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「お母さん!」
「………あら。
あんたたちこんなとこにいたの。
寒いでしょ。
まだ帰らないの?」
「うん。
もう帰る…。
先に帰ってて」
「暗いから気をつけてね。
今日はすき焼きにしたからね」
「は~い」
おばさんはヒマワリを連れて、帰っていった。
「…今、見られてなかったよね…?」
奈々ちゃんが同意を求めるように訊いてくる。
「うん…たぶん……」
俺は曖昧な返事しかできなかった。
まあ、いつかはばれるだろうし。
しかし、今のでせっかくの雰囲気がぶち壊れたな…。
残念だけど、仕方ない。
「おばさんには、俺たちのこと言わないの?」
「うん…ちょっと恥ずかしくて…
でも、今日帰ったら訊かれそう……。
そしたら言うかな。
言っても大丈夫かなぁ?」
「うん…たぶん大丈夫なんじゃないかなぁ。」
俺は朝のおばさんとの会話を思い出す。
あれは、たぶん、結構前から俺たちの気持ちに気づいてたってことじゃないかな。
そして『安心だわ』と言ったってことは、きっと…。
「大丈夫だよ。きっと」
俺は奈々ちゃんを安心させるように、そう言って明るく笑った。
「…うん!」
彼女は元気に頷いた。
「そろそろ、帰ろうか」
「そうだね」
俺たちは、奈々ちゃんの家まで、しゃべりながら手を繋いで帰った。
公園から家までの5分の距離が、いつもよりさらに短く感じた。