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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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23/49

魔術師の思案

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

ヤクノサニユに向け、ユミーナをかわいいと称したスウォルの一言が原因で、暗い表情のリエネを除き男性陣・女性陣に分かれ、じゃれあい程度の言い争いをしながらハリソノイア城を発った一行。

その道中、夜営の際の自由時間、シェリルとリエネの手合わせにスウォルも交じって鍛練を積む中、レピはリリニシアに魔術の手解きを続けていた。

休憩中の雑談で、リリニシアは身の上や旅の動機を語る。

一通り聞いたレピは、重くなった空気を変えるため、リリニシアに問う。

“スウォルくんのこと好きですか?”

「スウォルくんのこと、好きですか?」

「ぶほっ」


 何の脈絡もない唐突な問いに、リリニシアは盛大に噴き出した──が、むせつつ瞬時に冷静さを取り戻す。


「げほっ…んん、も、もちろん幼馴染みですもの。スウォルもシェリルも大好きですわよ」

「あ、そうじゃなく恋愛としてです」

「…」


 ジトッとした目で睨み付けるも、レピは笑顔を崩さない。


「何を持ってそう思われたのですかしら」

「スウォルくんがユミーナ様のお顔を褒めた時、シェリルさんとは違った意味で面白くなさそうでしたので」

「そ、そんなことないと思いますわ」

「そうですか?一緒に褒めた僕のことは眼中になさそうでしたが」

「…その顔してる時のレピさんは大っ嫌いですわ」

「これは失礼。では僕の勘違いでしたか」


 言葉とは裏腹に、レピは申し訳なさそうな様子を微塵も見せない。


「当たり前ですわ!もう休憩はいいでしょう!?再開しますわよ!」

「いえ、今日はここまでにしておきましょう」


 話を反らす為でもあるが、確かな熱意も持ってグルグルと肩を回すリリニシアの意気込みを、レピはあっさりとかわした。


「ど、どうしてです?」

「精神に乱れのある今の状態では、効果は見込めません。しっかりと休養に時間を使ったほうがいいでしょうから」

「精神が乱れたの、レピさんのせいではありませんの?」

「まぁまぁ、休むことも大事です。リリニシア様もお疲れでしょう?もう遅いですし、お休みになってください」


 やたらと押しの強いレピを訝しむが、まもなくため息と共にリリニシアが折れた。


「分かりました。レピさんのご指導がなければ到底、氷の魔術など使えるようにならなかったでしょうし…師匠(せんせい)に従いますわ」

「先ほども言いましたが、驚異的な速さで成長なさってます。なんら慌てることはありませんよ」

「はいはい、それが()()()()()()でないことを祈りますわ。…お休みなさい、レピさん」

「えぇ、お休みなさい」


 挨拶を済ませ馬車の荷車へ消えるリリニシアを見送り、再び置いた本を手に取ると、火の灯りを頼りに頁を捲りながら考える。


僕が見当違いなことを言っているのであれば、淡々と否定すれば済む話。

恐らくは無自覚…あの質問で精神が乱れること自体が()()だと、いつお気付きになるでしょうか。

あるいは、気付くきっかけを作ってしまったかも知れません。

スウォルくんの方は…なかなか手強そうですが。


リリニシアの苦労を想像し、苦笑しながら頁を捲る。

止まったかと思えば、少しの間をおき再び響くシェリルとリエネの木剣の音が耳に心地いい。


さて、この機に少し状況を整理しておきますか。

当面の目的、ヤクノサニユとハリソノイアでの和睦は、ひとまず成功と言っていい。

後はユミーナ様の手腕に期待…というところでしょう。

我々を上手く利用してくれればいいのですが。


リエネさんが加わってくれたのは心強い。

シェリルさんも心を開いているようですし、戦闘面でも精神面でも我々の柱となってくれるでしょう。

気になるのは、リエネさんを称したユミーナ様の言葉──“忠実なのは私に対してではなく、この国に対して”。


当初は単に、リエネさんも大王の座を狙い、返り討ちにされ、しかし生かされ、憎みながらも仕方なく従っているものだと思っていましたが…どうやらそうではない。


ハリソノイア城を出た直後の態度と言葉──“男が得意じゃない”、“いい思い出がない”。

スウォルくんが下手を打たないように、という意図はあるでしょうが、詳細は語らず話を反らした辺り、むしろユミーナ様への配慮に感じられた。

あるいは、()()()()()に自身が関与しているか。


高価そうな首飾りを与えているところからも、二人の間に絆がありそうに思えますが…。

そもそも、何故リエネさんはユミーナ様に挑んだのでしょうか。


意図的に嘘をついたか、ユミーナ様も誤解しているのかは分からないが、少なくとも彼女のリエネさん評は正確ではない。

そしてリエネさんは()()を抱えている。

恐らくシェリルさんも気付いている。

僕がでしゃばるより任せておいた方がよさそうか。


それより僕が考えなければならないことは──。


 ()はしても()()はせず、ただ頁を捲る。


シェリルさんの剣が関所で見せた、魔術の増幅。


火球(魔法)を吸い込んだように見えた、スウォルくんの盾。

そしてあの豪腕を複数回受け止める怪力に、骨折が瞬く間に完治する治癒力。


恐らくいずれも“千年前の勇者”の武具故の、ある種の例外的な現象だと思いますが…()()()()()()()()()()()()はともかく、()()()()()()()()()()()は解明したいところです。

