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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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王の告白

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

リリニシアを先頭に玉座の間に入り、王と対面した一同。

王は孫娘と双子の帰還を喜び、見知らぬ二人を鋭い目で見定める。

ハリソノイアでの出来事の報告を聞き、次なる目的地・マキューロへの出立を見送ろうとした王の言葉を、リリニシアが遮り、レピの質問を促した。

「禁じられた、魔法…」


 王は静かに、ゆっくりと、レピの問いを繰り返す。


「はい。私はそれを探し求め旅をしている最中、お三方とお会いしました。もし陛下が何かご存知であれば、拝聴させていただきたく存じます」

「…」


 王は少しの間、目を細めてレピを睨んでから、重々しく口を開いた。


「済まぬな。ワシには分からぬ」

「私が掴んだところ、かの勇者ルベスが作ったモノらしく」

「!」


 ほんの一瞬、大きく目を見開いた。


「故に彼が興したこのヤクノサニユに、何か手懸かりがないかと思いまして」

「な…いや、分からぬ。聞いたこともない」

「左様ですか。承知いたしました。ありがとうございます、陛下」


 レピは深く頭を垂れる。

 なにかを言いかけ、やめた王を睨み付けながら。


「お──!」


 口を開いたリリニシアだったが、レピの後ろ姿を見て、発しかけた言葉を飲み込んだ。

 顔をあげたレピは穏やかな表情に戻っており、一歩下がって元の位置に戻る。


「なにか言ったか?リリニシア」

「あ、えと…お、お祖父様!次はワタクシです!」


 王とレピのやり取りを、鋭い目付きで睨むように見ていたリリニシアが、今度こそと意気込んで前に出た。


「なんだ」

「ハリソノイアとの国境にある廃村のことですわ!」

「!…あの村がどうした?」


 王は僅かに眉根を寄せ、目を見開く。


「ワタクシ、あの村が滅びたのは15年前のことだと教わりましたの。ですがリエネさん曰く、16年前の出来事だそうじゃありませんの!この国の教育どーなってんですの!?」

「…ふむ」

「こう見えてワタクシ、王位継承者なんですのよ!?」

「そう見えない自覚はあるのか…」

「お祖父様までソレ言うんですの!?」

「す、済まぬ」


 スウォルに言われたことを繰り返され憤慨するリリニシアの剣幕に、王も思わず詫びを口にする。


「まったく男って連中はどいつもこいつも!」

「僕そんなこと言ってないんですが」

「だまらっしゃい!」


 レピの抗議を一蹴し、リリニシアは勢いを殺さず、再び矛先を王に向けた。


「お祖父様!16年前なんて、既にお祖父様が王位に就いておられますわよね!?」

「う、うむ…」

「よりにもよって!次期国王であるワタクシに!そんな直近の出来事も正しく伝わっていないんじゃ!他国に!示しが!!付きませんわよ!!!すぐにでも教育を見直してくださいますこと!?」


