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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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28/49

勇者一行と廃村の魔物

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

自分が教わった知識と現実の乖離にリリニシアが首を捻る中、とうとう一行による廃村の調査が始まった。

やがてシェリルは、ある家で見付けた古びた本をレピの元に持っていく。

風化により内容はほとんど読み取れないが、どうやら村民の日記のようだ。

分析している最中、別の場所を調べていたスウォルの声と同時に、シェリルの剣が魔物への反応を示した。

 スウォルの叫びを聞き、リリニシアとリエネも調査を切り上げ、シェリルとレピの元に合流した。


「またあの小さいのじゃないでしょうね…!」


 レピは焦りながらも日記を丁寧に閉じ、懐に仕舞い込んだ。


「どんなヤツ!?」


 自身より先に魔物を感知していたであろうスウォルに、シェリルが聞く。


コイツが教えてくれただけだ、俺もまだ見てねぇ!」


 最後に合流したスウォルが振り返り、剣を抜きながら答えた。

 スウォルを戦闘に、シェリルとリエネが続き、魔術師二人を守る布陣を整え、魔物の登場を待つ。

 スウォルがいた先の茂みから、文字通り飛び込んで来たのは──。


「きしゃ…!!」

「やっぱりぃ!僕ダメなんですよアレェ…!」


 初めて会った時にレピを怯えさせていた、小さなかわいい魔物だった。

 だが様子がおかしい。

 飛び込んで来た、というよりは──。


「…ブッ飛ばされて来た、って感じだよな」


 状況が掴めず、スウォルが確認するように呟いた。

 魔物は自分の意思による行動とは思えぬ不自然な格好で、弾き飛ばされるように姿を現し、そのまま何度か地面を跳ね、転がった。

 一行が様子を見ている間にも再生しているようではあるが、確かに血液を撒き散らしながら、である。


「戦っているのか、何かと」


 スウォルの呟きに、リエネが答える。

 同時に飛ばされてきた先の茂みが、再びガサガサと音を立てた。


「まだ何か来る!!」

「っ!」


 呆気にとられるスウォルを、シェリルが一喝した。

 再び茂みに注意を向けた一行の前に、今度は三体が、今度こそ()()()()飛び出してきた。


 四足で這う、狼のような姿だが、ヤクノサニユ領内でシェリル、スウォル、リリニシアを襲った物より大型。

 体高はシェリルとスウォルより頭一つ小さいくらいだろうか。

 すべて同種のようだ。


「…どういう状況ですのコレ。魔物同士って戦うんですの!?」


 リリニシアは困惑しながら誰にともなく聞くが、誰も答えない。

 いや、答えられない。


「そんなの、聞いたことが…」


 予想外の事態に、レピも一周し平静を取り戻すが、やはり答えは持っていない。

 呆然とする一行を他所に、小さい魔物は立ち上がった。


「き…しゃー!!」


 最初の時と同様に、小さな手足を精一杯に広げ、立つ。

 そんな小さな魔物に、四足の魔物三匹が襲い掛かった。


 腕に噛みつく。噛み千切る。

 血が吹き出し、苦痛に叫ぶ。

 再び立ち上がり、再生しかけた手足を広げる。


「き…しゃ…」


 爪が胴を裂き、抉る。

 現れた時と同様、力負けし吹き飛ばされる。

 再び立ち上がり、血を撒き散らしながら立ち塞がる。


「…ぎ…」


 抵抗らしい抵抗はしていない。

 しないのか、する能力がないのか、ただ必死に立ち上がっていた。

 四足の魔物たちは一行に気付かないのか興味がないのか、小さな魔物をいたぶり続ける。


「…どうすんだよコレ。ほっとくのか…?」


 目の前で繰り広げられる光景を受け止めきれず、スウォルが漏らした。


 言ってしまえば魔物同士の潰し合い。

 人間にとっては好都合でさえある。

 魔物相手でさえ殺したくないシェリルにとっては、自分が手を下さずに済むのだから尚更。

 だが──シェリルには、この光景を是とすることは出来なかった。


「やめろ!!」


 通じるはずもない制止の言葉を思わず叫びながら、シェリルは走り出し、剣を抜いた。


「姉ちゃん!」


 スウォルも続く。

 残る三人は動かず、その気になれば離れた位置から攻撃できるリリニシアとレピを、リエネが護衛する体勢を整えた。


 シェリルの叫びを聞き、四足の魔物たちは初めて一行に意識を向けた。


「たぁー!!」


 一体を目掛け走る勢いのまま振るわれた剣を、ヒラリと身を翻して躱すと、低い唸り声を上げて敵意を示す。


  一体に意識が向いているシェリルの横から、別の一体が飛び掛かった。


「っらぁ!」


 更にその横から、スウォルが剣を振り下ろす。

 空中では身動きが利かず、剣を受けた魔物は進路を変え、地面に転げ落ちた。


「落ち着け姉ちゃん、相手は一体じゃねえんだ」

「…言われなくても分かってる!」


 シェリルが声を荒げる中、スウォルの剣を受けた魔物が、傷を再生させながら起き上がる。


「…?」


 スウォルはその姿に、微妙な違和感を覚えた。

 わずかに首を捻るスウォルのことなど気にも掛けず、残る一体も上体を下げ、飛び掛かる体勢を整えている。

 二人は小さな魔物を庇うように、三体すべてを視界に納め、背中合わせに構えた。


火の魔術(オレム)!!」


 その内の一体が、突如火に包まれた。

 情けない声をあげながら、地面を転げ回る。


「援護しますわ!」

「リリニシア!」


