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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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13/50

勇者一行と依頼の魔物

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

難航を予感しながらおずおずと“本題”、和睦を提案するリリニシアに対し、ユミーナは意外にもあっさりと参道を示す。

ただしそれは“個人”としてであり、“国”としてではないという。

国民を納得させる為、ユミーナは一行に国を脅かす強大な魔物の討伐を依頼した。


※25/5/25

あらすじの内容を訂正

 翌朝、一行は再び玉座の間でユミーナ、そして隣に控えるリエネと、昨日はなかった卓を挟んで対峙していた。


「おはようございます。寝心地は如何でしたか?」

「おはようございます、大王様。持って帰りたい程に素晴らしい寝具でしたわ」

「そう言っていただけてよかったです!拘って作らせましたから!」


 ヤクノサニユの姫君に拘りを認められてご満悦のユミーナは、挨拶を済ませると早速、大王直々の依頼についての説明を開始した。


「皆様にはこれより、ハリソノイア北東の防衛線に向かっていただきます。リエネ、皆様に地図を」

「はっ。こちらをご覧ください」


 リエネは前に出て、手にした地図をテーブルに広げる。


「こちらが現在地、そして目標地点がこちらです」

「遠いな~…あ、やべっ」


 思わずスウォルが声を漏らしてしまい、慌てて口に手を当てたが、ユミーナの耳にもしっかりと届いていた。


「そうなんですよね~。野蛮人しかいないのに土地だけは無駄に広くて」

「あ、あはは…」


 日を跨いでも切れ味の衰えぬ()()()に苦笑いを浮かべる一行に、リエネが続る。


「大王様から馬車をお貸しするとの事なので、移動の疲労はかなり軽減されるでしょう」

「馬車を?よろしいのですか?」

「はい!着いたけど疲れて戦えません、なんて言われても困りますので!」

「馬車かー!俺、馬車なんて初めて乗るぜ!」


 シェリルの問いに、ユミーナは大きく頷き、ハキハキと答える。

 初めての馬車に興奮気味のスウォルを諌めながら、レピはリエネに聞いた。


「落ち着いてください、スウォルくん。…この距離だと…片道で一月(ひとつき)ほどでしょうか?」

「そんなところです」

「え゛、馬車でもそんなに掛かんの!?」


 せっかくの興奮に水を刺されたスウォルが目を丸くする。


「というより馬車自体が、おそらくスウォルくんの考えている程速くはありません。馬の休憩などもあるので、短い距離ならともかく長距離となると、人が歩く速度と大差ありませんよ」

「なんだ、そうなのか…」


 肩を落とすスウォルを見て、ユミーナは笑いながら何度も頷いた。


「分かりますよその気持ち。私も最初ガッカリしましたもん。あと道中、宿は無料で使ってもらって構いません。私にツケてください。…それからもう一つ、リエネもお貸しします」

「リエネさん?」


 リリニシアがリエネに目線を移すと、当のリエネも驚いているようだった。


「わ、私ですか?」

「貴方です。リエネはこの国の…少なくとも、()()()()()()()()の中では最も強かったので、きっとお役に立つでしょう」

「リエネさんも、ユミーナ様に挑戦なさったんですか?」


 決意こそしたものの、魔物を殺せ、という依頼に気落ちし、挨拶以外に喋らずにいたシェリルが口を開いた。


「あら?リエネは話してないんですか?私を大王の座から引きずり降ろそうと挑んできて、返り討ちにあった一人です」

「…」

「リエネ、貴方は準備をしてきなさい」

「…かしこまりました」


 一瞬、ギリッ、と歯軋りを立て、しかしすぐに無表情に戻ると、一礼し、退室していった。

 リエネの背を見送ったシェリルは、ユミーナに質問した。


「あの…ユミーナ様は、これまでどれだけ挑まれて…?」

「人数ですか?数えてないのでなんとも」

「…リエネさんは、ユミーナ様に忠実なのかと思っていました」


 ユミーナはほんの一瞬、珍しく静かに考えるような顔を見せ、答えた。


「彼女が忠実なのは、私に対してではなく、()()()()()()()です」

「えと…?」

「私に挑み、敗れた。本来であれば負けた者は死にます。ですが勝者の私が殺さなかった。である以上、自分に逆らう権利はない。それがハリソノイアの流儀。…そんなところでしょう」

「…」

「愛しているんでしょうね、この国を」


 ユミーナはふぅ、とため息をつき、続けた。


「ハリソノイアを(たっと)ぶが故に、ハリソノイアの在り方を壊そうとしている私に従うより他ない。何故なら私も、ハリソノイアの流儀に従った上で壊そうとしているから。…皮肉な話ですね」

