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食欲の錬金術師〜草しか食べれないエルフは禁断の錬金術に手をかける〜  作者: シュガースプーン。


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第53話 パンケーキ

 数日ログハウスで過ごした結果、大量のカエデの樹液を採取する事に成功した。


 さらさらとした透明な液体が並々と入った樽を見てフォルテはにやついた。


 そういえば、これまで甘い食べ物を作っていなかったと思う。


 料理に砂糖を使うことはあってもお菓子は作っていなかった。


 しかし、今回のメープルシロップを使うのなら、代表的なものはやはりホットケーキだろう。


「フォルテ様、これがメープルシロップですか?」


 樽に一杯になった樹液を見ていたフォルテにヤコブが声をかけた。


 ヤコブの手には木の筒が握られており、その中にはやはりカエデの樹液が入っている。


 フォルテの見ていた樽は、用意した木の筒は結構早くいっぱいになるようだったので、集めて貯める為に作った物だ。


「これだけではただの樹液だ。これを弱火でゆっくりゆっくり煮詰めていくことで琥珀色の甘くてほんのり苦い美味しいシロップになるんだ」


 フォルテはしっかり溜まったカエデの樹液を煮詰める用の寸胴を鉄から作り出すと、樹液を移して火にかけた。


「これで煮詰めていくぞ」


 カエデの樹液がメープルシロップになるまでには4分の1程まで量が減るくらい煮詰めていかなければいけない。


 ゆっくりとした時間が流れる中、ログハウスの中に甘い香りが漂い始める。


 時間をかけて出来上がったのは琥珀と言うよりも黄金の液体。


 偶然見つけたカエデの木だったので採取時期が気になっていたが、出来上がったメープルシロップの色味は、1番いい時期に採取できた事を表していた。


 メープルシロップは、採取時期によって色が変わり、ゴールデン、アンバー、ダーク、ベリーダークと時期が遅くなる程に色が濃くなっていく。


 黄金に輝くゴールデンは薄い様に見えるかもしれないが、高級品で、ホットケーキに使うには適している。


 一般的にイメージするのはアンバーだが、それよりも上品な甘さを今回は楽しむ事にしよう。


 ガラスの瓶が無いのが残念ではあるが、小さい樽を作ってそこに保存した。


 ヤコブの鞄に入れれば酸化も防げるのでその辺りは気にする必要はない。さすが国宝だ。


 シロップが用意できたら今度はメープルシロップを味わい為のホットケーキだ。


 ふわふわのスフレパンケーキのようなものも美味しいのだが、フォルテは、前世でオヤツに母親が雑に作ってくれたホットケーキミックスで作ったホットケーキに、怒られる位にメープルシロップをかけて、少しぐしょぐしょになったホットケーキをほうばりたかった。


 ボウルに小麦粉、卵、砂糖、それから牛乳を入れて混ぜる。


 本当はベーキングパウダーやバニラエッセンスがあれば良いのだが、無いものは仕方がない。


 ふんわり感が足りないが、我慢は必要になる。


 ベーキングパウダーや重曹も今後生産を考えなければいけないと考えていると、調理しているのに反応したのかケミーニアとレイアがやって来た。


「後は焼くだけだからちょっと待ってろ」


 フォルテは、同時に焼く為に鍋を鉄板に錬成し直した。


 それを見て、ケミーニアはワクワクした様子でフォルテに質問をした。


「今日の食事はお好み焼きですか?」


 ケミーニアにとって、小麦を混ぜた物と鉄板の組み合わせはお好み焼きなのであろう。


「今日はついにホットケーキを作るぞ!」


 フォルテはケミーニアに答えながら作った方が速いと鉄板にバターを塗った後にお玉で掬ってホットケーキのタネを流し焼いていく。


「ホットケーキとは具なしなのですか?」


 ヤコブも、お好み焼きと比べてしまうようで、質問をしてくるがフォルテは笑って頷いた。


「これだけだ」


 生地をひっくり返してしっかり焼けば完成だ。


 焼けたホットケーキにたっぷりとメープルシロップをかけたら甘いオヤツの完成だ。


「これが、ホットケーキだ!」


 とてもシンプルなホットケーキ。


 これまでフォルテが作ってきたご飯は彩りも良かった為に、ヤコブとケミーニアはこれで完成なのかと拍子抜けの様子だ。


「食べれば幸せが広がるぞ。いただきます!」


 フォルテがナイフとフォークを使って切り分けて、一口。

 久々の甘味に行儀が悪いが、待てないとばかりに口が迎えに行ってしまった。


 フォルテは「ん〜〜〜」と声にならない呻きを発した。


「難しいな」とナイフとフォークの扱いに苦労しながら、フォルテを真似してレイアも一口食べた瞬間に目を見開いた。


 ヤコブは表情が抜け落ち、ケミーニアはほっぺを抑えている。


 フォルテの加減てたっぷりとかけられたメープルシロップを吸ったホットケーキは噛み締めるたびに甘い蜜を口に溢れさせ、鼻にほろ苦いカエデの木の香が抜ける。


「どうだ。幸せの時間だろう?」


 フォルテの言葉にヤコブ、ケミーニア、レイアは頷いた。


「砂糖とは違う上品な甘さ。それに、こんなに口いっぱいに甘い物を食べられる日が来るなんて」


 ヤコブのいい方は完全に甘党である。


 フォルテが砂糖を錬金術で作る為見落としがちだが、砂糖は高級品である為、一般的には貴族の食べ物だ。


 それに、貴族の食べ方はクッキーなどの焼き菓子ではなく、高級な物を食べていると自慢する様に砂糖を固めた落雁の様な物をバリバリと食べるので、フォルテのように料理に使うということさえ稀である。


 蜂蜜も同様で、少量を直接舐めるか紅茶に溶かして飲むのが一般的。


 パンケーキの様な食べ方はしない。


 たっぷりかけたにも関わらず、くどくない上品な甘さというのは、不思議な感覚であり、フォルテが幸せというのも納得ができた。


 4人が幸せに浸りながら夢中でパンケーキを食べる間は、とても静であった。






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