 徐々に強まっていくリリニシアの語気に、王は頷くことしか出来ずにいる。

 そんな様子を見ながら、思わずリエネは誰にともなく、小さく呟いた。


「…すごいな、リリニシア様。あれほどに国を思って…」


 隣のレピは、耳聡(みみざと)く呟きを拾い、答える。


「まぁ…あれは個人的な感情も含まれてると思いますが」

「どういうことだ?」

「詳しいことは後でお話しします」

「…分かった」


 二人が小声で会話を終えるのと同時に、王も声をあげた。


「わ、分かった!すぐに手配しよう、それで許せ」

「約束してくださいまし!」

「あぁ約束する!」

「…結構。ワタクシからは以上ですわ」


 リリニシアからの攻撃が終わったと知り、王は大きく胸を撫で下ろした。


「おっかないなぁ、うちの孫娘。…ふふ、思い出すわ…。他には何かあるか?」


 事前に打ち合わせていた話が済み、リリニシアは念のため、仲間に目線をやると、全員が首を横に振った。


「…なさそうですわ」

「そうか、分かった」

「では改めて──行って参りますわ、お祖父様」

「待て」


 リリニシアが振り返り、新たな旅へと歩みを進めようとしたところ、今度は王から制止された。


「なんですの!?さっき一回見送る流れになったじゃありませんの!」

「マキューロには、すぐに向かうのか?」


 王の問い掛けに、スウォルが代表して答えた。


「いえ、最初ん時と一緒で、師匠(せんせい)と父さんの所に顔を見せようかと思ってます」

「…ならば、伝えておかねばならぬ話を思い出した」

「え?」

「シェリル、スウォルに伝えねばならぬ、大事な話がある」

「私たちに…?」

「なんです、大事な話って?」


 突如名を出され驚く双子に、王はどこか言いづらそうに間を空け、答えた。


「クーヤイのことだ」

「父さん?」


 二人が声を揃えると、今度は覚悟を決めたように、王はつらつらと続けた。


「正確な時期は分からぬが、お主らが出立して間もなく…クーヤイが姿を消した」

「え!?」

「クーヤイ様が!?」


 双子が声を揃え、リリニシアも驚きの声をあげる。


「うむ。ある時から姿を見なくなったと民から連絡があり、以降あやつの住まう小屋の様子を、定期的に見に行かせているのだが…」

「そ、そんな…」

「父さんが…」

「悪いとは思いつつ、中の様子も改めさせている。…だが、戻っている形跡は見当たらぬ」

「…」


 言葉を失い、呆然とする二人に、王は更に続ける。


「…あるいは、お前たちを追ってハリソノイアに入ったのやも知れぬ」

「え!?」

「あやつ、一度ワシのところに直談判に来おった。“お前たちに下したハリソノイア行きの命令を取り消せ”とな。発ってすぐのことだ」

「あの父さんが…」


 スウォルはか細い声でひとりごち、シェリルは顔を青くして口をパクパクと開閉させる。

 驚きはすれど、二人より関係が浅い分だけ冷静に、リリニシアは出立前の様子を思い返した。


「確かにクーヤイ様は、二人がハリソノイアに向かうことに強い抵抗があったようでしたが…まさか、お祖父様に直接…」

「うむ。クーヤイは長い間ワシに仕えてくれたが、真っ向から異を唱えたことなど、数えるほどしかない。そのあやつが…。それだけ、お前たちへの想いが強いのであろうな…」

「父さん…」


 シェリルとスウォルは、王の言葉を噛み締める。


「命を下したワシが言うのも筋違いかも知れぬが、気持ちは分かるのだ。…あの日、ワシが強く止めていれば…リリニシアは両親を失わずに済んだかも知れぬ、と」

「お祖父様…」

「だが…その剣と盾とを手にしたお主らには、替えが効かぬ。任を解く訳には行かぬのだ…」


 王は玉座のひじ掛けの上で、強く拳を握る。


「…探しに行かないと!」


 シェリルは涙を溢しながら、柄にもなく大きな声で吠えた。


「あぁ、行こう姉ちゃん!」


 スウォルも同調する。

 頷き合う双子を──


「ならぬ!」


 ──王が一喝した。


「どうしてですか!?父さんが──」

「お主らには使命があるのだ」

「ですが!」

「既にハリソノイアにも捜索を向かわせておる。…気持ちは分かるが、クーヤイのことはこちらを信じて任せ、成らねばならぬ任に集中してくれ」

「…父さん…」

「お二人とも…」


 悲痛な声を絞り出す二人の肩に、リリニシアが手を置く。


「すまぬ…お前たちのような子供に、このような…。ワシの無力を許せ…」

「陛下…。父さんのこと、お願いします…!」


 スウォルが深く頭を下げ、シェリルもそれに続く。


「あぁ、必ず見つけ出す。お前たちは任務に全力を注いでくれ」

「…はい」

「では行くがいい。人類(われら)の未来と…リリニシアを頼んだぞ」


 二人が力なく、しかし確かに頷き、深く頭を垂れると、残る三人も続す。

 まもなく揃って顔をあげると、王に背を向け、玉座の間を後にした。


「父さん…」


 城を出て、照り付ける太陽に仲間たちが顔をしかめる中、シェリルは父を呼び続けた。

 リリニシアは手で顔に影を作りながら、小さくシェリルを呼ぶ。


「シェリル…」

「…リリニシア、頼みたいことがあんだけど」


 スウォルは決意を秘めた目で、リリニシアを見つめた。


「はい、なんですの?」

「父さんの小屋の様子、見に行きてぇんだ。二人を師匠に紹介するって話だったけどさ、レピさんとリエネさん連れて、先行っといてくんねぇか?」

「分かりましたわ。後から合流するんですのよね?」

「…もちろん」

「スウォル」


 返事をやや言い淀んだスウォルの名を、リリニシアは凛とした声で呼ぶ。


「約束してください。ワタクシたちを置いて、クーヤイ様を探しに行ったりしない、と」

「…」

「出来ないのであればワタクシも着いていきますわ」

「…分かってる、約束するよ」

「でしたら結構。シェリルもスウォルと行くんですのよね?」

「…うん」


 弱々しく頷いたシェリルと伏し目がちなスウォルの間で視線を往復させ、リリニシアは優しい声で言い聞かせる。


「お二人がワタクシたちをクーヤイ様を探しに行けば、今あなたたちが抱いている不安や心配を、ワタクシたちもあなたたちに対して抱くになりますわ。…お願いですから、破らないでください。…シェリル」

「…うん、分かった。様子だけ見て、絶対にリリニシアたちと合流する」

「スウォル」

「あぁ、分かってる。裏切るような真似はしねぇ」


 二人の答えを聞いたリリニシアは、笑顔で頷くと、レピとリエネに目をやった。


「お二人とも、そういうことでよろしくて?」

「えぇ、私は構いません」

「僕もです。行ってらっしゃい、お二人とも」

「リエネさん、レピさん…」

「ありがとう、二人とも。行こう姉ちゃん」

「うん。みんな、また後で」


 シェリルとスウォルは頷き合い、駆け出した。

 その背中を見送りながら、リリニシアはレピとリエネに詫びた。


「予定が狂ってしまって申し訳ありませんけれど、あの二人にとって唯一の肉親ですの。ご勘弁くださいませ」

「えぇ。私にも肉親がいれば、同じことをしてたかも知れません」


 親を知らぬリエネは、やや悲しげに目を伏せた。

 レピは頷き、続ける。


「ましてあの二人は、まだ16の子供です。無理もないでしょう。──それに、今お二人と行動を別つのは、僕にとっては好都合です」

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は10月27日20時にXでの先行公開を、28日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

シェリル・スウォルと行動を別つことを“好都合”と表現したレピ。詳細を問われると、“今の二人には話したくないことがある”と答え、辺りを見回した後、移動を提案した。

リリニシアは二人を、人の来ない秘密の場所へと案内する。


次回「三人の密談」

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