「リエネさん…」


 シェリルはリエネが出ていった扉を眺め、呟いた。

 次に質問したのはスウォルだった。


「あの、“本来は負けたら死ぬ”のに、なんでユミーナ様は殺さなかったんです?…あ、殺すべきと言いたい訳じゃないんですが」

「もったいないじゃないですか。生きてたら役に立つことがあるかも知れないのに、殺しちゃったらそれまでですよ?」

「も、もったいない、ですか」

「現にリエネなどは役に立ってくれていますし、正しかったと思っていますよ」


 今度はレピが聞く。


「何故、同行させると彼女に話しておかなかったのです?」

「その方が面白い反応見れそうじゃないですか」

「…」


 苦労してるんだろうなぁ、と、四人はリエネに同情した。


「失礼します。お待たせしました」


 しばらくの後、準備を済ませたリエネが、玉座の間に戻った。


「戻りましたね。それでは改めて、ハリソノイア大王、ユミーナ・クオシャーより皆様に依頼します。北東の防衛線へ向かい、魔物を討伐してください」

「はい!」

「…の前に、朝食とって行きますよね?」

「…」


 どこか緊張感のないやり取りの後、だが確かに腹は減るので食事をとり、街に出て必要な買い出しを済ませた後、五人はいよいよハリソノイア中央部を発った。


 やはりこれまでと同じく、村、町での休息や夜営を挟み、目的地へと近付いていく。

 その間も、やはりリエネが自ら喋ることはなく、聞かれれば最低限を答えるだけ。

 一行も気遣い、彼女自身について深く追及することはなかった。


 目的地に近付くに連れ騒がしくなっていき、前線に最も近い町では負傷者で溢れかえっていた。

 町の傍らには戦死者の亡骸が並べられており、如何に過酷な戦いかを一行に叩き付けた。

 この町から目的地は目と鼻の先。

 負傷者に話を聞くと、現在魔物は現れておらず、備えているところだと言う。

 一行は最後の休息をとり、翌朝出発することにして、宿に泊まり、眠りについた。


 その夜、日が昇る前──。


「…ん?なに…?」


 節約の必要もなくなり、女性だけの部屋で眠っていたシェリルは、寝惚けながらも微かに目を覚ます。

 枕元に置いた剣が、輝き音を立てていたからだ。


「…これって?」


 直後、地響きのような咆哮が響き渡った。

 残る四人も一斉に目を覚まし、同時に確信した。

 これが(くだん)の魔物であると。


 五人が宿を飛び出すと、いつの間にやら雨が降っていた。

 馬は咆哮にすっかり怯えてしまったようで、とても馬車を引かせられる状態ではなかった。

 馬と馬車、荷物を宿屋に任せ、五人は雨の中、自らの足で戦場へ向かうことにした。


 道中も咆哮は度々轟き、その度に人の悲鳴や怒号が聞こえるようになった。

 まもなく息を切らせた一行が辿り着いた時、そこには──見上げる巨躯の怪物がいた。


 大人の三倍はあろうかという身長。

 牛のような頭で、二本足で直立している。

 手足は太く強靭で、目は赤く輝いている。

 口許には──腰を咥えられ、手足をバタバタと動かしながら助けを求めるハリソノイア兵。

 彼の望みは叶うことなく、そのまま噛み千切られ、隔てられた上半身と下半身が地面に叩き付けられ、水溜まりを血に染めた。


 コイツは殺さなければならない魔物であると、シェリルすらも瞬時に痛感した。


「町で聞いた情報と一致する。間違いないな…。生存者は退け!ヤツは我々が引き受ける!!」


 リエネが背中の斧を握り、取り出しながら戦場のハリソノイア兵に叫ぶ。


「俺が前に出る!皆、殺されないことを最優先に動くんだ!!」


 スウォルが剣を抜き、叫ぶ。


「人が…!こ…こんな怪物と、戦わなければならないんですの…!?」

「落ち着いてください、リリニシア様。私と貴方の魔術でヤツに隙を作らなければ」


 怯えるリリニシアをレピが──自身も冷や汗をかきながら、それでも冷静に諭す。


「やらなきゃ…私が、守らなきゃ…!!」


 シェリルは震えながら、しかし自分に言い聞かせ──とうとう、魔物を相手に剣を抜いた。


 リエネの叫びで一行に気付いた魔物はゆっくりと首を向け、一行の姿を認めるともう一度、標的を定めたと言わんばかり、吼えた。

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は5月19日20時にXでの先行公開を、20日20時に本公開を行う予定です。


~次回予告~

長旅の末、とうとうユミーナに討伐を依頼された、“強力な魔物”と対峙した一行。

これまで相手どってきた魔物とは比べ物にならない怪物を相手に、一行はどう戦うか。

そしてシェリルの“覚悟”は──。


次回「勇者一行の初めての大敵」

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