そうすれば──。


「あれ、レピさんまだ起きてたんすか?」


 シェリル、リエネと共に戻ってきたスウォルの声が、レピの思考を遮った。


「おや、お疲れ様です。如何でしたか?」

「順位をつけるなら、私、シェリル、スウォルだろうな」


 リエネが誇らしげに胸を張る。


「強ぇよリエネさん…」

「き、昨日は私が勝ちましたもん!」

()ではな」

「分かってますよ、斧使ってないですもんね」

「本気出したらもっと強ぇってことだもんな…」

「お前たちはまだこれからだろう。それで、お前はまだ寝ないのか?」


 二人がふて腐れる前に、リエネは話の矛先を反らした。


「少し考え事をしていまして」

「考え事?──禁じられた魔法のことか?」

「まぁ、そんなところです」


 レピの手に収まる本を見たリエネの勘違いを、あえて訂正せずに流す。

 実際のところ、何度読んでもめぼしい情報は見当たらない。


「それよりシェリルさん、少しお願いしたいことが」

「はい、なんです?」

「お疲れのところ申し訳ありませんが、剣を抜いていただけますか?」

「え、剣?」

「どういうことだ?」


 スウォルとリエネが口を揃えた。


「最初の関所での現象を検証したいんです」

「関所でのっていうと… 」

「剣に電気が走り、こちらの兵を斬らずに気絶させたんだったか」


 見回りで立ち寄った関所の有り様を思い返し、リエネが呟く。


「あー、そういや関所で話聞いて俺たちに会いに来たんだっけ」

「その電気は僕が魔術で纏わせたものなのですが、結果が僕の想定と違っていました」

「スウォルの剣にもしていたのも同じことだよな?どう違っていたんだ?」


 戦闘に関連するからか、リエネは興味深げに身を乗り出した。


「スウォルくんには雷じゃなく風でしたが…シェリルさんの剣には、殺してしまわないように威力を抑えて掛けました」

「ほう、調整が効くのか」

「えぇ。本来なら時間の経過と共に弱まっていくのですが、あの時はむしろ徐々に威力が増していきました」

「スウォルが割って入ってくれなければ、もしかしたら──」


 最後の一人を倒そうとした時、スウォルが相手を肩で突き飛ばし、盾で剣を受け止めたことを思い出し、シェリルは声を震わせた。


「まぁまぁ、結局誰も死なさずに済んだんだから、それでいいじゃねぇか」


明るく笑ったスウォルに、レピは首を横に振った。


「それは結果論です。分かりやすく“魔術増幅”と呼びますが、アレは危険です。一方、制御することが出来ればむしろ有益に活用することも出来ると思うんです」

「なるほど、それで──言ってみれば、()()したい、という訳か」

「…えぇ。制御が不可能なら、いっそ二度と使わないという選択肢も取れます」

「分かりました。じゃあ──」


 シェリルが鞘から剣を引き抜こうと手を伸ばしたところ、要求したはずのレピが制止した。


「いえ、リリニシア様を起こしてしまうかも知れません。少し離れましょう。スウォルくんもお願いします」

「いいっすよ、どこにします?」

「さっきまで私たちがいた場所でいいんじゃない?何かあれば戻って来られるし」

「そうしましょう」

「面白そうだ。レピ、付いて行っていいか?」

「いくら近場とはいえ、眠っているリリニシア様を一人残すのは…。荷物もありますし」

「む、確かにそうか。分かった、私は残ろう。後で話を聞かせてくれ」


 先を歩くシェリル、スウォルも、残って三人を見送ったリエネも、会話の中で一瞬、レピが顔をしかめたことには気付かなかった。


 少し離れ、三人が訓練に励んでいた、開けた場所で──。


「いつでもどうぞ!」


 シェリルが正面に付き出した右手に握られた剣に、レピが手を(かざ)す姿を、スウォルは腕を組んで見守る。


「では、同じ魔術を。──纏わせる雷の魔術(ロワツメサ・ディケン)


 レピが唱え終わると同時にシェリルの剣を、青白い稲妻が音を立てて走る。


「あの時と同様、威力は人を死なせてしまわない程度に抑えています。シェリルさん、しばらくそのまま剣を掲げていてもらえますか」

「分かりました」


 そのまま五分ほど経ち──。


「私には分からないんですけど…変わってますコレ?」

「俺にも変わってねぇように見えっけど、専門家から見たら違います?」


 魔術の素人から見解を問われた()()()も、答えは同じだった。


「…変わっていません。関所での戦闘はものの数分でしたから、既に威力が増していてもいいはずなのですが…」


 想定と異なる結果に困惑する中、さらに五分後──。


「…消えたね」

「あぁ、消えた」


 再び二人は、視線を専門家に投げる。


「あれぇ?」


 専門家も首を捻った。

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は7月28日20時にXでの先行公開を、29日20時に本公開を行う予定です。


~次回予告~

“魔術増幅”が認められず首を捻るレピから他に考えられる可能性、“戦いに臨むシェリルの精神が影響した可能性”を聞いたシェリルとスウォルは、二人で戦うことを提案する。

レピはリエネを交えた訓練の疲れが残るだろうと止めるが、二人に押し切られる。

姉弟の戦いの結果は、そしてその結果にシェリルは──。


次回「二人の勇者のお手合わせ」

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