第46話 綺麗
フォルテは、レイアに孤児達を呼びに行かせると、信者達へ話しかけた。
「お前達はなぜエルフになりたいと思った?」
フォルテの質問に、信者の女性が手を上げた。
「それは、エルフ様達のように美しくなりたいと思ったからです」
「なるほど。なら、なぜ美しくなりたい?」
「え?」
信者の女性は戸惑った。美しくなりたいのは人として当然の欲求だと思っていたからだ。
「美しくなって満足する人間は少ない。美しくなるのはな、手段なんだ。他人に褒められる為の手段。美しくなりたいのではなく、美しいと言われたいんだ」
これは、人にあって当然の承認欲求だ。
「だけどな、漠然とし過ぎているから終わりがない。お前は、エルフの誰のようになりたいんだ?」
信者の女性は答えを出せずに口をつぐんだ。
人々にとって、エルフは美しいものという偶像に過ぎないからである。
「では、実験をしてみよう。お前達、このケミーニアは綺麗だと思うものは手を挙げろ」
フォルテの言葉に、信者達は全員手を上げた。
「では、ちょっと待っていろ」
フォルテは、ケミーニアを連れて隣の部屋に移動すると、ある物を簡易的に作り、それをケミーニアに装着するように言った。
フォルテは先に信者達の元に戻り、ケミーニアを待っていると、ケミーニア隣の部屋から戻って来た瞬間に信者達はざわついた。
ケミーニアの容姿に変化があったからだ。
ケイトが作ったのは俗に言う乳袋だ。
エルフは美しいと言われるが、人と違って性欲が無いためかもしれないが、エルフの女性は皆胸が小さい。
なのに、今のケミーニアはエルフではあり得ないほど胸が大きい。
「では、先程よりも今のケミーニアが綺麗だと思う者は手を上げろ」
今度は、3分の2ほどしか手を上げなかった。
「顔が変わっていないから分かりやすいがな、胸の大きさだけでも好みが分かれるんだ。エルフに固着するのではなく、お前達が褒めて欲しい相手にとっての1番になればいいと思うぞ?」
フォルテの言葉に信者達は頷いた。
「だけどな、健康的な人間と病気の人間どちらが良いかと言われたら皆が健康的だと言うだろう。健康的に、美しくあるためには食事のバランスが大事になってくる。そしてな、幸せな人間ほど綺麗になっていくんだ。 だから、お前達には食事の大切さを教えてやる。それに、孤児達が幸せになる方法もセットだ。お前達が求める物をきちんと手に入れることができれば、この街全体が幸せになる。だから、孤児達が来たら少しお勉強をしよう」
そう言ってフォルテは大きな黒板を作り、信者達を椅子に座らせた。
最前列に、チャッカリとヤコブが座っているのはご愛嬌だ。
レイアが孤児達を連れてきたので、孤児達も席に座らせる。
フォルテの食の勉強会が幕を上げるのだった。




