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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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20/49

勇者一行と千年前の勇者

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

“一行を強者として喧伝する”というユミーナの策の効果で、帰還の道中でたびたび歓待を受け足止めされ、往路を大きく上回る40日に及ぶ長旅の末、ハリソノイア城の目前まで辿り着いた一行は、帰還前の最後の夜、リエネが国を離れ、一行に加わることを懇願するための作戦会議を行っていると、何故かレピだけはニヤニヤと笑みを浮かべていた。

結局“誠心誠意頼むしかない”と結論付け、翌日ユミーナと再会すると、彼女は一行を労い、改めて正式に和睦の提案に同意した。

リエネは緊張の面持ちで彼らと共に行動したい旨を伝えると、ユミーナは迷うこともなく許可し、レピは想像通りだと、作戦会議での笑顔の理由を明かす。

レピの意外な一面が見えたのと共に、リエネが正式に仲間に加わった。

「これからよろしく頼む」


 ユミーナの許しを得たリエネが、改めて一行に向き直る。


「こちらこそ、よろしくお願いします!嬉しいです!」


 シェリルもリエネに向き直り、喜びを口にすると、スウォルとリリニシアも囲うように集まり、続いた。


「やったな!頼りにさせてもらいますよ!」

「心強い限りですわ!」


 その姿を先程までのいやらしいニヤケ顔とは違う、優しい微笑みを浮かべてユミーナが見守ることに気付いていたのはレピだけだった。


「…それで、次はどうなさるのです?ヤクノサニユにお戻りに?」


 歓喜を邪魔しないよう、少し間を開け、ユミーナは問う。

 はしゃぐ姿を見られたリリニシアは気恥ずかしそうに咳払いし、答えた。


「はい。一度お祖父様に、ユミーナ様のお言葉を伝えようかと考えております」


 城までの道中、何も考えずに持て囃された訳ではない。

 この後の動きも話し合い、既に決めていた。


「すぐ発つのですか?お話も伺いたいですし、私としては一日くらいゆっくりして行ってほしいところですが」


 仲間に目配せすると、全員が頷く。


「では、お言葉に甘えさせていただきますわ」

「やった!すぐに部屋と食事を準備させますね!それまでは…っといけない、忘れるところでした!レピさん!」


 ユミーナはパン、と手を叩く。


「はい、なんでしょうか」

「お探しの“禁じられた魔法”について、どの程度のことをご存知ですか?」

「!」


 ユミーナの質問に、レピの顔色が変わった。


「…お恥ずかしながら、ほとんど何も知らない、というのが実情です。かつての王が禁じた、という噂程度で」

「そうですか。でしたら()()()()()()()でも無駄ではないでしょうか」

「何か分かったのですか!?」


 初めて会った時の悲鳴以外で大声を上げるレピを初めて見た三人は、少し驚いた顔で見守っていた。


「私は本などに興味がないので気にしたこともありませんでしたが、皆様が発たれた後、書庫を改めました。先代だかもっと前だかは知りませんが、他所様を襲って奪い取ったであろう“戦利品”が山ほどありまして。その中の──」


