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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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26/49

魔術師と国境の廃村

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

実験を終え拠点に戻った三人を迎えたリエネに成果を問われ、失敗を告げるレピ。

スウォルが手合わせに敗れたことを悔しそうに報告する一方、勝者のシェリルは浮かない表情を浮かべ、“疲れたから眠る”と逃げるようにリリニシアの眠る荷車に乗り込んだ。

その後も帰路を進め関所に戻ってきた一行。

最初に魔術増幅が発生した場所で再びシェリルとスウォルが手合わせを行うが、またも魔術増幅は発生しなかった。

 単純な時間経過、盾が近くにあること、といった可能性に続き、場所・環境の問題説も否定され、レピは剣を見つめながら唸る。


「お二人は休憩してください。他に考えられる可能性は…」

「なにか思いつくか?」


 リリニシアと共に離れていたリエネが、歩み寄りながら声を掛けた。


「そうですね…。やはり、実戦という環境、それに対するシェリルさんの意識…でしょうか」

「訓練では足りんということか」

「ですが殺すつもりがなかったのは前の“実戦”でも同じでしたわよ?」


 依然として複雑そうな表情で、リリニシアが異を述べる。


「となると、むしろ相手側の問題という線で二つ」

「相手の?どういうことだ」

「前回、ここの方々はシェリルさんを殺すつもりでいたと思います。つまり、所有者への敵意や殺意に対し、剣が反応した…という可能性が一つ」

「スウォルの方に殺す気がないから、ということですのね。もう一つは?」


 首を傾げるリリニシアに、レピは笑い、冗談めかして答えた。


「相手がハリソノイア人であることです」

「えぇ…?勇者の剣って差別するんですの…?」

「いえ、流石に僕もそんなことないだろうとは思ってますが。逆に発現()()()条件として、“ヤクノサニユ人相手”ですとか、さらに限定して“勇者の盾を持っている相手”という可能性は考えられるかもしれません」


