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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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33/49

勇者一行と少女カロニア

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。

以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

レピの告げた、日記から読み解けた情報──“日記の主は、おそらく魔物に村が襲われる直前に出産していた”という報せに一行が気を落とす中、リエネは魔物が村を襲った理由を思案する。

廃村を出てヤクノサニユ領に入って最初に訪れた集落では、ハリソノイアとの和睦自体は歓迎されたモノの、つい先日まで敵国だったリエネには厳しい目が向けられた。

歩みを進め城下町に辿り着いた一行の前に、“カロニア”と名乗る一人の少女が現れる。

「えと…?」


 突然ぶつかって来た、シェリルやスウォルより幼く、頭一つ分小さな少女に手を握ったまま名を問われ、レピが答えに窮していると、彼女はそれが単なる困惑ではなく、自身の態度に由来すると受け取った。


「あ、ま、まず謝らなきゃですよね!ごめんなさい!あたし前見てなくて…」

「あ、いえ、それは構いませんが。…???」


 レピにはそんなつもりはなく、むしろぶつかった直後の発言との差が更なる困惑を産み出した。


「よかったら、お、お名前を教えていただけませんか!?」

「はぁ…。レピ・エルトナと言います」

「レピさん…!お名前も素敵です!」

「あ、ありがとうございます…?」


 依然として少女は手を離さず、目をキラキラと輝かせ、レピの顔から目を逸らさず見詰めている。

 対するレピは耐えきれず、目線で一行に助けを求めた。


「カロニアってのか。俺はスウォル・ドラベレアルって──」

「アンタに聞いてない!!」

「ぶふっ」


 スウォルが応じ、カロニアの気を逸らす為に名乗ろうとするも聞く耳持たず切り捨てられ、見ていた女性陣は吹き出した。


「…」


 スウォルが吹き出した三人に無言でグリンと顔を向け真顔で凝視すると、三人はそれぞれそっぽを向き、咳払いで誤魔化した。

 リエネはカロニアに歩み寄る。


「こほん…君、済まないが私たちには用事がある。手を離してやってくれないか」


 カロニアは離すどころか、むしろ握る力を強め、リエネを睨み付ける。


「カノジョ!?」

「なっ!?」

「ぶふっ」


 今度はリエネに代わり、スウォルも吹き出した。


「違う!ただの仲間だ!」

「じゃあカンケーないでしょ!」

「あるだろ仲間なんだから!」

「あの、なんでもいいのでそろそろ手を…人目もありますから…」


 大勢の目を集め、ずっと手を握りしめられたままオロオロすることしか出来ないレピを尻目に、カロニアとリエネは口論し始める。

 その様子を見ながら、シェリルは微笑ましそうに、リリニシアに呟いた。


「初めて会った時と比べて随分柔らかくなったよね、リエネさん」

「そうですわね。国の情勢もあってピリピリしてらしたんでしょう。──こうして見ているのも面白いですが、そろそろ助けて差し上げますか」


 リリニシアはその立場を慮って頷くと、やはりカロニアの元に歩み寄った。


「失礼しますわ、カロニアさん」

「なに!?アンタがカノジョ!?」

「違います。ワタクシはリリニシア・ルベス・ヤクノサニユと申します」

「ヤクノサニユ?…それ国の名前でしょ?」


 リエネと違い冷静に受け流された上、想定外の単語が出て、カロニアは一瞬、思考停止に陥った。


「と、王族の名前ですわ」

「…ん?」

「ワタクシ、国王ゼオラジムの孫ですの」

「孫ぉ!?王様の!?」


 カロニアは衝撃のあまり固まった。手を握ったまま。


「そうです。今、他国を巡る旅をしておりまして、レピさんもリエネさんも、それからあちらの二人も、ワタクシの護衛を勤めてくださっていますの」

「あ、そ、そう…なんです、か」

「これからお祖父様の元へ、旅での出来事を報告しに行くところですの。手をお離しくださいますか?」

「…う~」


 王の孫娘の言うことを無視する訳にもいかず、再びレピの顔を見つめながら、カロニアは唸り声をあげる。


「報告が済んだ後ならお貸ししますわよ、レピさん」

「え!?」

「ほんとに!?」

「もちろんです」

「リリニシア様!?」


 無断で貸し出しの許可を出されたレピの驚きも意に介さず、リリニシアとカロニアは約束を結んでしまったのと同時に、一行を囲う人だかりの一部から、二人の男の大声が聞こえてきた。


