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食欲の錬金術師〜草しか食べれないエルフは禁断の錬金術に手をかける〜  作者: シュガースプーン。


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第57話 グラコロ

 翌日のお昼は約束通りにフォルテはグラタンコロッケバーガーを作っていた。


 昨日の夜のうちにもう一度仕込んでおいたグラタンソースを雪の降る外に放置して凍らせてある。


 勿論ただ放置するだけでは無く雪にあたらないようにだとか衛生面だとかには配慮はしている。


 その凍ったグラタンソースに小麦粉、卵、パン粉を付けてコロッケと同じように揚げればグラタンコロッケは完成である。


「グラコログラコロ〜」


「フォルテ様、ご機嫌ですね」


 フォルテと並ぶようにしてグラタンソースをコロッケの形に整えていたレイアがフォルテの様子を見てつぶやいた。


「グラコロの季節になれば人々は浮き足立つのだ」


「グラコロの季節?」


「そうだ。昨日のグラタンは美味かっただろう? あれが変身して美味しくなるのだ」


「それはとても楽しみです!」


「「グラコログラコロ〜」」


 フォルテとレイアは完成が待ち遠しい思いを同じように鼻歌に乗せて楽しそうに作業をしている。


 2人の姿を、微笑ましそうに見ながらヤコブは小麦粉をこねていた。


 今回、ヤコブはフォルテに任されてバーガー用のパンを任されている。

 フォルテに教えられた形をイメージしながら、グラコロバーガー用のパン、バンズを一生懸命作っていく。


 鼻歌を歌っているフォルテとレイアだが、グラタンコロッケ作りはスピード勝負だ。


 凍っているソースが溶けてしまう前にパン粉を付けて揚げなければいけない。


 フォルテはレイアに小麦粉、卵、パン粉の順番を指示すると、パン粉がついて準備ができた物を鍋の周りを滑らせるようにして揚げていく。


 油の温度は少し低めの170℃でゆっくり色がつくまで揚げていく。


 一度揚げは少し色が変わる程度。

 この後バンズに挟む時にもう一度揚げてサクサク感をだす為に油を切っておく。


 待っている間にキャベツの千切りをするのだが、今回はレイアに練習させてみる。


 自分がやったり、スライサーを使えば速いのだが、料理に興味を持っているレイアに色々と料理をさせてあげて、上達して欲しいという思いもあった。


「難しいです、フォルテ様!」


「ははは! なんだその太さは。ゆっくりでもいい。猫の手を忘れずに細く切ってみろ」


「頑張るぜ!」


 集中しているからか、気おつけて使うようになっている敬語が崩れている。


 フォルテは慎重に千切りを行うレイアを、隣で千切りがしやすいようにキャベツの芯を切り外して一枚ずつ重ねながら見守っている。


 時間はかかったが、レイアが切り終わったキャベツが水にさらされている物を見ると、いい感じの細さに切ってあり、レイアの丁寧さがわかる。


 ちょうど、ヤコブのバンズも焼き上がったようなので、二度揚げの為に油を温め直す。


 温度が上がるまでの間に、キャベツの千切りを少量水気を切って、小皿に取り分けて少しだけマヨネーズをかけると、フォルテはレイアの前に差し出した。


「お前が頑張ったキャベツを食べてみろ」


 レイアは小皿のキャベツを一口で口に入れると、ゆっくりと噛みしめる。


 シャキシャキとした食感の音がフォルテにも聞こえてくる。


「細く切ったのに歯応えがしっかりあって甘い?」


「キャベツの切る方向を線維に沿って切ったからより歯ごたえが出るんだ。ただ、細くキレてないともそもそしてしまうから、その歯ごたえが感じられるのは上手く切れた証拠だ」


「うん!」


 フォルテの褒める言葉に、レイアは嬉しそうに笑顔を作った。


「それじゃ、グラコロバーガーの仕上げをするぞ! ヤコブも手伝え」


「はい!」


 ヤコブの焼いたバンズを半分に切り、下のバンズにマヨネーズソースを塗ってキャベツの千切りを置く。


 その上にグラタンコロッケを置いて、ソースをかけたら、上のバンズを乗せて完成だ。


 もちろん、一個づつで足りる訳はないので、たくさん作っていく。


 厨房からは、楽しそうなフォルテとレイア。それから恥ずかしそうなヤコブの「グラコログラコロ〜」と歌う声が響いていた。

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