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食欲の錬金術師〜草しか食べれないエルフは禁断の錬金術に手をかける〜  作者: シュガースプーン。


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第50話 出発

 元信者達や孤児達が醤油と味噌の仕込みかたもしっかりと覚え、孤児院兼醤油味噌醸造所の体制も整った。

 農家と雇い、原料の大豆生産も順調にすすんでいる。


 フォルテのこの街でやる事は一通り終わった。


 この街は、フォルテが醤油と味噌を作る技法を教えた場所として、国の重要地として、国王の直轄領となり、運営には、信頼のおける代官を置くことに決まった。


 その代官とは、宰相の次男であり、城でフォルテの料理を食べて食の大切さを理解している男であった。

 宰相の息子だから、優秀な男であり、この街の引き継ぎなどスムーズに終わらせて、ケミーニアと一緒にこの街のこれからの運営について話し合いもしていた。


 それだけではなく、空いた時間に孤児院兼醤油味噌醸造所に自ら出向き、作業を手伝ったりもしていた。


 これは本人曰く、父や国王、ゆくゆくはこの国を救ってくれるであろう醤油の製作に関わりたいと言う思い8割、残りの2割は職員、子供達に出される昼食を一緒に食べたいからだと言っていた。


 ともあれ、色々なところに出向いて、街の人と交流を持つ代官は、皆に慕われるいい代官になる事だろう。



 醸造所の職員(元信者と孤児達)に見送られてフォルテ達はこの街から旅立って行く。


「では、また醤油が出来上がって絞る時期になったら来る。皆、きちんと教えた事を守って醤油を腐らせたりしないようにな」


「は! 命に変えても!」


 フォルテの言葉に、代官が勢いよく反応した。


「普通でいい。頼んだぞ、マルタナ」


 フォルテは盲信していそうな代官ではなく、醸造リーダーのマルタナに声をかけた。


「はい。今はまだ、フォルテ様に残してもらった醤油と味噌、魚粉で生活をしますが、来年にはここで作った醤油と味噌で。そして私達の作った醤油と味噌を使った料理をフォルテ様に食べてもらいたいです」


「ああ、楽しみにしている」


 マルタナの言葉にフォルテは喜んで頷いた。


 マルタナはこの数週間で1番雰囲気の変わった人間だ。

 まだ痩せ型よりもガリガリに近いが、血色や肌艶が良くなり、綺麗になったのは勿論、フォルテに料理の仕方を必死に覚えて、今では食堂の調理の指揮まで取っている。


「マルタナ、健康には食べるだけではなく、運動も大事だ。みんなの健康をちゃんと管理するんだぞ」


「はい!」


 もともと、フォルテに対して自分の意見をしっかり言える人間なので、うまくやる事だろう。


 レイアも、孤児達と別れを済ませてフォルテの元へやってきた。


「別れは済んだのか?」


「別れってより自慢だな。別に別れをいうような仲じゃねえし、俺だけフォルテについて行けるのを羨ましがってたから自慢してきた。フォルテについていけばまだまだ美味い料理がいっぱい食えるだろ?」


 レイアはそう言って笑っているが、孤児達と仲がいいのはわかっている。

 その言葉を聞いて、代官とマルタナが羨ましそうにこちらを見ているのは見なかった事にしよう。


「では、フォルテ様、出発しましょう」


 ケミーニアが馬車の準備ができたと呼びにきたので、フォルテとレイアも馬車に乗り込み、馬車が出発する。


 後ろで見送る声を聞きながら、フォルテは醤油の絞り出しを楽しみに街を去るのであった。



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