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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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18/49

シェリルと“剣”

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

仲間たちが寝静まる中、リエネの誘いを受けたシェリルは、二人で深夜の散歩に出る。

その中でリエネからの謝罪や彼女への質問など、言葉を交わした後、更に相互理解を深める為、二人は木剣を握り手合わせすることに。

リエネもまた、手合わせの中で、シェリルへの理解を深めていくのだった。

 シェリルとリエネが疲労から手合わせを終えた頃には、空が白んで来ていた。

 まだ眠っているであろう仲間たちを起こしてしまっては忍びないと、二人は休息がてら、近くの木に木剣を立て掛け、自らも体を預け座り込み、日が昇るまでを過ごすことにした。


「済まない、君が眠る時間を奪ってしまった。こんなに長々と時間を取らせるつもりはなかったんだが」


 散歩を持ちかけた側として申し訳なさそうなリエネに、シェリルは笑って答えた。


「気にしないでください、私も夢中になっちゃったので」

「ふふ…君の負けず嫌いも私に()()()()()ようだ」

「あはは…」


 お互い負ける度に“もう一本”を繰り返し、疲れて動けなくなるまで続けた結果がこの時間。

 否定も出来ず、シェリルは笑うしかなかった。


「シェリル。剣を交え、君のことが少し理解できたからこそ、言葉で聞きたい」


 共に笑顔を浮かべていたリエネは、ふと真顔に戻り、尋ねる。


「なんですか?」

「君は何故、剣を好むにも関わらず、命のやり取りを嫌うんだ?」

「…」


 唐突な質問に意図を図りかね、シェリルはポカンと口を開ける。


「剣は──いや、剣に限った話ではない。武器なんて物は例外なく戦いの道具。そして殺しの道具だと、私は考えている」

「それは、えと…」


 言葉を探すシェリルを、リエネは黙って見守る。


「逆、ですかね」

「逆?」


 シェリルの口から放たれた言葉に、リエネは首を捻った。


「剣が好きなのに殺したくない、じゃなくて、殺したくないけど剣を好きになれた…が正解かなって」

「…理由を聞いても?」

「そんな大層な話じゃないですけど──」


 リエネに促され、シェリルは懐かしむように目を細めながら続けた。


「私とスウォルは小さい頃からずーっと、戦いの訓練をさせられて育ったんです。“予言の子だから”って」

「…」

「スウォルは私と違って明るくて前向きで…ちょっとこう、子供っぽかったりはありますけど、昨日みたいに気を遣えるところもあって」


 リエネはシェリルの言う“昨日”の出来事、目を覚ました彼女に対する声の掛け方を誤った自分に対し、スウォルが“少し時間をくれ”と頼んできたことを思い出した。


「…あぁ、君に対しても私に対しても」

「はい。“姉ちゃん”なんて呼んでくれますけど、私としてはそんな気もしないっていうか…ただ“父さんがそう言った”から私が姉になっただけ、みたいな感じで」


 シェリルは膝を抱き、前屈みに俯いて額を当てる。


「予言のことを聞いても“俺が世界を救ってやる!”って。私は“命懸けの戦いなんてしたくない”としか思わなかったのに」

「…」

「自慢の弟なんです。…私と違って」

「そうか」

「でも一つだけ…私の方がスウォルよりもすごいんだって、胸を張って言えるのが剣なんです」


 シェリルは少しだけ顔を上げると、木剣を見つめながら続けた。


師匠(せんせい)が“スウォルよりも筋がいい”って言ってくれて。…嬉しかったんです。お姉ちゃんらしいところを見せられるって」

「うん」

「だから訓練も、嫌だったけど頑張れたんです。スウォルに“自慢の姉ちゃん”って思ってもらいたいから。…(これ)がダメなら、私には本当に何もないんです」


 何と声を掛けるべきか分からず、リエネは一瞬目を伏せる。

 改めてシェリルに視線を移すと、再び体を木にもたれ、少し悲しげな笑顔を向けていた。


「だから剣を好きになれたんです。なるしかなかったんです」

「スウォルを、愛しているんだな」

「それはもう。でも、たぶんそれだけじゃないですかね」

「では…?」

「リエネさんの言う通りです」


 質問に対し噛み合わない回答に、リエネは首を捻る。

 困惑するリエネを見て、シェリルはいたずらに笑って、続けた。


「悔しかったんだと思います。双子なのに、お姉ちゃんなのにスウォルに何も敵わないのが」

「…ふふ、()()()()()だな」

「スウォルのこと、子供っぽいなんて言えませんね」

「その理屈だと私も子供っぽいことになってしまうんだが」


 二人して自嘲すると、合わせたように吹き出した。


「…さて、そろそろいい時間だろう」


 一頻り笑った後、いつの間にやらすっかり昇った朝日を眺め、リエネが言う。


「そうですね。戻りましょうか」

「楽しい時間だった。ありがとう」

「私のほうこそ楽しかったですし、聞いてもらえて少し気が晴れました」

「そう言って貰えると私も嬉しいよ。さ、行こう」


 リエネが先に立ち上がり手を差し伸べると、シェリルはその手をしっかりと握り、続けて立ち上がった。


「結局、何回勝って何回負けたんでしたっけ?」

「…今度、しっかりと決着をつけようか」


 負けず嫌い同士、お互い次回への闘志を燃やしながら、宿に向けて歩き始めた。

 既に人々は活動を始めており、食事処を営む町人から“魔物を倒してくれたお礼”として誘いを受けた二人は、後で仲間と共に世話になると答えた二人は、散歩に出てきた時とは打って変わり、とりとめもない雑談を弾ませながら宿に辿り着く。

