勇者一行の帰還報告
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みそすーぱーです。
~前回のあらすじ~
手合わせの後、朝までを二人で語らって過ごしたシェリルとリエネ。
問答の末に朝を迎え宿に帰ると、既にリリニシアとレピは目を覚ましていた。
起きたら二人がいなくて驚いたというリリニシアに詫び、戻る道中、食事処をの店主に誘いを受けたことを伝え、スウォルを起こして移動することに。
リエネはそこで、一行に自身の考えを告げる。
「また一ヶ月歩き通さなきゃなんねぇのかぁ…」
馬の手綱を引くリエネを先頭に宿を出立してまもなく、スウォルがボヤいた。
「…珍しいですわね、ワタクシよりも先に。自分で言うのもなんですけど」
「調子悪いの?」
「悪いってほどじゃねぇんだけど、なーんか体重くってさぁ」
驚くリリニシアと心配そうなシェリルに、スウォルは“大したことではない”と軽い口調で答えた。
穏やかな口調でレピが気遣う。
「スウォルくんは何度か攻撃を受け止めたりしていたので、疲れが出たのかも知れませんね。辛いようなら馬車で休んでもいいと思いますよ」
「いやいや、本当にちょこっと、そんな気がするなぁってくらいなんで」
「そうですか?たぶん帰りは一ヶ月じゃ済みませんよ?」
「え゛」
レピの言葉にスウォルだけでなく、リリニシアも声にならない声をあげる。
「ど、どういうことですの!?」
「もっと掛かる…んすか?」
「えぇ、おそらく。首が増えましたから」
ハリソノイア城から使ってきた荷車の後ろに更に繋げられた新たな荷車と、シェリルへの配慮から布を被せ隠されている“荷物”を指差し、レピは苦笑いを浮かべた。
「馬の体力も考えて、五日ほどは余計に掛かると見ておいた方がいいでしょうね」
「リエネさん!やっぱアレ置いて行きませんこと!?」
「ご辛抱ください、リリニシア様」
矛先を向けられたリエネは申し訳なさそうに、しかし一切譲るつもりは感じさせない凛とした声で切り捨てた。
「一ヶ月以上掛かるんですのよ!?腐ってしまうんじゃありませんの!?」
負けじと食って掛かるリリニシアを、レピが嗜める。
「あぁ、それはご安心ください。魔術で氷漬けにしてあります」
「そのせいで重さ増してますわよね!?」
「俺、やっぱ馬車で寝てようかな…」
「その方がいいよ」
元気に抗議するリリニシアと違い、体調からか普段より弱々しいスウォルに、シェリルが優しい声で休息を促す。
「シェリルさんもですよ。寝ていないんでしょう?」
レピはシェリルに対しても気遣いながら一瞬、チラリとその原因に視線を向ける。
リエネは気まずそうにレピを横目で見てから、再度シェリルに詫びた。
「…済まなかった」
「あ、いえ、むしろ私の方が食い下がって付き合わせちゃった部分もあったので…。それに私は昼の間寝てましたし」
「気絶と睡眠とは別でしょう。二人くらいなら場所はあるでしょうから、シェリルさんも無理せず休んでくださいね」
「はい、ありがとうございます」
そんな会話から始まった帰り道だが、その旅路はレピの見立てよりも更に長引いた。
立ち寄る町や村で、往路とは真逆の熱い歓待を受けた為である。
各地の民は既に戦いの結末を知っており、“首を見せてくれ”と頼み込む者も少なくなかった。
リエネによると、彼らに先んじてユミーナに結果を伝えるべく、各所に待機していた伝令が代わる代わる走っており、ユミーナの策──一行を強者として喧伝する一環として、伝令が現地の人間にも“一行の活躍”を語って聞かせたのだろう、とのことだった。
おかげで食料に困ることもなく、持ち帰った首の威力にリリニシアは異議を飲み込むしかなく、シェリルも魔物とはいえ、斬り落とされた首に狂喜乱舞する姿を見て“本当にこの人たちと分かり会えるのか”と不安になりつつも、恩恵を受けているため複雑そうな表情を浮かべていた。
宿を経って40日後、ハリソノイア城に至るまでの最後の夜、一行は円を作り、ユミーナにリエネの加入を打診する為の作戦会議を行っていた 。
口火を切ったのはシェリル。
「ユミーナ様、認めてくださるでしょうか…」
「リエネさんに対してメチャクチャ怖かったもんな…」
思い出したスウォルが身震いする。
「ですが、話が分からない方ではないようでしたわ。しっかりと理由をご説明すれば、あるいは…。最悪、ワタクシがヤクノサニユ王の孫として泣きながらすがり付いてやりますわ!」
「リリニシア様にその様な真似をさせる訳には…!私がしっかりと説得できればいいのですが」
発言の内容とは裏腹にフンスと鼻を鳴らし、気合い十分なリリニシアを、リエネは不安げに嗜めた。
「権力の振りかざし方が“泣いてすがり付く”な辺り好きだよ俺」
「…あなた軽はずみに好きとか言うの、よくありませんわよ」
「え、なんで?」
笑うスウォルに文句を言うリリニシアを尻目に、シェリルは口をつぐんでいたレピに尋ねる。
「レピさんなら、これ!って言うような説得の仕方とか思い付きま──」
そしてそのレピはというと、すっごいニコニコしていた。
