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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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24/49

二人の勇者のお手合わせ

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

スウォルに対する感情を問われ盛大に吹き出したリリニシアに、レピは精神の乱れを理由に魔術の修練を中断し、休ませることを決めた。

一人になり、ここまでの出来事や疑問を振り返っていると、手合わせを終えたシェリル、スウォル、リエネが戻ってきた。

レピは“関所での出来事”を検証するため協力を依頼し、シェリルとスウォルは快諾、リエネも興味を示したものの、眠っているリリニシアを一人にする訳にも行かず、彼女は留守番となった。

リリニシアを起こさぬよう少し離れ、関所の時と同様に威力を抑えた雷の魔術を剣に纏わせるも、威力は増大するどころか時間と共に弱まり、ついに消失してしまった。

「レピさん、これは…」


 顎に指を当て首を捻った専門家に、シェリルは気まずそうに聞いた。


「剣に掛けた魔術が無条件に増幅する訳ではない、か…。何か条件がある?あの時は確か…」


 シェリルの言葉が聞こえているのかいないのか、レピは聞き取れない声量でブツブツと言葉を紡いでいる。


「…少し待つか。降ろしていいんじゃねぇか?剣」


 そんなレピを見て、時間が掛かりそうだと見たスウォルが、剣を握った右手を前に突き出した体勢を維持していたシェリルに、休憩を促した。


「いいですか、レピさん?──お返事ないので降ろしますね」

「本人的にはなんか気付いたこととかねぇの?」

「うん…。あの時も止められるまで気付かなかったし」

「そういやそうか」


 シェリルとスウォルが言葉を交わしていると、レピは顎から手を降ろした。


「あ、終わりました?」

「えぇ、魔術の威力が増幅する条件の可能性として、いくつか。まず──」


 特に説明を求められてはいないが、レピは勝手に語り始めた。


「真っ先に思いつくのは、スウォルくんが──というより、その盾が傍にあること、だったのですが」

「変わんなかったけど」

「そうなると次に考えられるのは、シェリルさんの精神が影響を及ぼす可能性でしょうか」

「わ、私ですか?」

「ご存知かも知れませんが、魔術は術者の精神に大きく依存します。通常、武具に魔術を纏わせたとしても、その武具の使用者が魔術に影響することはないはずなのですが…こちらも同じく、その剣に限っては例外の可能性も捨てられません」


 早口で捲し立てるレピに圧倒されながらも、スウォルはなんとか質問を返す。


「姉ちゃんの気持ちの問題ってこと? 」

「平たく言えばそうですね。やはり戦闘となれば、いくら殺す気がないとはいえ精神は猛ってしまうでしょう。それから──」

「まだあんの!?」

「場所や環境が影響により、誰が使うどんな武具でも発現する可能性です。偶然、今まで誰も()()環境で試したことがなかっただけかも知れません。盾も含めてこれらのいずれか、もしくはすべてが重なることで初めて発生する現象の他、単に僕が思い付かない条件という線も考えられそうですが── 」


 ようやくレピは息継ぎを挟む。


「ともかく今は、“盾が近くにあれば発動する訳ではない”と判明したことを収穫としましょう」

「え、終わりでいいんですか?」


 レピの熱量から気が済むまで付き合わされそうだと予感していたシェリルは、拍子抜けしポカンと口を開けた。


「えぇ、シェリルさんも稽古終わりでお疲れでしょう?」

「…スウォル」

「おう、行けるぜ」


 シェリルはレピの問いに答えず、弟を呼ぶ。


「あの…?」

「私もその、魔術増幅?のことは気になりますし…そのせいで誰かを死なせてしまう前に、解明して欲しいです」

「お二人で戦うんですか!?危険です、木剣でもないのに!」


 意図を察したレピが語気を強めるも、二人は厭わない。


「俺と姉ちゃんに限って死なせることなんかねぇって。な?」

「しかし!」

「大丈夫ですよ、レピさん。私たちを信じてください」

「お互い、やべぇと思ったら止める程度の腕はあるからさ」

「…顔以外は似てない姉弟だと思っていましたが、頑固なところはそっくりですね」


 解明を急ぎたい本心も手伝い、レピは説得を諦めた。


「分かりました。危険を感じたらすぐに止めてくださいね」

「はい!」


 同時に力強く頷き、スウォルも剣を抜いた。


「そろそろ一勝ぐらいさせてもらおうかな」

「何言ってるの、勝たせる訳ないでしょ?」


 距離を開き、刃片手に睨み合う。


「ではシェリルさん、もう一度──纏わせる雷の魔術(ロワツメサ・ディケン)


 先ほど消失した雷が、再び剣を覆う。


「初めていい?」

「いつでも来いよ」


 レピはもはや口を挟むまいと、黙って二人から少し離れた。


 二人が構え、ザリッ、と音を立てながら地面を踏み締め、先に動いたのは──シェリルだった。


「やぁ!!」


 一気に距離を詰め、剣を振り下ろす。


「…」


 スウォルは声も出さず、静かに盾で受け止めた。


姉ちゃんの剣を剣で受け止めるのは危険だ。

剣越しに俺が感電させられるかも知れねぇ。

防ぐならこの盾、そうじゃなきゃ避ける。


 シェリルの剣が稲妻と共に盾を打つ中、スウォルは冷静にその攻撃をいなし続けた。


「攻めて来ないの!?」

「言ってろ…!」


 一方シェリルは、言葉と裏腹に()()()()()()()()()()()()()を念頭に攻め続けた。


力ではスウォルに敵わない。

主導権を渡すことなく握り続け、手数で切り崩す。

加えてスウォルは、剣同士の接触を避けている。

単純な腕力勝負に持ち込まれる可能性は、いつもより少ない。

このまま──!


