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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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12/49

勇者一行と大王様の依頼

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

リエネの案内により、20日間の道のりを経てハリソノイア中央部に辿り着いた一行は、ついに大王ユミーナ・クオシャーと謁見する。

自分たち客人に対するおおらかさとリエネに対する冷たさに怯えながらも自己紹介を済ませると、ユミーナは本題に入ると宣言した。

 “本題に入る”というユミーナの宣言に、四人はゴクリと生唾を飲む。

 リリニシアがおずおずと切り出した。


「リエネさんからお聞きになったかも知れませんが、ワタクシどもは和睦を打診したく、こうして伺わせていただきました」

「和睦ですか。ヤクノサニユとは…というか他国はハリソノイアに対して、いい感情を持ってはいないと認識していますが」


 ユミーナは値踏みするように目を細める。


「確かに魔物が活性化する以前は、我々ヤクノサニユは西のティサン、東はマキューロと結び、ハリソノイアからの侵攻に対抗しておりました。ですが活性化以来、魔界に隣接するハリソノイアが防波堤になってくれていることと、防衛に戦力を回す為、他国への侵攻が大きく減ったことも事実です」

「…」

「そして今回の大王様の交代。お祖父様…ヤクノサニユ王ゼオラジムは、今こそ人類(我々)が手を結ぶ好機なのではないかと考えております」


 臆することなく、ハキハキと言葉を紡ぐリリニシアに感心した三人が横目で見ると、少し脚が震えていた。


「い、いかがでしょうか」

「いいですね!!」

「え!?即答!?」


 渋るユミーナを説得する──そんな展開を思い描き、頭の中で言葉を探していたリリニシアは、ニッコリと笑う想定外の反応に、反射的に答えた。


「え、いけないのですか?」

「あ、その、少し驚いてしまって…申し訳ありません」

「まぁ、ハリソノイアに対する印象を思えば仕方ないかもしれません。素晴らしい提案だと思いますよ、私は」

「で、では…」

「ですが──」


 ユミーナはリリニシアを遮った。

 表情からは笑みが消える。


「そう簡単にはいかないでしょうね」

「え…な、何故ですの?」

「リエネから聞いていませんか?国民の大半は私を受け入れていないと」

「…いえ」


 (ここ)までの道のりで聞いた話を思い出す。


「私個人としては大賛成です。ですが、国全体としては…私がそうすると決めることは出来ますが、素直に従ってくれるかは疑問です」

「…」

「時間があるなら反対する者を全員ブチのめして回れば済む話ですが、そういう訳にも行きませんので」


 国民の大半をブチのめして回る選択肢が存在することに戦慄する四人に、ユミーナは再び笑顔を見せ、続ける。


「…ですので、皆様に一仕事していただこうかと思います!」

「一仕事…ですか?…ま、まさか代わりにブチのめして回れと!?」

「あはは!そうしてくれても構いませんが…もっと現実的な方法です」

「というと…?」


 どんな無茶ブリをされるのか、リリニシアはビクビクしながら続きを促した。


「仰られる通り、現在魔物からの防衛はハリソノイアが一手に担っている状況です。前任者…というか、ウチの国民はくだらない意地だの誇りだので他所に助けを求めようとしませんでしたが、現実は厳しいというのが実情です」

「…」

「そこで、私が大王として正式に、皆様に助力を依頼します」

「依頼…!」


 再び唾を飲み込み、“依頼”を待つ。


「近頃、強力な魔物が現れるようになり、防衛が崩されかけています。兵を集め抵抗していますが撃破には至らず、追い返すのがやっと、という状況です」

「…」

「当然、一度追い返して終わりではありません。少ししたらまたやって来ます。犠牲者も多く出ていますし、他の防衛もあり、あまり一ヶ所に戦力を集めることは出来ません」

「つまり、ワタクシたちへの依頼とは…」


 察したリリニシアが、ハキハキと喋っていたさっきまでと違い、声を震わせながら聞いた。


「はい。その魔物を討っていただきたいのです」

「…!」

「その後、私から国民に“伝承を受け継いだ勇者の活躍”を、ハリソノイアにおいて何より尊い“強者”として喧伝します。上手く行けば、“協力することで旨みがある”という認識を植え付けることも出来るかもしれません」


