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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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10/50

勇者一行とお出迎え

閲覧いただき、ありがとうございます。

みそすーぱーです。


~前回のあらすじ~

ハリソノイアの関所で、兵からハリソノイアの状況や価値観、そして混乱の原因が交代したばかりの大王、ユミーナ・クオシャーであることを聞き出した一行は、関所を離れ近くの町へ向かった。

その途中、レピはリリニシアの魔術の才を絶賛し、自らが手解きをすると告げる。

町へ辿り着き、宿で一晩を明かした一行の前に現れたのは──。

 仲間の中でもっとも早く眠りについたシェリルは翌朝、部屋の扉が叩かれる音に目を覚ました。


「ん…くぁ…。ふぁい…」


 欠伸を噛み殺しながら起き上がり、扉に向かう。

 開けた先には、一人の女性が立っていた。


「朝から失礼。ヤクノサニユ王、ゼオラジム…様のお孫さんとは君のことだろうか」

「…あなたは?」


 ハリソノイアの地で、リリニシアを探す突然の来客。

 よく見れば彼女は背に大きな斧を背負っている上、一人ではなく、複数人──それも武装した兵を、見えるだけで三人、引き連れている。

 仲間は全員寝ている上、自分の武器装備も枕元に置いたまま。

 もし敵襲なら──?