 リエネの後ろから、リリニシアが勇ましい声をあげる。


「こちらは任せておけ」


 リエネは腰を落とし、どこから何が襲ってきても迎撃出来るよう、準備を済ませている。

 レピは小さな魔物にチラチラと視線を向け、この期に及んでも状況に集中出来ていないようだ。


「ひぃい…」

「…あそこまで苦手かぁ」


 その滑稽な姿は、頭に血の登ったシェリルを冷静にさせた。


「…ふぅ。ごめん、落ち着いた」

「もう大丈夫だな?」

「うん、平気!」


 二人がリリニシアたちに視線を向けている間に火を消し止めた一体が突進してくることに気付き、スウォルは盾を構えた。


「来い!」


 北東部での戦いで巨大な魔物を拳を受けきった経験から、例え全体重を乗せた突進であろうと防ぐ自信があった。

 だが、スウォルの盾が突進を防ぐことはなかった。

 否、()()()()()()()()()

 盾に触れる直前、バチッと音を立て、魔物が弾き飛ばされたからだ。


「…あれ?」


 自信があったとはいえそれなりの衝撃を覚悟していたスウォルは、想定より遥かに軽い衝撃に、拍子抜けした間抜けな声を上げた。

 一方、小さな魔物とスウォルたちの間を視線で往復していたレピが、たまたま弾かれる瞬間を目にしていた。


「…え!?」

「レピさん?」

「弾き飛ばした…?」

「え、知ってますわよね?」


 共にリエネの背に守られるリリニシアは、レピが驚いていることに驚いた。

 “勇者の剣と盾に触れるのは二人だけ”。

 当然彼も知っているはずだからだ。


()()()()()()()()じゃないんですか!?」

「え…」

「あの小さな魔物も、北東部での戦いでも──()()()()()()()じゃないですか!!」

「…どういうことだ」


 黙って警戒に集中していたリエネも、思わず口を挟む。


「これまでの魔物との戦いでは盾で防いではいましたが、触れること自体は出来ていたんです!だから僕は、魔物に対してはその効果が及ばないものだとばかり…!」

「い、言われてみれば最初に襲ってきた魔物も、盾には触っていましたが…」


 旅立ち当日の戦いを思い出し、リリニシアは困惑を深める。


「魔物の中に触れるヤツと触れないヤツがいる、ということか?」

「…それだけじゃない」

「なに?」


 レピが呟き、掘り起こした記憶は──。


「まさか…いや、だが──」

「おい何を──」

「…試す価値はある!リエネさん、シェリルさんと交代してください!」

「なんだいきなり!?」

「魔術増幅の条件、分かったかもしれません!」


 ──初めて魔術増幅を確認した、関所での戦いの様子だった。


「…分かった、こっちに来させればいいんだな?」

「お願いします!」


 疑問に対する回答はなかったが、それでもレピが頷くのを確認するなり、リエネは駆け出した。

 二人の剣も何度か傷を与えているが、相手が三体と言うこともあり、スウォルの盾を掻い潜った攻撃に、二人も多少の手傷を負いはじめている。


「ど、どういうことですの?何が分かったんです?」

「リリニシア様には一番大切な役割をお願いします」

「な、なんです?」

「小さい方の魔物が見えない様に間に立っていてください!」

「…」


 リリニシアが言葉を失っている間に、リエネと交代したシェリルが走り寄ってきた。


「増幅の条件、分かった…って言われて!」

「断定は出来ませんが、おそらく!説明は後です、試しましょう!」

「はい!…あれ、でも小さな(あの)魔物がいると魔術使えないんじゃ──」


 シェリルの脳裏に、この廃村での出会いが思い起こされる。


「思い出させないでください見ないようにしてんですから!!」

「あ、ごめんなさい」

「ワタクシが視界を遮る壁ですの…」

「そっかぁ…」


 ユミーナから“禁じられた魔法の情報がある”と聞かされた時と並ぶ声量で怒られ、可笑しいやら情けないやら、複雑な感情で頷いた。


「剣を前に!」

「あ、はい」


 切羽詰まったレピの声に、そんな場合じゃないことを思い出し、言われた通りに剣を差し出した。


「ふぅー…。集中…!纏わせる火の魔術(ロワツメサ・オレム)

「その体も治してさしあげますわ。癒しの魔術(チュリヨ)!」


 瞬く間に傷が癒え、それよりやや時間は掛かったが、シェリルの剣が炎を纏った。


「ありがとう、リリニシア。今回は雷じゃないんですね」

「先ほどのリリニシア様の魔術が効いていたようですし、変化が視覚的に分かりやすいかと思いまして。あとここに火ありますし」

「ちょっと横着しましたわね…」

「ともかく!このまま関所の時の様に、横で叩いてみてください」

「分かりました!」


 炎に包まれた剣を握り走り出したシェリルは、再びリエネと交代し、四足の魔物との戦闘を開始した。

 人間を襲っていた訳でもなかった為、目標を討伐ではなく撃退に定め、横の面で振るわれた剣が触れる度に、剣を覆う炎は強まっていった。


「増幅…!やっぱりそうか!」


 レピは歓喜に、強く拳を握った。

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は9月1日20時にXでの先行公開を、2日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

レピと共に、ようやく魔術増幅を再現することが出来たシェリルは、四足の魔物を撃退すべく炎を纏う剣を振るうが、リリニシアの魔術を受けてなお、魔物たちは火を恐れない。

状況を変えたのは、スウォルが苛立ちを乗せて放った一太刀の斬撃だった。


次回「スウォルの配慮とシェリルの決意」

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