「れ、レピさん?なにか楽しいことでもあったんですか…?」
「いえ失礼。誠心誠意お願いするしかないんじゃないですかねぇ。んふふふふ」
失礼と詫びつつ、その異様とも言える笑顔は隠せていない。
基本的に微笑んではいるが、普段のそれとは違う、歪んだ笑みを浮かべ続けるレピに、恐怖に近い感情を抱いた四人はそれ以上突っ込んで言及することが出来ず、結局作戦も何もなく、ただまっすぐお願いすることに決まった。
そして翌日、これまでの町や村と同じく、群がる民衆を掻き分け辿り着いたハリソノイア城──。
「お帰りなさい!ご活躍は伺ってますよ!」
玉座の間で、もみくちゃにされヘトヘトの五人をユミーナが迎え入れた。
真っ先にリエネが跪いた。
「件の魔物、討伐して参りました。首は馬車に」
四人も倣って跪くと、ユミーナは慌てたように止めに入った。
「そんな堅っ苦しいの止めて、楽になさってください!首は後で確認させてもらいますね!」
ユミーナの言葉に従い立ち上がる五人に、続けて問い掛ける。
「如何でしたか、例の魔物!強かったですか!?」
自分が口を出すべきではないと判断したリエネが四人に目配せすると、四人もそれぞれ顔を見合った後、代表してスウォルが答えた。
「強かったです。リエネさんが一緒に来てくれてなかったらキツかったかも知れません」
「足を引っ張っていたらと不安だったんですが、ちゃんとお役に立ちましたか?」
「役に立つどころか、完全に主力でした」
「よかったですねぇリエネ!お褒めいただいてますよ!」
リエネはペコリ、と頭を下げて答える。
シェリルとリリニシアは心中で、リエネ加入に繋がる回答を出したスウォルを称賛していた。
レピはやはり異様なほどニコニコしていた。
「例の作戦の効果はどうでした?」
「それもすごくて…。色んなとこで歓迎してくれたおかげで、想像してたより帰ってくるの遅くなっちゃいましたよ」
「そうですか!これでうちのバカな野蛮人どもも、少しは学習してくれるといいのですが。…ともかく、皆様は見事、私の依頼をこなしてくれました。ありがとうございます」
相変わらず自国の民に厳しい姿を見せつつ、ユミーナは深く頭を下げ、少しの間のあと姿勢を戻す。
「少なくとも貴方は多少、学習出来るだけの脳はあるようですね」
最初の謁見で“ハリソノイア大王が軽々しく頭を下げること”に苦言しようとしたリエネに視線を向けながら言った。
「大王様、よろしいでしょうか」
リエネは意を決し、切り出す。
「…褒めた側から文句言うんじゃないでしょうね」
「別件です」
「ならどうぞ」
三人が固唾を飲み、そしてレピは依然として表情を変えず、状況を見守る。
「この国を離れ、彼らと共に旅をする許可をいただけませんでしょうか…!」
緊張から声を震わせ、しかし力強く、リエネは宣言した。
ユミーナの回答は果たして──。
「あ、いいですよ」
──即答だった。
「いいんですか!?」
レピを除く四人は声を揃える。
レピは小さく吹き出し、肩を震わせていた。
「え、断ったほうがよかったですか?」
「そ、そういう訳ではありませんが…よ、よろしいのですか?」
戸惑いながら問うリエネに、ユミーナはさも当然のように答える。
「えぇ、どうぞ?…あれ、レピさん笑ってます?」
「ふふっ…いえ、そうお答えになるだろうなぁと思っていたのですが、どうお願いしたら許可をいただけるか、皆さん一生懸命会議してまして…ふふふ…!」
“そういうことか!!”
昨晩からのレピの異様な笑顔に合点が行った四人は、心の中で声を揃え、横目に睨み付ける。
ユミーナも受けた印象は同じようだった。
「えー!だったら教えてあげればいいのに!レピさん、いい性格してますね~!」
「私には知り得ないハリソノイアの事情があったりするかも知れないので、根拠もなく希望を持たせるようなことは言いたくなかったのですが…皆さん可愛らしくて」
「誠実なんだか意地悪なんだか分かりませんね!気持ちは分かりますけど!」
三人は“面白い反応が見られそうだから”で同行させることをリエネに伝えていなかったことを思い出した。
レピと共鳴した様子のユミーナは、一頻りニヤニヤした後、改めてリエネに向き直った。
「さて、話を戻しますが…大王として命じます。以後も皆様の力になって差し上げなさい、リエネ」
「…ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
リエネに続き、三人も心よりの感謝を伝える。
勇者一行に、新たな仲間が加わった。
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次回は6月30日20時にXでの先行公開を、7月1日20時に本公開を行う予定です。
~次回予告~
リエネの加入を許され、歓喜に沸く一行は、次の行動に移る前に休んで行ってはどうか、とのユミーナの提案を受け入れることに。
またユミーナは、レピの“探し物”に対する現在の知識を確認し、千年前の勇者に関わる意味ありげな言葉を口にする。
次回「勇者一行と千年前の勇者」




