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俺は、そ~っと奈々ちゃんに手を伸ばし、頭を何度か撫でてみた。
奈々ちゃんは、寝息を立ててぐっすり眠っている。
そのまま今度は、ほっぺたのなめらかな感触を確かめてから、人差し指でつんつんと唇をつついてみた。
奈々ちゃんのぷっくりふくらんだ赤い唇が、ちょこっとだけ開いている。
そこからもれる、規則正しい温かな吐息………。
このままキスしたら、起きるのかな?
試しにそっと、顔を近づけてみた。
奈々ちゃんの吐息が、俺の唇にあたる。
目を閉じてると、いつもよりも幼く見えるなぁ。
子どものようなあどけない顔で眠っている彼女に、自然と笑みがこぼれる。
俺はそんな彼女をしばらく見つめてから、ゆっくりと顔を近づけていった。
唇が、後少しで触れる…
その時、奈々ちゃんの手がぴくっと動いて、ゆっくりと瞳が開く。
「…………………」
奈々ちゃんは、まだ覚醒していないのか、至近距離の俺の顔をぼーっと見ている。
「……………おはよう……奈々ちゃん………」
俺は内心焦りながらも、さわやかに笑ってごまかした。
「………央…太?
今………なにを………」
「ん?」
「『ん?』……じゃない!
今、キスしてたでしょ~!」
あ、やっと覚醒したね。
奈々ちゃんは口を抑えて真っ赤になってる。
「キス?してないよ?」
「……じゃあ、なんでこんな目の前にいるのよ!」
「キスしようと思ったから。
でも、未遂だよ?
後少し寝てたらできたのに、残念」
「!!
…央太のエッチ!」
「…男はみんなエッチだよ?」
「うぅ………開き直るな~!!!」
「ははは」
奈々ちゃんは真っ赤な顔で怒ってる。
それがかわいくて、もっといじめたくなってしまった。
「あ、いいこと思いついた。
これから毎朝、キスして起こすのはどうかな?」
「なにいってんの!
もう!
バカバカ!!
エッチ!!!」
「嫌なら、俺がくる前に起きればいいんだよ」
「…………。
絶対、起きるもん!!」
ますます赤くなった顔で奈々ちゃんは宣言した。
月曜日が、ちょっと楽しみだ。
キスでおこすというのは、半分冗談で言ったけど、もう半分は本気だった。
たぶん奈々ちゃんは、キスされないように一生懸命早く起きるんだろうけど。
俺は、そんな奈々ちゃんを想像して、ちょっとへこんだ…。