 呼吸を整えたシェリルが、剣先を地につけ、体重を預けながら振り返った。


「言われてみれば、スウォル相手にしか試してないですもんね」

「んじゃあリエネさんに相手して貰うとか?」


 スウォルの提案に対し、リエネは“任せろ”とばかりに一歩前に出るが、レピが制した。


「であれば、今でなくとも構いません。また訓練なさるでしょう?あまり長居するのも気が引けますし」

「あ…あのガキども、あんなに…」


 チラリとニギム達に視線を投げると、一様に唖然と口を開け、呆然としていた。


「もういいのか?」


 出鼻をくじかれたリエネは、不満げに問う。


「はい。シェリルさんとスウォルくんの体力が戻ったら出発しましょう」

「俺はいつでも」

「ふぅ…私も大丈夫です」

「では参りましょうか。確か今から出れば、夜にはあの廃村に着けるぐらいの距離でしたわよね?また一晩明かさせていただきましょう」


 息を整えたシェリルと頷きあい、リリニシアがレピに尋ねた。


「えぇ、数時間ほどで国境に。…ふふ」


 応じたレピは笑みを漏らす。


「な、何か変なこと言いましたかしら!?」

「いえ、あそこでお会いした時と比べて、ずいぶん逞しくなられたな、と思いまして」

「あー分かる。“と~お~い~で~す~わ~!”とか減ったもんな」

「いくら文句を言っても歩かなければ近づかないことに気付きましたもの」


 スウォルもレピに同調すると、リリニシアは少し恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。


「もう結構経つもん、リリニシアでも慣れるよね」

「最初はどうなるかと思ったけど、成長したもんだよな」

「う、うるさいですわよバカ双子!」

「スウォルとまとめてバカ呼ばわりは嫌なんだけど!?」

「おう姉ちゃん、どういう意味だ」


 三人が騒ぎ立てレピが楽しそうに見守る一方、リエネはニギムに歩み寄り、言葉を交わしていた。


「我々はもう出る。騒がせて済まなかったな」

「いえ…」

「正式にヤクノサニユとの同盟が成れば、おそらくこの関所に割かれる人員も減るだろう」

「同盟、ですか」


 やはり防衛線から遠く離れたこの関所では、一行の活躍は伝え聞いても、悪印象は拭えないようだった。

 ニギムは表情を曇らせる。


「不服だろうが、それだけ前線に回る人数が増える…と考えれば、多少は心持ちも変わるか?」

「…」

「そちらでハリソノイアの誇りを示せ」

「…はっ」


 頷きはしたものの、やはりニギムは納得が行かない表情を変えない。


「それでも不満なら、“大王を討ってお前が思うようにすればいい”さ。一度きりなんて決まりはないからな」

「…」


 歴然たる力の差を認識しているニギムは、黙って目を逸らした。


「では、もう行く。国のこと、任せるぞ」

「はっ」


 ニギムが頷いたのを確認し踵を返したリエネは、背後で言い争っていた三人を、側でじっと眺めていたレピに尋ねた。


「騒がしいとは思っていたが、何をしてるんだ?」

「仲のいい幼馴染み三人組がじゃれあっている、でしょうか?」

「…待つのかコレ?終わるまで」


 リエネは呆れて腕を組み、ため息をつく。


「僕としては見ているのも面白いのですが…そろそろ止めましょうか。廃村に滞在する時間も減ってしまいそうですし」

「む、何か用でもあるのか?」

「えぇ、個人的に少し。──お三方、そのくらいにして、そろそろ移動しましょう」


 レピがパン、と手を叩くと、三人はしぶしぶと言った態度を隠さないが、ひとまずは騒ぐのを止め、目でお互いを威嚇しあう静かな戦いに切り替えた。


「…いいのか?コレで」

「たまにはいいんじゃないですか?本気で憎みあっている訳じゃありませんし」

「そんかものか」


 リエネの耳打ちに、レピはやはり笑顔で答えた。


 そうして関所を発って少し歩いた頃、リエネは改めてレピに尋ねた。


「それで、個人的な用というのはなんなんだ?」

「お、なんの話?」


 しばらくは睨み合い、威嚇合戦を続けていたものの、飽きたスウォルが一抜けし、話に混ざる。


「レピがこの先の廃村に用があるらしくてな」

「あー、そういや最初に会ったのも彼処(あそこ)だったよな」

「…そうなのか?」


 スウォルの言葉に、リエネが首を捻った。


「お前、ヤクノサニユを経由(とお)ってハリソノイアに?」

「いえ、マキューロから直接、国境を越えました」

「ならば廃村を通る必要はないだろう?」

「少し調べたいことがありまして」

「“禁じられた魔法”のことですの?」


 威嚇合戦からスウォルが抜けて毒気を抜かれたか、リリニシアが食いついた。


「いえ、それとは別で、あの村が滅んでしまった理由が少々引っ掛かってまして」

「確か、“十五年前ぐらい前に魔物に襲われた”んでしたっけ?」


 戦う相手が失ったシェリルも話に合流する。


「正確には十六年前だ」

「え、あれ?そうですの?おかしいですわね、記憶違いかしら…おほほ…」


 リエネの訂正を受け、情報源のリリニシアは間違いを笑って誤魔化した。


「十六年前といえば、北から魔物が攻めてくるようになった頃です。そんな時に、最北端から遠く離れたヤクノサニユとの国境に魔物が現れた。…リリニシア様」

「は、はい」

「十五、六年前に国境付近、ヤクノサニユ側で魔物による大きな被害はありましたか?」

「いえ、聞いたことありませんわ」

「…こちら側もだ。何故…!?」


 レピの言葉に、リエネが目付きを変えた。


「リエネさん、十六年前に魔物が現れはじめてから、防衛戦が突破され踏み込まれたことはありますか?」

「ないはずだ」

「僕の認識も同じです。小型だったり、空を飛ぶ魔物が潜り抜けることはあれど、破られたことはない。故に現在に至るまで、そのハリソノイア北部以外における魔物の脅威は、比較的小さく済んでいます。にもかかわらず──」


 レピは一度言葉を区切り、息継ぎをして続けた。


「あの村は魔物に滅ぼされてしまった。そして近隣には被害の記録はない。これでは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようではありませんか」

「明らかに不自然、だな…。何故私は疑問にも思わなかった!?」


 リエネは額に汗を滲ませ、シェリル、スウォル、リリニシアは息を飲む。


「それが気になって、調べていたんです」

「な、なにか分かったか?」

「お恥ずかしながら、到着してすぐに小さな魔物が現れまして…それどころではなくなってしまいました」

「あー…」


 “小さな魔物”と、それに怯えるレピの姿を見ている三人は声を揃えた。


「というか正直、現地を調べたところで十六年前の出来事の手掛かりが出てくる可能性の方が低そうなんですが…それならせめて、“調べた結果分からなかった”という成果を得たい、と思いまして」

「なんでちゃんと調べられてないのに一緒に来たいって言い出したんすか?」


 スウォルが口にした疑問に、シェリルとリリニシアも頷きながらレピを見つめた。


「あの廃村を調べる機会は今後も作れますが、皆さんに同行させてもらえる機会はあの時だけだろう、と考えたからですよ」

「そっか~」

「こんなに早くその機会が出来るとは思っていませんでしたが、そういう意味でもヤクノサニユに伺えるのは助かりました。…あ、僕が勝手に調べますので、皆さんは休んでいただいて結構ですよ」


 付き合わせるのも申し訳が立たないとばかりにレピが付け足すと、スウォルは反発を示した。


「えー、手伝わせてくださいよ」

「え?」

「何が出来るかは分かんないっすけど、面白そうだし」

「村が滅んでるのに不謹慎なこと言わないで。…確かに変な話だし気になるので、私も手伝わせてください」

「ではワタクシも」


 嗜めつつ、シェリルとリリニシアも調査への参加を表明すると、リエネも続く。


「では全員で、だな。その方が早い」

「…はい、甘えさせていただきます」


 新たな目的を定め、廃村への道を進めながら、レピは考えていた。


リエネさんだけではない。

旅の途中で出会ったハリソノイア人たちに廃村の話をしても、誰も疑問など持っていないようだった。

何かがおかしい──。

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は8月18日20時にXでの先行公開を、19日20時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

廃村に辿り着き、一行が調査に取り掛かろうとする中、リリニシアは唸っていた。

曰く“やはり習った村の滅亡は十五年前のはず”だと言う。

たった十六年前の出来事なのに、王位継承者として国内で最上級の教育を受けた自分の知識とのズレが腑に落ちないようだ。

さておき廃村の調査を開始した一行。

しばらくするとシェリルが一冊の本を抱き、レピに見せに来た。


次回「勇者一行の廃村調査」

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