「声がした!この中だ!」

「どけ!どいてくれ!!」

「やっば…」


 その声を聞いたカロニアは、あれだけ渋っていたレピの手をパッと離し、名残惜しそうに言う。


「レピさん、またお会いしましょうね!絶対ですよ!」

「は、はぁ」

「それじゃあ!…ちょっと通るよ!」


 かと思えば、小さな体格を活かし、先程の声とは逆の民衆に潜り込み、あっという間に姿を消した。


「彼女は…」

「…?」


 ずっと握られていた手を持ち上げ顔に近付け、手を下ろし服の裾を強く握り締めながら顔をしかめるレピに、リエネは小さな違和感を抱いた。


「…なんだったんだ?アイツ」


 一方、彼女の背中が最後に見えた一点を見つめ、スウォルはボソリと漏らすと、シェリルがそれに答える。


「さぁ…。それより今はあっちじゃない? 」


 シェリルは男二人の声が聞こえてきた方を指差してまもなく、声の主であろう屈強な男が二人、人混みを抜けて一行の前に姿を現した。

 男たちは辺りを見回し、現在地が人だかりの中心であることを確認すると、そこにいた一行に声を掛けてきた。


「失礼、小さな女の子を見ませんでしたか?この辺りから声が聞こえてきたのですが」


 カロニアの反応からも、彼らの言う小さな女の子が彼女を指すことは明白。

 しかし屈強な男が二人で幼い少女を追っている状況で、事実を事実のまま伝えるべきか。

 一行は瞬時に目配せし、対応をリリニシアに委ねた。


「あなた方は?」

「我々は…娘を探しておりまして。はぐれてしまったんです」

「あら、それは災難ですわね。娘さんのお名前は?」

「…名前を言えば分かるのですか?」


 “黙って質問に答えろ”という思いが抑えきれず、男は僅かに眉間に皺を作った。


「ここだけでもそれなりの人数、“小さな女の子”がいると思いますわよ?」


 リリニシアが両手を広げ、再度今の状況──大勢の人間に囲まれていることを認識させると、男は渋々、探している少女の名前を口にした。


「…カロニアです」

「…そうですの。お力になれず申し訳ありませんが、それらしき方は見ておりませんわ」


 僅かな逡巡(しゅんじゅん)の末、彼らを欺くことを選んだ。


「そうですか。確かにここから声が聞こえたのですが…」

「これだけの人がおりますから…たまたま声の似た方がいたか、あるいはご本人が紛れ込んでいるやも知れません。──どなたか心当たりのある方はいらっしゃいませんこと?」


 言うまでもなく彼らが探しているのは、先程までレピの手を握って注目を一身に集めていた少女、カロニアで間違いない。

 にも関わらず、自分がすっとぼけているのだから──!

 リリニシアは祈る気持ちで賭けに出た。


 民衆は見事、リリニシアの願いに答えた。

 “いやぁ…”、“見てないなぁ”と口々に呟き、リリニシアに話を合わせた。


「…いなさそうですわね」

「…分かりました、別の場所を探してみます」

「もし見当たらないようでしたら、城まで足を運ばれるとよろしいですわ」

「城、ですか?」

「えぇ。このワタクシ──リリニシア・ルベス・ヤクノサニユの名を出せば、無下(むげ)にされることはないはずですから」

「!!」


 リリニシアが名乗った瞬間、男たちは顔色を変えた。


「娘さんとはぐれてしまうのは不安でしょう。ワタクシも姫として、出来るお力添えは致しますわ」

「…ご厚意、感謝いたします。もし見付からなければ、お力をお借りさせていただきます」

「えぇ、喜んで。ごきげんよう」


 男たちは頭を下げると、わざわざ掻き分けるまでなく民衆が道を空ける中逃げるように、元いた方向とは逆に走り出した。


「…行きましたわね。怪しまれてしまうのでお静かに。皆様、ご協力感謝いたしますわ。──さて、ワタクシたちも参りましょうか」


 リリニシアは騒がないよう釘を刺した上で民衆にペコリと一礼すると、一行に出発の号令を掛けた。

 それを合図に民衆も散り、ヤクノサニユの日常へと帰っていった。


「なんだったんだろうな、カロニアにしろオッサンたちにしろ」


 城への道中、両手を頭の上で組み、誰にともなく尋ねるスウォルに、リリニシアが答えた。


「名乗るまでワタクシのことが分からない辺り、ヤクノサニユの方ではなさそうですわね」

「カロニアちゃんなんか聞いてもピンと来てなさそうだったしね」


 反応を振り返り、シェリルが頷く。

 三人の疑問に、レピが忌々しげに吐き捨てた。


「ティサン人ですよ」

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は10月6日20時にXでの先行公開を、7日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

カロニアと彼女を追っていた男たちが“ティサン人である”と断定できる理由を尋ねられたレピは、三人から感じ取ったある感覚を根拠と答える。

リリニシアは男たちの言った“娘を探している”が嘘であると主張し、推理を披露し始めた。


次回「お姫様の独壇場」

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