 ユミーナは不快そうに、苦々しい表情で吐き捨て、一冊の古びた本を取り出した。


「こちらに、極僅かではありますが、“禁じられた魔法”についての記述がありました」

「いったいどんな…!?」

「この本によれば、禁じられた魔法を編み出したのは千年前の勇者“ルベス”であり、禁止という形で封じたのもまた彼である──らしいです」

「勇者が…?禁じたのは王では…いや…」


 顎に手を当て、手にした新たな情報を考察を始めたレピは、少しの後に一つの結論に辿り着いた。


「…ヤクノサニユに戻っていただけるのは好都合でしたね」

「よろしければこの本、差し上げますよ」

「本当ですか!?」

「えぇ。レピさんなら私たちには汲み取れない情報を拾えたりもするかもしれませんし」


 ユミーナは玉座から腰を上げ、レピに歩み寄り、本を差し出す。


「感謝いたします、ユミーナ様」

「後でお読みになってください。さて、準備の間、例の首を見せてもらいたいです!」

「ではご案内いたします。こちらへ」


 リエネが先頭を歩き始め、次にユミーナ、その後に四人が続く。


「でっ…かいですねぇ、報告は受けてましたが!どうやって倒したんです!?再生しなくなるまで斬ったんですか?」

「姉ちゃんが魔力核を壊して再生を止めて、首はリエネさんが落としました」


 荷車に積まれた氷漬けの首を見上げ驚くユミーナに、スウォルが説明した。


「あ、()()()()ですか!?」

「…」


 ユミーナが戦況のカギを握っていたシェリルに視線を移すと、本人は嬉しくも誇らしくもなさそうに、視線を伏せた。


「…?」

「姉ちゃんの剣なら、魔力核を壊せるらしいので」


 見かねたスウォルが代わりに答える。


「私もしかして何かマズいこと言いました?」

「いえ、ちょっと疲れてるだけですから、気にしないでください」


 二人の様子を見て戸惑うユミーナに、スウォルが笑いながら答えた。


「そうですか?まぁお戻りになってすぐですもんね!」


 すぐに納得したユミーナは、再び魔物の首に目を向ける。


「凍っているのは?」

「ここまでの道中で腐ってしまうのを避けるため、僕が魔術で」

「なるほど、やっぱり便利ですねぇ…」


 次の疑問には、大切そうに本を抱えたレピが答えた。


「頭だけでこの大きさだと、全体だとどれぐらいでした?」

「この五、六倍ほどでしょうか」

「ですよねぇ!当分食料には困りませんね!」

「食べるんですの!?」


 ユミーナが嬉しそうに言った言葉に、リリニシアは目を見開いた。


「え?もちろん食べますよ?貴重なお肉ですし」

「魔物ですわよ!?」

「魔物だって死んだら肉の塊じゃないですか」

「あの、今ご準備いただいてるお食事には入っておりませんわよね?魔物」

「入ってません。切り落とした部位が消滅してしまわなければ無限に食べられるんですけどねぇ…」

「とりあえず安心いたしました…」


 リリニシアが“なんだかんだ言ってもやはりハリソノイアの価値観だな”と頬を引きつらせてる中、シェリルは小声でスウォルに礼を言い、スウォルも親指を立てて答えた。


 しばらく首を眺めながら歓談した後部屋の準備が出来た旨の報告を受けたユミーナはリエネと共に公務に戻り、四人は食事までの時間を、レピの部屋に集まり過ごすことにした。

 ユミーナから受け取った本を黙々と読み進めるレピに、スウォルが尋ねる。


「なんかいい感じの情報書いてそうですか?」

「ざっと流し見た限りですが、ユミーナ様のおっしゃっていた以上のことは書いてなさそうです」

「さっき言ってた、“ヤクノサニユに戻るのが好都合”ってどういう意味っすか?」


 本を捲りながら、残念そうに首を横に振るレピに、スウォルは質問を重ねると、横で聞いていたリリニシアが割って入った。


「“禁じられた魔法”を作り出し、自ら封じたという千年前の勇者ルベスが、ヤクノサニユ王国を興した初代の国王だから、でしょう?」

「その通りです。何か手掛かりがあるかも知れません」

「確か国を作って剣と盾を地下にしまいこんで消えちまったんだっけ?」


 スウォルはあまり自信がなさそうに姉に話を投げた。


「うん、それからどこに行ってどこで亡くなったのかは分かってないらしいけど…」