「つぇあ!!」


 勝利への道筋を見たシェリルの連撃の隙間を、スウォルが捉えた。


「っ!」


 咄嗟に飛び退き、スウォルの剣は空を斬る。


「…ふぅ。木剣じゃないのに、随分思いっきり振るわね。当たったらどうするのよ」

「木剣でもやべぇと思うけど…まぁ当たんねぇの分かってっからな」


 少し距離が離れ一呼吸をおく二人を見て、レピは考える。


想定していた以上に苛烈な攻防ではあるが、魔術増幅の兆候は見られない。

あの時も発生するまで時間を要していたから、まだ結論を出すには早いが──もう一つ、お二人が手合わせを提案してくれたことによる嬉しい誤算。

防衛線における戦いでの、()()()()()()()ように見えた現象についても観測できる。


あくまで魔法ではなく()()に対するものではあるが、今の様子を見る限り──シェリルさんの雷に減衰も見られない以上、吸収はしていない。

これは魔法と魔術の違い、すなわち“魔力による現象”か、“魔力を用いず疑似的にそれを再現したもの”かによる差か?

あるいはこちらも、スウォルくんの精神状態によりその効果が変化する…?


「行くぞ!」


 考察を重ねるレピを尻目に、今度はスウォルが駆け出した。


「はっ!」


 迎撃すべく、シェリルは走ってくるスウォルに対し真っ直ぐに突きを放つが、スウォルは盾で逸らせ、滑らせるように左に弾き、そのまま右から斬りかかる。


「せいっ!!」

「くっ!」


 シェリルも同様、左手の盾で受け流し、そのまま体を右に一回転させ、剣をスウォルの首に──。


「でぇあ!」


 咄嗟に剣を返し、同じくシェリルの首に──。


「…ダメかぁ~!」


 肌に触れる寸前、互いにピタリと刃を止めると、スウォルは首元で青白く輝く刃に自らの敗北を認め、剣を降ろした。


「私の、勝ち…!」


 続いてシェリルもスウォルの首元から、微弱な雷を纏う剣を離す。


「クッソ~…!もうそろそろ一勝くらい出来てもよくねぇか!?」

「はっ…はぁ…知らないわよ、自力で勝ち取りなさい」

「勝ったと思ったんだけどな~…」


 剣を収め、手合わせの内容を顧みるスウォルに、レピが歩み寄り声を掛ける。


「お疲れ様でした。僕には互角に見えましたが」

「いや、もしお互い止めずに振りぬいてたら、俺のが当たるより先に首飛ばされてましたよ」

「そうですか。やはり素人には分からないものですね…」

「それでレピさん、私にはやっぱり強くなってないように見えるんですけど…」


 感心したように頷くレピに、シェリルは剣を見せ、問う。


「はい、増幅はありません。これから増幅もしないでしょうし、解除しましょう」

「私の気持ちは関係ないってことですか?」

「そう言い切るのは早計です。敵が命を狙ってくる()とお互いに殺す気のない()()との意識の差が関係しているかも知れませんし──現段階では、“盾が近くにあっても、戦いであれば必ず発現する訳ではない”程度に留めておくべきでしょうか」

「そっか~…。よく分かんねぇけど難しいんだな、いろいろ」


 レピの出した“ひとまずの結論”に、スウォルは理解不可能として勝手に納得した。


「僕にとっても初めて見聞きする現象ですからね。前向きに、“簡単に分かっては面白くない”と捉えることにしました」

「その考え方は好きですけど、これ以上どうやって調べんです?」

「確かめたいのは()()です。リリニシア様の癒しの魔術に影響がなかったことから可能性は低そうですが、偶然あの関所が攻撃の、あるいは雷の魔術のみに影響を及ぼす場所だった、なんてこともあるかも知れません」

「…つまり?」


 再び捲し立てるレピに、スウォルは興味なさげに要約を求めた。


「今はこれ以上、出来ることはない、ということです。お二人とも、お付き合いいただきありがとうございました」

「んじゃもう戻って寝ようぜ。流石に疲れたわ」

「えぇ、そうしましょう。…シェリルさん?」

「…え、あ。わ、分かりました」


 レピに呼ばれるまでしばらく無言でいたシェリルは、前を歩く二人の後を、唇を噛みながら歩いた。


…危なかった。

スウォルの言う通り、あのまま行けば、確かに私の剣が先に届いていた。

だから試合に勝ったのは私。


試合じゃなかったら?

先にスウォルの首を落としたとして、その瞬間に腕が止まる訳じゃない。

頭を失ったスウォルの体が崩れ落ちる前に、私の首も断たれていたはず。


これが実戦であったなら、結果は相討ち。

それ以上でも以下でもない。

疲れがあったのはお互い同じ。

…追い付かれかけてるんだ、(スウォル)に。


 シェリルは強く歯軋りした。


 

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は8月4日20時にXでの先行公開を、5日20時に本公開を行う予定です。


~次回予告~

実験を切り上げリエネの元に戻った三人は、失敗と手合わせの結果を彼女に伝える。

だが勝ったというのに暗い雰囲気のシェリルは、“疲れた”と逃げるように眠ってしまうと、この日の見張り役、レピを残し、スウォルとリエネも眠りについた。

しばらく後、再び最初の関所にまで歩みを進めた一行は、改めて“場所”を再現し、実験に取りかかる。


次回「勇者一行、関所で実験」

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