 寝ぼけていたシェリルの頭は急激に覚醒していった。


「そうだな。私はリエネ・セキュトノク。最寄りの関所で、ヤクノサニユ王の遣いがいらしていると聞いた」


 リエネと名乗る女性はそう言うと、廃村や関所の方角を親指で指した。

 明らかに訝しむシェリルに敵対の意志がないことを示すように、空いているもう片手も広げ、ヒラヒラとはためかせた。


「そう警戒しないで欲しい。君たちを迎えに来た」

「迎え…?」

「あぁ。それで確か…リリニシア、とか言っていたか。君のことか?」


 確かに関所で名乗っていた。

 少なくともここまでの話に嘘はなさそうだと判断したシェリルは、外から中の様子を伺えるよう、少し身をよじった。


「…いえ、リリニシアはまだ眠っています。他の仲間も。少しお時間をいただけますか」

「分かった、外で待つ。急ぐ必要はない、君たちからすれば急な話だろう。出立の準備が出来たら出てきてくれ。…出よう」


 リエネは頷き、連れている兵を引き連れ、去っていった。

 シェリルは自らの身支度をしながら仲間を叩き起こし、寝ぼけて事情を掴めない一行に、すぐに準備をするよう言い付けた。

 準備が整ったのは、リエネの来訪から30分ほど過ぎてからのことだった。


「それで、どういう状況なんですの?」


 スウォルたちの部屋から戻ってきたシェリルに説明を求めても、全員が起きてからまとめて説明すると突っぱねられたリリニシアが、満を持して、目を擦りながら聞いた。


「食べながら聞いて。昨日の関所で私たちのことを聞いたっていう、ハリソノイアのリエネって方がリリニシアを…というか、私たちを尋ねて来たの」

「あぁ…誰も死んでないんですから、それは伝わりますよね…。言われてみれば当たり前の話ですが、盲点でしたね」


 気付かなかったことを悔いるように呟くレピに、スウォルは食事を口に運びながら答える。


「だからって殺す訳にも行かないですけどね。少なくとも向こうからすりゃあ、俺ら敵だもんな…」

「町の場所まで聞いてますものね。にしても早い気がしますが。…では、そのリエネさん?は報復にいらしたのですか?」


 リリニシアがシェリルに聞くと、“報復”という単語を聞いたスウォルとレピの顔が強ばる。

 だがシェリルは、首を横に振った。


「それが、本人は迎えに来たって言うの」

「迎え?」


 三人が声を揃えた。


「“ヤクノサニユ王の遣い”を迎えにって」

「…どういうことだ?なんでハリソノイアのヤツが…」

「それ以前に、()()からの迎えなんでしょう?」


 スウォルとレピが立て続けに疑問を口にする。


「もしかして、お祖父様が話を通してくださったのかしら?」

「それならそう言うんじゃないかな。ただ、準備に時間をくれって言ったら、“急がなくていい、外で待つ”って」

「襲いに来た訳ではありませんの?」

「分からないけど、たぶん…?ただ、武装した人を何人も連れてたわ」


 応対したシェリルにも、それ以上の詳しいことは分からない。

 考えても無駄だと結論付けた一行は、食事を終え次第、直接リエネに話を聞くと結論付けた。

 一行が宿を出たのは、集合からさらに30分後のことだった。


「すみません、お待たせしました」


 宣言通り、宿の出口で待機していたリエネに、唯一面識のあるシェリルが声を掛けた。


「いや、構わない。君でないのならリリニシアというのは…貴方か」


 リエネは出てきた四人を一通り眺め、初めて見る三人のうち、唯一の女性で目を止めた。


「えぇ、如何にもワタクシがリリニシアですの」

「ヤクノサニユ王のご令孫(れいそん)だとか」

「それも間違いございませんわ」

「そうか。では──」


 リエネが言葉を切り、一行に緊張が走る。


「先日は我が国の兵がご無礼を」


 だがリエネは、謝罪の言葉と共に頭を下げた。


「あら…?」


 リリニシアは拍子抜けし、気の抜けた声を漏らした。

 姿勢を維持したまま、リエネは続ける。


「隣国からの使者、それも国王のご令孫に対する無礼をお許しください」


 気が付けば町人の注目を集め、周囲がざわついていた。

 リリニシアが一瞬仲間たちに目配せすると、三人は“任せる”とばかりに頷いた。


「お顔を上げてくださいな。こちらに怪我人も出ませんでしたし、気にはしておりませんわ」

「寛大なお言葉、感謝いたします」


 言葉に従い、リエネは姿勢を戻した。


「それで、リエネさんはワタクシたちを迎えに来たのだと伺いましたが?」

「はい。ハリソノイア大王、ユミーナ・クオシャーの元へご案内いたします。では──」

「お待ちくださいな。気にはしておりませんけれど、昨日のご対応とあまりに掛け離れていて混乱してますの。ご説明いただけますこと?」


 早速歩き始めようとするリエネを制する。


「そうですね、失礼いたしました」

「まず、リエネさんはどういったお立場の方なんですの?」

「…大王直属の私設部隊にて、部隊長を務めております」


 リエネは少し間を空け、目を伏せながら答えた。


「部隊長!?おエラい方ですのね!?」

「まぁ、はい。立場で言えばそうなるかと」

「それで何故、部隊長が自ら?私設部隊であるのなら、主の側を離れてはマズいのではなくて?」

「護衛、という意味なら不要です。大王のほうが…強いので」


 再び間を空け、どこか苦々しそうに答えた。


「そ、そうですの…。関所では、中央部まで“歩いて一ヶ月”と伺いました。それが昨日のことです。大王様からのお迎えにしては、情報の伝達が早すぎませんこと?」

「厳密に言えば、大王から迎えを指示された訳ではありません」

「…どういうことですの?」


 これまでの説明との食い違いに、リリニシアが眉をひそめた。


「ご存知かも知れませんが、ハリソノイアでは先日、大王が代わり、ユミーナ・クオシャーがその座に着きました」

「それは伺いましたわ」

「ユミーナ大王は先代と方針を変え、他国との外交を尊重するとしています」

「えぇ、それも伺ってます」

「それに伴い、“使者の来訪などがあった際には無条件で案内しろ”との命を受けております」

「…無条件は危険なのでは?」

「大王は、その…最悪、襲われても殴り倒せばいいと考えておりますので」

「…なるほど」


 さすがハリソノイアの大王と、リリニシアは内心、引きながらも納得した。


「私どもは偶然、昨日あの関所に見回りに行きました。皆様が()たれた後のことです。そこで皆様がここに宿泊されると聞き、お迎えに参りました」

「ふむ…」


 顎に指を当て、情報を整理しながら聞く。


「ご納得いただけましたでしょうか」

「いえ、一つ疑問が残ります。“無条件に案内する”のが王命なら、昨日の関所でのご対応はおかしいのではなくて?」

「…お恥ずかしながら、大王の急激な方針転換に納得が行かぬ者もおりまして。昨日の件は言わば、()()()()()です。重ね重ね、申し訳ございませんでした」

「いえ、謝らせたい訳ではなかったのですが」


 リリニシアとしては一通り、聞いておきたいことに対する回答を得たので、仲間に視線を移し、委ねた。


「俺はなにも」

「うん、私も」

「案内を頼めば、今後の“現場の暴走”は避けられそうですしね」


 三人とも異論がないことを確認すると、リリニシアはリエネに向き直った。


「…とのことですので、ご案内をお任せいたしますわ」

「かしこまりました。長い道のりになります、早速参りましょう」

お読みいただき、ありがとうございました。

温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は4月28日20時にXでの先行公開を、29日20時に本公開を行う予定です。


~次回予告~

リエネの案内の元、ハリソノイア中央部へと向かう一行。

長旅の中、一行はリエネの人物像を掴みはじめていた。

ようやく中央部に辿り着き、王城へ向かうと、ついにユミーナ・クオシャーとの対面を果たす。


次回「勇者一行とハリソノイアの大王様」

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