「少なくとも彼が初代のヤクノサニユ王であることは間違いありませんわ。ワタクシの名前の“ルベス”も彼から来るものですから」


 リリニシアは勝手に話を引き取り、誇らしげに胸を張った。


「でもリリニシアがその、勇者ルベスの子孫って訳じゃねぇんだよな?」

「ま、まぁ彼は子を残さなかったという話ですから…」


 スウォルの質問にバツが悪そうに答えたリリニシアに、シェリルが続けた。


「ヤクノサニユを作ってすぐに、一緒に魔王を倒した仲間に王位渡しちゃったんだよね」

「そうです。ヤクノサニユは千年間に渡り、常に王位は世襲です。その中において、初代から二代目だけが唯一の例外だそうですわ」

「それでも一緒に魔王倒してんだから、やっぱ英雄の血筋だよな」


 腕を組みうん、うんと頷くスウォルに、リリニシアは答える。


「誇りに思ってはおりますが、血など問題ではないでしょう。お二人だってルベスの子孫ではないのに剣と盾を継いだではありませんの」

「…うん」

「そうだな」

「あ、“血など問題ではない”ってお祖父様にバラさないでくださいね。あの人、やたら血にコダワリが強いですから」


 慌てて口封じにかかるリリニシアに苦笑しながら、レピが話を纏めた。


「ともかく、“禁じられた魔法”の創造主であり禁じた本人であるルベスと縁の深いヤクノサニユに行けるのは、僕にとってありがたい限りですよ」

「そっか、分かりました。んじゃもう一つ」

「なんです?」


 和やかな表情から一点、スウォルの目付きが鋭くなる。


「ニヤニヤしてたのとユミーナさまの反応予想してたって辺り、ちゃーんと説明してもらいてぇな?」

「あっ」

「忘れてましたわ!」

「そうだった!レピさん!?」


 しまった、という表情のレピに、リリニシアとシェリルも畳み掛ける。


「あ、あれはさっき言った通り、予想はしてたけど断言は出来ないから言い出しづらかったというか」

「嘘つけ!絶対楽しんでたじゃねぇか!」

「私たちがどれだけ不安だったと…!」

「あはは…いやー、すみません」

「笑って誤魔化すな!」


 声を揃える双子を諌め、リリニシアは落ち着いた口調で聞いた。


「お二人とも、落ち着いて。レピさん、予想出来たのは何故ですの?」

「ユミーナ様は護衛を必要としておらず、表面上はともかく内心では政策をよく思っていなかったリエネさんが考えを変えようとしているんです。ユミーナ様からしたら得しかないじゃありませんか」

「…まぁ確かに」


 腹立たしい心境ではあれど、説明にはひとまず納得した三人に、レピは続けた。


「それに自国の者が魔王討伐の旅に同行するというのは、その後を考えると政治的に有利に働きそうじゃありませんか。こちらに関しては意識してなさそうですが」

「なるほど、分かりました。今後こういうことがあれば、一人でニヤニヤしてないで共有してください。確証がないならそう言えばいいのですから!よろしいですわね!?」


 リリニシアに一喝され、穏やかな笑みを浮かべながら反省を伺わせる器用な表情で、レピが詫びた。


「えぇ、肝に命じます」

「お二人も、それでよろしいかしら?」

「今後を気を付けてくれるなら私は…」

「無駄にビビらせるようなことしないでくださいよマジで!」

「はい、お約束します」


 部屋の中から言い争う声が聞こえ、扉の外で様子を伺っていたユミーナの部下が、収まった頃を見計らい食事の準備が出来たことを伝えに来た。

 ユミーナと共に食事を楽しんだ一行が、夜になり各自与えられた部屋で旅の疲れを癒している頃、リエネはユミーナと二人、彼女の私室にいた。


お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は7月7日20時にXでの先行公開を、8日20時に本公開を行う予定です。


~次回予告~

自らの私室にリエネを招き入れたユミーナ。

大王という地位にまったく見合わない、狭く飾り気のない部屋に戸惑いを隠せないリエネに、ユミーナは“よく似せてあるでしょ?”と含みのある言葉を口にする。

“出発前に話したい”というリエネは、そんな部屋でユミーナに何を語るのか。

そしてそれを受けたユミーナは──。


次回「リエネとユミーナ」

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