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戦利品を抱えてゲーセンを出る頃には、夕方5時をまわっていた。
いつもと同じようなデートコースだったけど、奈々ちゃんと二人の時間はすごく楽しくて、いつもよりもすごくドキドキして、本当にあっという間だった。
俺たちは家の近くの公園まで帰って来て、冷たい石のベンチに腰を下ろした。
公園はかなり寒かったけれど、もう少しだけ奈々ちゃんと一緒にいたかった。
自販機で買った温かいココアを飲みながら、体を温める。
「今日は楽しかったね~」
「本当、楽しかったね。
でも、ちょっと疲れたね」
「うん。
あちこち歩き回ったし、ぬいぐるみもとってもらったし、プリクラも撮ったし…
ちょっと遊び過ぎたね」
そう言って、奈々ちゃんはペロッと舌を出して笑った。
「そうだね。
かなりお金も使ったしね。
だけど、すごく楽しかった」
俺も微笑み返す。
今日のデートを振り返って、二人で楽しくしゃべっているうちに、辺りはすっかり暗くなっていた。
公園のほのかな街灯の灯りが、奈々ちゃんの顔を淡く照らしている。
そろそろ6時半。
帰らないと、おばさんが夕飯を作って待ってる頃だ。
俺と一緒だから、心配はしてないだろうけど。
そんなことを考えていると、奈々ちゃんがぽつりと言った。
「そろそろ、帰らないとね…」
「そうだね」
「でも、まだ帰りたくないな…」
奈々ちゃんも俺と同じことを考えてる…。
ふと、二人の間に沈黙が降りる。
俺は、すっかり冷えてしまったココアを一気に飲み干すと、コトンと横に置いた。
うつむいている奈々ちゃんの右手に、そっと自分の左手を重ねて、冷えた彼女の手を温めるように包み込む。
奈々ちゃんの瞳が下から見上げてくる。
俺は、その瞳に吸い寄せられるように、ゆっくりと顔を近づけていった。
彼女がそっと瞳を閉じる。
街灯の灯りに照らされた二人の影が、寄り添ってやがて重なる…。
………その時、近くで犬の鳴き声がして、ドキッとして振り返ると、奈々ちゃんのお母さんがヒマワリの散歩をしていた。
(ヒマワリは奈々ちゃんの家で買ってる柴犬だ)
俺たちは、慌ててパッと体を離した。