を構えた。


「ではリエネ殿。今度はこちらから」


 狙ってか否か、リエネがほんの一瞬(まぶた)を閉じ、再び開くと、既にグラウムの槍の穂先が顔に迫っていた。


「…!」


 咄嗟に斧を盾にし、表面を滑らせてしのぐと、グラウムは槍の勢いを殺すことなく、リエネの頭目掛けて石突(いしづき)を振るう。

 反射で瞬時にしゃがみこみ、()()()()()()()()薄皮一枚で石突を躱したリエネに、グラウムは体を一周させ、穂先でやはり頭部を狙い、薙ぐ。


「っ!!」


 崩れた体勢のまま慌てて仰け反り、再び回避するリエネの眼前に、またも体を回転させたグラウムの、突き刺すような後ろ蹴りが襲いかかる。


「くっ!」


 再び斧を盾にし、今度は受け流すことも出来ず正面から芯を捉えられ、リエネは耐えきれず転がりながら吹っ飛ばされた。

 すぐさま受け身を取るリエネに、グラウムは追撃せずに口を開く。


「よく凌いだのぅ、()()()()()()。若いのに大したモンじゃ」


 石突をポン、ポンと叩きながら自らが口にした賛辞をおうむ返しされ、リエネは一瞬、歯軋りした。


「…皮肉がお上手ですね。()()()()()()()貴方と違い、私は()()()()()()()()()()()()()だけです。結果は同じに見えても、この差はあまりに…。しかも、それさえお膳立てされて…!」

