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短編小説どもの眠り場

濁りき日々

作者: 那須茄子

 そこはいつもと変わらない灰色の空に包まれていた。ビルの谷間を歩く人々の顔には、どこか疲れた表情が浮かんでいる。

 彼らは皆、同じような日々を繰り返しながら、何かを追い求めているようだった。


 私も、その一人だ。

 

 毎朝、同じ時間に起き、同じ電車に乗り、同じオフィスで働く。仕事は忙しく、終わりの見えないタスクに追われる日々。心には、次第に疲労と虚無感が積もっていく。


「何のために生きているのだろう?」と、私は心の中で問いかける。しかし、その問いに答えはない。ただ、無言のまま時間が過ぎていくだけ。


 やがて、目覚まし時計の音が鳴る。その音は、一日の始まりを告げるものであり、同時に終わりのないループの始まりでもある。

 今日も目覚まし時計が鳴る前に起きた。この頃どうやらあまり眠れていない上に、よく何かに追われる夢を見るのだ。私は憑かれているのだろうか。何に。


 ふっと、頭を振りかぶる。もうそろそろ準備をしなきゃ遅刻してしまう。


 ベッドから起き上がり、鏡の前に立つ。そこに映る自分の顔は、疲れ切った表情で、周りの雑多な色からも冷たく浮いている。



「このままでいいのか?」


 再び心の声がする。


 続けて今度は、二つの声があった。


 一つは、現実を受け入れ、ただ流されるままに生きることを勧める声。

「これが大人になるということだ。皆、同じように生きているのだから」と、甘く囁く。


 もう一つは、変化を求める声。

「本当にこれでいいのか? もっと自分らしく生きる道があるのではないか?」と、声高に迫る。


 私は、そのどちらの声にも答えを出せずにいる。まるで深い霧の中を彷徨うように、ただただ湿っぽい孤独感が募るばかりだ。





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