 リリニシアは、シェリルにチラリと目をやった。

 さっきの自分とは比べ物にならないほど、カタカタと震えていることに気が付いたからだ。

 その横でレピが手を挙げた。


「お伺いしたいことが」

「どうぞ!」

「道中、リエネさんから聞いた話も含めて、大王様は他のハリソノイア人の方とは、ずいぶん考え方が異なるようですが…そんな方が何故、前任者を討ってまで大王に?」

「私としてはむしろ、()()()()()という認識ですかね?」


 発言の意図を図りかね、首を傾げるレピに、ユミーナは続けた。


「正直どう思います?ハリソノイア。野蛮じゃないですか?」

「え…と」


 国の長から放たれる余りに直球な自国批判に、レピはどう答えていいものか分からず、言葉に詰まる。


「だって他所を攻撃して領土広げて、大王だって殺されたら交代、強いヤツが正義だー!って。バカみたいじゃないですか?」

「…それが、何故“だからこそ”に?」


 下手に藪をつつかないよう、レピは答えずに続きを促した。


「レピさんの仰る通り私、ここだと()()()なんですよ」

「…」

「ってことは、他の誰かに任せて放っておいても、異常者(わたし)にとって住みやすい国になることはないじゃないですか」


 自らを臆面もなく“異常者”と言ってのけたユミーナだが、その力強さには“自分こそが正しい”という確信が見て取れた。


「…」

「最初は他国(よそ)に移り住むことも考えたんですけど、どこに行ったってハリソノイアが攻撃してくるかも知れないじゃないですか」

「それはまぁ、はい」

「幸いなことに私強いんで。“ハリソノイアの流儀に従って乗っ取ってから改造しちゃえば文句ないっしょ”って。メチャクチャ言われてますけど」

「な、なるほど…ではもう一点」


 軽い口調から繰り出される強烈な発言に、レピは顔を引きつらせながら続ける。


「ユミーナ様がまさに“何より尊い”はずの強者なのでは?」

「その強者に国民が文句言ってんのはおかしいじゃないか、と?」

「というより、無事にご依頼をこなし、我々を強者と喧伝したとして、お考えほどの効果があるのか…という疑問です」


 レピの疑問を受け、ユミーナは深く頷いた。


「ご指摘はもっともです。実際のところ私も、先代を殺し、私がこの椅子に座ればケチつけられることもないとタカを括っていましたが、現実はこうですから」


 窓の外に視線を移し、ため息混じりに語る。


「そういう意味で、確かに強者こそ絶対、ではないようです。が、それでも私と皆様とでは、決定的な違いがあります」

「というと…」

「単純な話です。私はハリソノイアの有り方を破壊しようとしている()な一方、皆様は意地や誇りを託し、魔物に苦しんでいるハリソノイアを救ってくれる()()になり得る、という点です」


 人差し指を立てて説明するユミーナに、黙って聞いていたスウォルが思わず声をあげた。


「え、ユミーナ様って敵なんすか!?」

「まさか、ハリソノイアをよりよくする為に動いてますよ。これは民からの印象の話です」

「へぇ~…。大変なんですね、王様ってのも」

「本っ当に!こんなことなら──っと、皆様に愚痴っても仕方ありませんね。レピさん、回答としては十分でしょうか?」


 思わず溢れかけた本音を慌てて封じ、ユミーナはレピに質問を返す。


「えぇ、ありがとうございます」

「では、依頼はお受けいただけますか?」


 ユミーナが改めて一行に問うと、スウォルは姉を庇うように、一歩前に出て答えた。


「少し、お時間をいただけませんか」

「…あら?即答していただけるかと思ったのですが」

「その…」

「スウォル」


 口ごもるスウォルの肩に手を置き、シェリルが震えた声で制した。


「姉ちゃん?」

「大丈夫。…大王様、その依頼お受けします」


 その夜──。


「大丈夫なのかよ、姉ちゃん」


 翌朝の出発に備え、一人に一部屋を割り当てられ、休むことになった四人だったが、リリニシアの部屋に集まっていた。

 スウォルは姉に問う。


「スウォルが言ったんじゃない。“倒さなきゃいけない魔物もいる”って」

「そりゃ言ったけどよ…」

「何人も犠牲になってるんでしょ?もしハリソノイアが突破されたら、ヤクノサニユだって危ない。…父さんを守らなきゃ」


 リリニシアは冷静に頷く。


「確かに聞いた限り、“倒さなきゃいけない”部類の魔物ですし、ユミーナ様のお考えも合理的ではあると思います」

「ですが…魔物はシェリルさんの剣でなければ…」


 レピは言いづらそうにシェリルを見ながら、しかし言わねばならぬと決意し、そう口にした。

 静寂が部屋を満たす。


「…そうです。私が、やらなきゃ」


 絞り出すようなか細い声と共に、シェリルが頷くと、再び全員が沈黙した。


「ま、まぁいざとなればよ!俺がバシッ!と死ぬまで殺してやるから!」


 気まずい沈黙を嫌ったスウォルが、似つかわしくない明るい声で笑うと、リリニシアも乗っかる。


「そ、そうですわよ!別にシェリルの剣以外に手段がない訳ではありませんし!」

「二人とも…ありがとう。でも大丈夫、私がやる。私がやらなきゃ…!」


 足手纏いになりたくないから。

 震える手を抑え込むように握りしめ、シェリルは呟いた。

 一方レピは、そんな三人を見ながら一人、別のことを考えていた。


 今度の戦い、僕が加わってから初めての、魔物との戦い。

 そこで見えるかも知れない。

 シェリルさんの剣に掛けた魔術が制御を超え、想定外の力を発揮した理由が──。


 四人は“強力な魔物”との戦いに向け決意を新たにし、各自の部屋で眠りについた。

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は5月12日20時にXでの先行公開を、13日20時に本公開を行う予定です。


~次回予告~

翌朝、再びユミーナと面会し、改めて依頼の説明を聞く一行。

ユミーナは「挑んできた者の中で最も強かった」というリエネを貸すという。

五人で向かった目的地で出会った魔物は──。


次回「勇者一行と依頼の魔物」

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