「ほう、気付いたか。若いのにやるのぅ」


 リエネは深く俯き、跪いたまま声を震わせ、床に拳を突き立てる。

 横で見ているリリニシアは困惑を隠さず、ダメで元々、とレピに尋ねた。


「お、お膳立て…?どういうことですの…?分かります?」

「…分かりませんが多分、お二人の口振りから察するに──」


 案の定、レピは首を横に振りながらも、推測として続ける。


「──グラウム様は敢えて、リエネさんがギリギリで躱せるように攻撃した…ということでしょうか」

「なっ…!?で、ではリエネさんの動きや反応は、すべてグラウム様の掌の上…ということですの!?」

「おそらくは…。リエネさんがまるで子供扱い…まさかここまでとは…!」


 レピが生唾を飲み、リリニシアは額に冷や汗を滴しながら見守る中、リエネは──。


「…だが!」


 顔を上げると同時にキッとグラウムを睨み付け、立ち上がる。


「今の攻防で貴方との力量差が分かり…同時に一つ、自信を得ました」

「カッカッカ…折れるどころか自信か。若者はこうでなくてはのぅ」


 グラウムは楽しげな笑みを見せ、“かかってこい”とばかりに槍を構える。

 対してリエネも再び斧を構え、今度は懐に飛び込まず、ジリジリと距離を詰め始めた。


「ふむ、そう来るか」

「…不本意ですが」


 グラウムは動かず、待ち構える。

 先ほどまでとは違う、リエネの足音だけが響く静かな緊張感が、道場を支配した。

 やがてリエネが、グラウムの槍の射程圏に入る。

 突けば届く距離だが、グラウムは未だ動かない。

 なおもリエネは距離を詰め、今度はリエネが、グラウムを斧を射程圏に捉える。


 リリニシアは視線を二人に向けたまま、レピに耳打ちした。


「不本意…?リエネさんはああいうゆっくりした戦い方、お嫌いなんですの?」

「分かりません。確かに、豪快に斧を振るう印象とは違いますが…」


 リエネの狙いは二つ。

 グラウムが先に動くなら、その槍を躱し、瞬時に反撃を叩き込む、いわば“後の先”。

 動かないのなら槍を掴み、力の勝負に持ち込んで抑え込む。


 先の蹴りで吹き飛ばされはしたものの、無理な体勢で受けたが故であり、その脚に重みを感じはしなかった。

 そもそも無理な体勢に追い込んだグラウムの技量は称賛に値するが、筋力ならば自分が勝る。

 それがリエネの得た“自信”だ。


 一方グラウムは、リエネの二つの狙いも、それが正しいことも…そして、何が“不本意”なのかも察している。


 これが命を賭けた実戦の場であれば、わざわざ敵の狙いに付き合いはしない。

 相手が詰めてくるなら自ら離れ、有利な間合いを維持し、仕留めきる。

 この戦いがあくまで手合わせであり、格上のグラウムに胸を借りる稽古の場。

 その前提に甘えることで初めて成り立つ、実戦では通用しない戦い方。

 故に不本意なのだ、と。

 それを察した上で──。


「付き合うてやるわ」


 リエネにだけ聞こえるよう呟くと、彼女の顔に向け、グラウムは槍を突き出した。


 ────────


 少し時を遡り、シェリルとスウォルは、デギンズと共にクーヤイの小屋を改めていた。

 王の言う通り、しっかり兵が小屋を確認していたこと、それが気心の知れたデギンズであったことが、二人の心に落ち着きを取り戻させた。


「俺が見ても、不審な点は見当たらなければ、戻ってきた痕跡も見当たらなくてな…。子供(おまえ)たちが見れば変わるか?」


 デギンズはバツが悪そうに頭を掻きながら、二人に尋ねる。


「…分かんないっすよ。ずっと一緒に暮らしてた訳でもねぇのに」

「…なら何故ここに…いや、そうだな。すまん」


 スウォルが吐き捨てるように答えると、デギンズはより申し訳なさそうに視線を落とすと、スウォルは続けた。


「それでも自分の目で確かめたかった。せめて、()()()()()()()()()()()()()()()()から」

「…そうか。お前がそんな意味深いことを言うようになるなんて。…この旅で成長したんだな」

「…仲間になってくれた人の受け売りですよ、それ」

「あっ!言うなよ姉ちゃん!」


 目を丸くして驚くデギンズに、シェリルはため息をつきながら明かす。


「仲間?リリニシア様が着いて行ったとは聞いているが」

「他に新しく二人、一緒に旅をしてくれてるんです」

「まさか…ハリソノイア人か?」


 ここまで穏やかな表情を浮かべていたデギンズは、シェリルの言葉を聞き、眉をひそめた。


「一人は。もう一人はハリソノイアに来ていたマキューロ人の方です」

「…」

「つまんねぇ差別は止めてくれよ、デギンズさん。今はもう敵じゃねぇんだ、ハリソノイアは」


 デギンズの表情と声色から不穏な気配を察したスウォルも、目を合わせ、真剣な顔で言う。


「その為に俺たちはハリソノイアまで行ってきたんだ」

「…分かってるさ」


 言葉とは裏腹に、苦々しい表情を崩さないデギンズを見て、シェリルは一人静かに、既視感を覚えていた。


 その後、三人とも口数は減らしながらも小屋を捜索し続けたが、案の定、クーヤイの所在に繋がりそうな手がかりは見付からなかった。

 同じくグラウムの元に向かうというデギンズと共に、二人は仲間と合流するため、道場に向けて歩き始めた。


 程なくして、気まずい沈黙を嫌ったデギンズは明るい声を作り、スウォルに声をかけた。


「そういやスウォル、聞いたぞ~?」

「ん?」

「出発する前、まーたグラウム様に生意気なクチ叩いてったらしいな?ジジイだのなんだのって」

「あっ」


 傾きかけた太陽に照らされるのどかな道を歩みながら、出立の日の記憶を思い返し、スウォルは冷や汗を垂らす。


「やめろっつってるよなぁ?昔っから、何度も何度も」

「べ、別に師匠(せんせい)はやめろって言ってねぇし…」

「私はやめなさいって言ったんですけど…」

「嘘つけ!言われてねぇぞ絶対!」


 シェリルも乗っかり、デギンズの狙い通り、張りつめた雰囲気は緩和された。


「スウォル…」

「わ、分かってますよ…!もうやめます!」

「いや…」


 矯正を約束したスウォルに対し、デギンズは静かに首を横に振った。


「お前はそれでいいのかもしれん」

「…え?」


 予想だにしないデギンズの言葉に、二人は揃って絶句する。


「グラウム様も、そういうところが可愛くて仕方ないのかも知れんしな」

「ど、どうしちまったんだよ!?アンタがそんなこと言うなんて…!」

「そうですよ!ずっと怒ってたのに…」


 戸惑う二人にデギンズは、先程までとは違う意味で、重々しく口を開いた。


「お前たちには話しておくが…グラウム様はこのところ、お体がよくなくてな」

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は11月17日20時にXでの先行公開を、18日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

デギンズの口からグラウムの不調を聞かされ、シェリルとスウォルは動揺しつつも詳細を聞き出す。

その頃、お互いを射程圏に捉えたまま睨み合うリエネとグラウムは──。


次回「掌の上」

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