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5/10

奈々ちゃんの用意ができたので、俺たちは二人仲良く並んで家を出た。


11月も終わりに近づき、外はかなり寒かった。


「…で、どこにいく?」


「えっと…映画とか?」


「映画かぁ。久しぶりだね。

今、なんかおもしろいアクションものでもやってるの?」


「…………ラブストーリー」


ブッ


俺は吹き出した。


「ラブストーリーとか、奈々ちゃん絶対寝ちゃうでしょ。

…どうしたの?

今日はなんか変じゃない?」


「だって………。

初めてのデートだし………」


あ!

そう言われて、俺はやっとピンときた。

我ながら、鈍いにも程がある。


なるほど。

これはデートなのか。

そう言われてみれば確かに、付き合ってる二人が出かけるんだから、デートだよね。


もしかして…奈々ちゃんは、俺との初めてのデートだから気合い入れてたの?

だから、慣れないスカート履いたり、映画に行こうとか言い出したんだ…。


………かわいい。


奈々ちゃんがそんな女の子っぽいことを考えていたなんて、感動すら覚える。

俺は、奈々ちゃんが今日の服を選んでるところを想像して、ちょっと笑ってしまった。


きっと、俺のためにかなり頑張って着てくれたんだろうな…。

奈々ちゃんのこういうとこが、かわいいんだよね…。

胸の中がざわざわしてキュンとなる。


あ~…ちょっと…タイム。

俺は深呼吸を繰り返して、乱れまくった心を落ち着けた。




……しかし、奈々ちゃんがラブストーリー…


前に一度見に行ったら、彼女は横でぐっすり寝ていた。

俺は、その話にすごく感動したんだけど…。



「…別に、無理してラブストーリー見ることないんだよ?

デートだって、二人がしたいことをすればいいんだから」


「そうなの?

じゃあ、本屋で立ち読みとか、マックでお昼食べたりとか、ゲーセンとかでも…いいの?」


「もちろん。

でも、それだと本当にいつもと一緒だね」


奈々ちゃんらしくて俺はつい笑ってしまった。


「そうだね…。」


でも、奈々ちゃんはしゅんとしてしまう。


俺は、奈々ちゃんを元気づけたくて、彼女の手をとって自分の指を絡ませた。

いわゆる、恋人つなぎってやつだ。


「でもこれは、幼なじみじゃやらないよね。」


奈々ちゃんの手をぎゅっと握って笑いかける。


奈々ちゃんはちょっと赤くなって、俺の手をきゅっと握り返すと、まるで花がパッと咲いたように、とっても嬉しそうに笑った。


だから…そのかわいさは、反則だから…。

マジで、勘弁してほしい。

今日の奈々ちゃんは、いつもより素直で女の子っぽくて、こっちはかなり心臓に悪い。

俺は、いつも元気な奈々ちゃんが大好きだけど、時々こういう女の子っぽいしぐさをする奈々ちゃんに、どうしようもなく胸がキュンとしてしまうんだ。



手をつないだのも、小学校以来…。

奈々ちゃんの手って、こんなに小さかったっけ。

それに、なんかやわらかい。


いくら幼なじみでいつも一緒にいるといっても、今までは片思いだと思っていたから一線引いていた部分があった。


だけど今は、それも簡単に飛び越えられる。

俺たち、恋人同士なんだよね…。

手をつないで、はっきりと実感する。


行く場所はいつもと同じなんだけど、なんだか色んなことが一々新鮮で、おかげで、朝から俺の心臓は高鳴りっぱなしだ。


「今日、かわいいね。

デートだからおしゃれしたの?」


「うん……。

でも、ズボンにすれば良かったかな…。」


奈々ちゃんは落ち着かないようだ。


「俺は…、スカートの方が好きかなぁ。

かわいくて。

いつもの奈々ちゃんも、もちろん大好きだけどね」



そう言うと、奈々ちゃんは、ちょっぴり照れくさそうに笑った。


顔にあたる風は冷たかったけど、繋いだ手から奈々ちゃんの温もりが伝わってきて、俺の心はほかほかと温かかった。

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