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食欲の錬金術師〜草しか食べれないエルフは禁断の錬金術に手をかける〜  作者: シュガースプーン。


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第49話 お昼ご飯

 教会の皮を被った孤児院がフォルテの指揮下に入って数日。


 じゃがいもを植えた土地の周りの空き地をフォルテがケミーニアと共に自分の物にして、大量の《大豆・枝豆》を植えた。


 枝豆と大豆は同じ物だ。ハマチ、ブリなどの魚のように、成長過程によって名前が変わる。ような物だ。


 醤油や味噌には大豆を使うので青々とした枝豆になってからもしばらく放置して、大豆になるのを待つ。


 もちろん、大豆の収穫から醤油味噌の完成までつきっきりで教えていては年単位の時間が必要なので、大豆の栽培と収穫の仕方は元々枝豆を作っていた農家を雇い、孤児たちに教えてもらう事にした。


 農家の人達は、枝豆ではなく大豆になった物が欲しいと言う事情を聞いて驚いていたが、醤油や味噌を使った料理を食べたら納得して手伝う事を了承してくれた。


 後は信者の中で特に食に興味を持った何人かを孤児の面倒を見る人間としてスカウトして、孤児達との醤油味噌造りを任せる為に指導をしている。


 醤油と味噌は使う塩などの量が違うだけで、ほぼ工程が同じな為、醤油班と味噌班に分けて同時に教えている。


 この1週間で、教えた樽が倉庫に並べてある。

 これは発行した後に絞りの工程などはフォルテが旅をして良いタイミングでもう一度ここに戻ってきて教えるようにしようと思っている。


 それまでの温度管理などのやり方を今は教えている所だ。


 ちなみに、孤児院だった場所はフォルテの錬金術によって醤油味噌蔵が併設された大きな施設へと生まれ変わった。


 国の新しい事業として、国からの補助金や領からきちんと孤児院としての補助金も出る他、将来的には醤油と味噌で収益も出るので孤児たちの生活もあんしんである。


 それだけでなく、今は面倒を見ている大人。

 醤油味噌醸造場のリーダーを任せている元信者の女性マルタナを中心に大人と子供達の年長組が協力して食事を用意している。


 勿論食事はフォルテの指導の下行われており、ヤコブも一緒に学んでいる。


 この1週間ちょっとの期間の食事で、マルタナは周りに肌が綺麗になったと言われたと喜んでいた。


 本日も、今は大人組が食事を作り、子ども組は枝豆農家の人達と大豆の世話をしに畑に行っている。


 厨房で、フォルテの指導に従い、今日のお昼ご飯を準備中である。


 今日のメイン食材もじゃがいもである。


 着服していた孤児院の職員達を追放した事で、きちんと孤児院としての補助金を使えるようになったが、孤児たちの食欲を賄う腹持ちのいい食材としてじゃがいもは優秀である。


 じゃがいもの芽を取って皮を剥き、少し大きめの一口大に切って水に晒していく。


 初めはおっかなびっくり食べていた大人も、今では大好きな食材の一つである。


 じゃがいもを切り終えた後はにんじんも同じくらいの大きさに乱切り。玉ねぎはくし切りにしておく。


 特製の大きな鍋に油を引いて、これまた一口大に切った豚バラ肉の薄切りを炒めていく。


 肉に火が通ったら、玉ねぎ、にんじんじゃがいもを入れて玉ねぎが透き通る位まで炒める。


 それが終わったら味付けだ。


 水、醤油、酒、砂糖、それから魚粉を使って調味液を作って、炒めた具材を弱火でゆっくり煮込んでいく。


 ヤコブに驚かれたのは、鍋より小さな蓋を使った事だ。


 この世界には落とし蓋と言う発想が無かったようである。


 フォルテはヤコブと調理を教えている大人達に、落とし蓋はに崩れを防いで、味を均一に染み込ませる効果があると説明しながら、じゃがいもとにんじんに箸がスッと入るようになるまで煮込む。


 ちなみに、せっかくの機会なので、孤児達にはフォークではなく箸の使い方を教えている。


 その延長でヤコブや大人達も頑張って箸を使えるように練習しているし、料理用に菜箸も作った。


 火が通ったら、しっかりと味が染み込むまで放置する。


 本当は糸蒟蒻や絹さやも入れたいが、無い物は仕方がない。


 今日のお昼ご飯は彼女、奥さんに作って欲しい料理の代表でもある《肉じゃが》だ。


 味を染み込ませている間に、畑仕事を終わらせた子供達が戻ってきた。


「ご飯の前に汗を流して来なさいね!」


 帰って来た子供達は、マルタナの言葉に元気な返事をして風呂に向かっていった。


 畑仕事が日課になるので大浴場を併設させてある。

 事故が起こらないようにしっかり男女別の2つの大浴場だ。


 ガスなどは無いが、魔法のある世界なので魔石と言う手段がある。


 子ども達が風呂から上がってくるまでに、肉じゃがを盛り付けてテーブルに並べてしまおう。


 そろそろ、領主館で仕事をしているケミーニアも来るからだろう。


 ケミーニアを置いて食事をすると後が怖い為、ちゃんと待つ事を子供達も覚えたほどだ。


 これまでの生活と一変して、孤児達は笑顔溢れる生活を送れている。


 色々と考える事はあるが、肉じゃがのいい香りに、フォルテの腹がなった。


「とりあえず、今は飯だな!」


 フォルテの声と同時に、ケミーニアも到着したのであった。

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