 リリニシアとレピは既に目を覚ましていた。


「あらお帰りなさい、お二人とも。おはようございます」

「おはよう、リリニシア。レピさんも」

「えぇ、おはようございます」

「驚きましたわよ、目が覚めたらお二人ともいないんですもの。レピさんが教えてくれなければ探しに行ってたとこですわ」


 身支度を済ませていたリリニシアは、少し責め立てるような目つきで二人を睨む。


「申し訳ありません、リリニシア様」

「ごめんね、心配させて」

「僕が先に起きていてよかったですねぇ。朝まで戻らないとは、僕も思ってませんでしたけど」


 気まずそうに詫びる二人を庇うように、レピが笑いながら言った。


「まったく、最初からそのつもりなんであれば、先に言っておいてくださればいいのに。まぁいいですわ、スウォルを起こして食事にしませんこと?お二人もまだでしょう?」

「うん、外のお店でご馳走してくれるって」

「魔物をお礼ですの?」

「うん。…いつ見ても寝相悪いなスウォル」

「スウォルもあなたに同じこと言ってましたよ。ほら、そろそろ起きなさいな」

「スウォルよりマシでしょ!?」


 シェリルとリリニシアがスウォルの体を揺すって声を掛けている中、レピはリエネに耳打ちする。


「どうでした?ちゃんと謝れたんですか?」

「あぁ。それにしっかりと話が出来た。ありがとう」

「では、あの話も?」


 リエネは少し顔をしかめた。


「…いや、まだだ」

「しなかったんですか?どうして?」

「ユミーナ様の許しを頂けるかも分からないし、それに…拒絶されたらと思うとな…」


 目を伏せるリエネにレピは、不安に思う必要はない、とばかりに笑った。


「繊細ですねぇ…。お許しはともかく、拒絶されることはないと思いますが」

「私もそう思ってはいるんだが、どうにも踏ん切りが付かなくて…」

「僕から言いましょうか?」

「い、いや…こういうのは自分で言ったほうがいいだろう」

「言えるのならそれでいいですが…大丈夫なんですか?」

「あぁ…この後話す、食べながらでも」


 ゴクリと唾を飲み、緊張で顔を強張らせながら、リエネは決意を固めるのと同時にスウォルが目を覚ました。


「おはよー…」

「やっと起きましたわ。おはようございます」

「おはよ。少なくとも寝起きは私のほうがいいでしょ?」

「あんだよ起き抜けに…ふぁ…あ」

「寝ぐせすんごいですわね…。まぁ直すのは後になさってくださいな。今は皆お腹減ってますもの」


 大きく欠伸(あくび)するスウォルを急かし、誘ってくれた町人の食事処に移動すると、快く迎え入れられ、五人で卓についた。

 その席でリエネは、食事を楽しむ四人に対し、モジモジとしながら切り出した。


「皆、食べながらでいい、少し聞いてほしいことがある」

「どうなさいましたの?召し上がりませんの?おいしいですわよ」

「いえ、いただきますが、その前に話しておきたいことが」

「リリニシア様、まずは彼女の話を聞きましょう」


 事情を知るレピが食器を置き、重要な話であることを悟った三人も、“食べながらでいい”にも関わらず、それに続く。


「済まない。…ユミーナ様に許しを頂く必要はあるのだが、それが得られたら…私を旅に同行させて欲しい」

「え!?」


 レピは微笑みを浮かべ、三人が声を揃える。

 最初に疑問を口にしたのはシェリルだった。


「それって、ハリソノイアを出ても…一緒に来てくれるってことですか!?」

「私はそうしたい」

「マジで!?リエネさんなら文句ねぇよ!」

「お待ちなさいスウォル。よろしいんですの?正直、他国ではハリソノイアの常識というか、価値観は受け入れがたいものだと思いますが」


 無邪気に喜ぶスウォルを制し、リリニシアは冷静に問いかけた。


「はい、あなた方と行動を共にして、そうなのだろうと痛感しました。そして“他国の価値観”というものに、私自身も触れてみたいと感じました。ユミーナ様の考えが理解できるかもしれない、と」

「そうですの。理解した上であれば、ワタクシも歓迎いたしますわ。レピさんもよろしいですか?」

「もちろん、心強い限りですよ」

「ありがとうございます。許しを得られれば、の話ですが」


 噛みしめるように礼を言った後、不安げに呟くリエネに、スウォルは笑って言う。


「俺たちも一緒に頭下げるよ」

「私も!嬉しいです、リエネさん!」

「シェリル…ありがとう」


 シェリルとリエネを見て、昨日までの様子と噛み合わないことを不思議に思ったスウォルは、リリニシアに囁いた。


「…なんか仲良くなってねぇ?」

「女の子には色々あるんですのよ」

「そんなモンかぁ」


 一行は食事を終え宿に戻ると、魔物撃破の報告とリエネ加入の打診、二つの目的を胸に、ハリソノイア城に向けて動き始めた。

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は6月23日20時にXでの先行公開を、24日20時に本公開を行う予定です。


~次回予告~

ユミーナの依頼をこなした一行は、いよいよハリソノイア城への帰路に着く。

やって来た経路をそのまま辿って帰るだけだが、“魔物を討った”一行に対する反応は、往路とはまったく異なるものだった。

旅路の末、久々に再会したユミーナに、リエネは意を決して自身の思いを語る。


次回「勇者一行の帰還報告」

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