第55話 マカロニ
フォルテ達は国境直前の町で足止めを食らっていた。
理由は、国境につながる道が、吹雪により閉ざされており、通行が出来るようになるのを待っているのだ。
そんな国外れの国境近くの町で、フォルテは鼻歌を歌いながら小麦粉をこねていた。
「ご機嫌ですね、フォルテ様」
フォルテの向かいにいるヤコブが話しかけた。
「まあな。普通の宿じゃなく、こうやって一軒家を借りられたのはラッキーだったな」
フォルテ達が今止まっている場所は、王族が国境を越える時に今回のように雪で行けない場合に泊まる事になる別荘のような邸宅である。
今回は、その邸宅を使わせてもらえる事になり、今はフォルテとヤコブ、それからレイアはキッチンで調理をしていた。
ケミーニアは、今のうちにやっておきたい仕事があるらしく、書斎に籠っている。
「お、上手いじゃないか、レイア」
「こ、これくらい簡単だぜ!」
フォルテに褒められて顔を赤くするレイアは、その後も黙々と同じ作業を続ける。
3人が行っている作業は、こねた小麦粉を一口大にカットして細い棒に巻きつけて形を作っていく作業である。
地道な作業であるが、マカロニ作りだ。
「メゾンの分も作ってあげたいし、乾燥させれば日持ちするから大量に作るぞ!」
「乾燥させて日持ちですか?」
ヤコブはイマイチ想像できていないようで、首を傾げながら質問をした。
「そうだ。これは乾燥させて、使いたい時に茹でて使う事ができるから便利だぞ」
「へぇ。毎回この作業をしなくていいのは助かりますね」
ヤコブは城の料理長なので、城の人数分作る労力を考えると、保存がきけば工程が省けると、考えていそうである。
大量にマカロニを作った後は、合わせる為のソースである。
「それじゃ、ヤコブは玉ねぎを薄切り、レイアは鶏肉を1センチくらいの大きさに切ってくれるか?」
「はい!」「分かった」
ヤコブだけでなく、レイアも料理を習っている。
食に困った経験から興味を持ち、フォルテのように作ってみたいといってきたのであった。
今はまだ包丁を持つではおっかなびっくりで、合っているかどうかフォルテをチラチラと見ながらだが、包丁を持って厨房に立っている。
「レイア、猫の手だぞ?」
「分かってるよ!」
レイアが包丁を持つ際には、フォルテは毎回この言葉を言っている。
指を切らない為の予防策だ。
2人が切り終えると、塩コショウで鶏肉に下味を付け、フライパンで玉ねぎと一緒に炒めていく。
鶏肉に火が通ってきたら、キノコを加えて少ししんなりするまで炒める。
「ここに小麦粉とバターを入れて、馴染んできたらゆっくりと牛乳を何回かに分けて入れていくぞ。コツはな、沸騰する直前に牛乳を足して沸騰させない事だ」
隣で同じように調理をしているヤコブは、フォルテの話を聞いて、慎重に牛乳を足していく。
「フォルテ様、とろみがついてきました」
「いいぞ。ヘラで底をなぞって見えるくらいまでとろみがついたらホワイトソースの出来上がりだ。後は味見をして……」
火を止めた後、フォルテはスプーンで自分のホワイトソースを掬って一口味見をする。
塩コショウで味を整えた後、もう一度味見をしてフォルテは頷いた。
「2人とも、俺のを味見してみろ。ヤコブはその後自分のを味見して、足りなければ塩コショウで味を調えろ」
フォルテに言われたように、ヤコブはフォルテの物を味見した後に、自分のホワイトソースの仕上げに取り掛かった。
レイアは、美味しそうに味見した後に、一口では物足りないと言った風にホワイトソースを見ている。
「美味いだろう? 料理が完成したらもっと美味くなるからたのしみにしていろ。さて、頼んでおいたマカロニを持ってきてくれるか?」
頼んでおいたと言うのは、鶏肉を切り終えた後にレイアにはマカロニを湯掻く作業を頼んであったのだ。
レイアが持ってきたマカロニとホワイトソースを絡ませるように混ぜて、耐熱の器に盛り付けていく。
「後はチーズをかけた後でオーブンで焼けば完成だ!」
ヤコブもフォルテの作業を見ながら盛り付けている。
今日の晩御飯はマカロニグラタン。
付与の寒さに嬉しいあったかメニューである!




